表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
8年前
62/66

処刑刃

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


大きく空気が爆ぜる音と共に、停められてあった車両全てが隼綛へと同時に突撃してきた。

その状況に対し隼綛は、車両の一つを薙ぎ切ると共に強烈な風を発生させ、他の車両同士をぶつけて軌道を逸らさせる。

それでも連続的に車両は爆発し、隼綛の視界を煙が覆い隠す。

それに追い打ちをかけるようにどこかでまた空気が爆ぜる音がし、隼綛に向かって何かが高速で突き当ろうとしていた。

それは隼綛からすれば実に奇妙な事だった。

最初の車両を全て向かわせたのは視界を奪うためだ。それは理解できる。

しかし今の二回目の爆音は何だ。

何かを飛ばして止めを刺す気ならば、それは物凄く甘い事だ。

音によって飛んでくる方角は分かってしまうし、それどころか隼綛自身、今この場を瞬間移動してしまっても構わない。

そしてもし瞬間移動させることが目的だとしたら、最初の攻撃が今度は不可解になる。

一体全体、オトアは何を企んでいる。

落胆と期待が入り混じりながらも隼綛は音がした方向へと向き直り、そのままオトア渾身の策を受けて立つ。

黒煙から突き抜けてきたのは、オトア自身であった。

(……まさか、こいつ車と同じ用法で自分を…………ッ!?)

隼綛は突き抜け現れてきたオトアのとった策に思わず驚いた。

オトアにとって体の震えが治まったとしても、限界である体を酷使して隼綛の距離を埋めるのには時間が掛かる。だから車両を飛ばした用法と同じ、爆風によって自分の体を飛ばす事によって距離を埋める策をとった。二度目の爆発音は自分自身を飛ばすための、言わば高速移動のための爆音だったのだ。

しかし隼綛もその移動方法を考え付かなかったわけではない。だがリスクが高過ぎるため、オトアはそれを行わない物だと思っていた。

車両を吹き飛ばす威力の風を一身に受けるという事は、最悪、内臓破裂などの障害が起こってしまうのだ。加減するといった小細工も手に入れて数分で出来る話でもないし、そもそも加減をしてしまったら高速移動の意味を成さない。

内臓破裂という重傷を負ったそんな状態で隼綛に挑んだところでオトアに勝ち目はない。故に、隼綛はその手段をとった事に驚愕した。

オトアにとってはもう自分の肉体がどうなろうとも構わないという事の暗示なのか、それとも命を懸ける価値がある策なのか。

(…………面白ェ……ッ!!)

驚愕はすぐさま歓喜と好奇へと変わり、オトアが振り上げている左腕を片手で薙ぎ払おうとする。

だがそれはオトアの策に嵌っている証拠であった。

オトアが自身の才能を使い、得た物は二つ。

爆風によって自身を移動させることを可能にする、暴風の鎧の上位互換である《不可視の鎧(インビジブル ロック)》。

そしてもう一つは、自身と同質であるはずの隼綛が誇る力そのもの。

「…………そッちが本命かよッ!」

「へぇ、気付いたか」

隼綛が異常に気付いた原因は、自身の行動の中にあった。

オトアが振り上げている左腕に多少の切り傷を付けることによって、爆風による高速移動の意義を図ろうとして隼綛は片手で薙ぎ払おうとした。

だがオトアの腕は隼綛に弾かれて(,,,,)、自然と右手を突きだすような形になった。

傷付けられなかったのだ。おそらくそれがオトアが高速移動をした原因であると見当付けた瞬間に、隼綛の中でオトアの策が明確に見えてきたのだ。



隼綛の見当は若干違うところがある。

あくまで空間を裂き歪める力に対抗できるのは同じ空間を裂く力を持ったでしかないのだ。

オトアが高速移動を行うことを可能にしたのは《不可視の鎧(インビジブル ロック)》。

そして隼綛によって弾かれたのは同じ《不可視の鎧》でも攻撃に特化したもの。名付けるのならば死神の鎌、隼綛を殺す為だけにつくりだした《処刑刃ギロチン》という所だろう。

オトアの策はこうだ。

爆風によって駐車場にある全車両を飛ばし、隼綛にこれら全てを処理させる。

隼綛の周囲が車両の爆発による煙に包まれたところで高速移動のための爆風を発生させる。

そうすれば感情の全てを好奇心で埋め尽くされている隼綛は必ず正面から迎え撃つはずだ。

二度目の爆音の真偽を確かめるためにも。これによって瞬間移動を潰せることになる。

隼綛が使ってきた引き寄せる風も、移動中のオトアには効果を成さない。

よって事実上、この時点で隼綛は裂く事しかできなくなった。

あとは左腕をブラフにして、隼綛の首を突き斬る。

それがオトアの策であり、そして今現在、隼綛はその策に呑まれ切っていた。

「…………そッちが本命かよッ!」

「へぇ、気付いたか」

まさか気付かれるとはオトア自身は思っていなかった。

つまり隼綛白兎という人間は、オトアの評価以上の実力をまだ秘めているという事なのだろう。

だが、突きだすような形になった右手に纏われている見えない刃は確実に隼綛の首を刈り取ろうとしていた。

「オレにはお前が、殺せるみたいだ」

勝利を確信したオトアの口から思わずそんな言葉ば漏れ出す。

だが。

「……時間か」

どこか寂しそうに、残念そうに呟いた隼綛。

それと共に、一瞬でオトアは地へと叩きつけられていた。

戦闘で何割食い散らかしてくれてんだよオトア君。

しかも、あっさり負けちゃってるし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ