道化師同士の殺し合い
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爆風によって隼綛に向かって飛ぶ車両たち。それらを大きく腕を振る事ですべてを裂く隼綛。
裂かれた事によって車が爆発し、その爆炎の中、オトアは隼綛に向かって突撃する。
その両手には、暴風を掻き集めてできた見えない槌がある。
「イイねェ!」
「……ッ!」
槌を振るい、相手を叩き潰そうとするオトア。
対する隼綛は、それらを躱すのみ。
完全に手を抜かれている。
そもそも殺し合いとしての経験の差がオトアと隼綛ではあり過ぎるのだ。
手を抜かれている。その事実に特段怒るわけでもなくオトアは掌底を打ち出しながらそれを殺し易いとだけ認識する。
しかしオトアの認識がどうれあれ、隼綛には攻撃が届かない。
「もっと―――」
単調なオトアの攻撃に飽きたのか、隼綛が小さく空間を裂き、その裂いた空間の中へと移動する。
これは先程見たものだ。しかしオトアはその移動の瞬間しか見ていない為、正確な効力は分からない。
隼綛の姿が消え、オトアの動きが止まると共に。
「――――楽しませろよォ!」
その背後から、オトアの体を裂き殺すように手を伸ばして突撃してくる。
それをオトアは片足を大きく動かす事によって体を翻し、通過していく隼綛の背中に向かって肘を打ち込もうとする。
打撃が通ずる直前にそのまま進行方向にある空間を裂き、隼綛は異空間へと逃げ込む。
(……瞬間移動。いや、空間移動の方法の一種と考えるべきか。あいつは自分の力を空間を歪めるものだと言ってたからな…………)
姿勢を自然体にし、どの方向からの攻撃にも対応できるようにしながらオトアは考える。
その手段ごと隼綛を殺す方策を。
(…………せめてどういう手段で、どう空間を歪めて、あの空間移動を成り立たせるかが分かれば……殺し様があるものも…………)
3秒経っても攻撃を仕掛けてこない隼綛。オトアはそれに疑問を抱きながらも、自己の中で空間移動の方法についての穴を埋めていく。
「いやァ驚いた」
その声と共に、隼綛が今度は斜め前方から突撃してくる。
それは大雑把な足捌きによって躱され、直後に放たれたオトアの膝蹴りを躱す為にまた異空間へと逃げ込む。
「何に?」
「奇襲を躱しただろォ」
今度は右上から突撃を仕掛ける隼綛。オトアはそれを躱し片腕を薙ぎ、攻撃が当たる前に隼綛は異空間へとまた逃げ込む。
「ほォら、また」
「こんな事、驚くに値しないだろ」
奇襲をやめ、オトアの正面に姿を現す隼綛。
それに向き合いながら、本当にどうでもよさそうに呟くオトア。
「いんやァ驚くさ。初見殺しだろォ……あァ言ッた攻撃は」
「別に初見じゃない。移動する瞬間なら一度見たし、お前自身が空間を歪める力だと言ってたからな」
それだけで瞬間移動だと察せる人間はいるのだろうか。
それとも、オトアの才能のせいだろうか。
相手を殺すために、相手に対して洞察し、考察し、推察する。
最小限の情報で、最大限考えられる状況、状態を揃え尽くす。
その才能の恩恵だろうか。
「うぎゃははハハッ!! そォか、そォかよ! そりャイイ、最高だなァ!」
「……絶賛される覚えはない」
「何言ッてんだァ! お前は最高だッ! オレが望む形そのものだよ!」
「お前が望む形……?」
「殺す為だけに存在するその形……オレが望む頂点。お前はその体言だァッ!」
いきなり姿勢を低め、オトアとの距離を縮める。
それに動じる事なくオトアは隼綛が伸ばしてくる手を避ける。
「人を殺せる力と、人を殺す事に動じない心、それと人を殺す為だけの才能。最高じャないかッ!」
「殺人鬼にでも成りたいのか?」
「もう成ッてるさァ!」
大きく振るわれた隼綛の腕を避ける為に、オトアは一歩後ろに下がる。
すぐさま小さく空間を裂き、隼綛は異空間へ移動し、オトアへと突撃を仕掛ける。
「さァ踊れェッ!」
足捌きによってオトアに躱されると同時に隼綛は空間を裂いて、別方向から突撃してくる。
本当に瞬間移動。攻撃をされたと思った時には、次の攻撃が行なわれている。
そんな状態であれ、オトアはその突撃すべてを足捌きで躱しながら反撃のチャンスを窺っていた。
人の成せる業ではない。
銃弾を躱すことと同義、いやそれ以上の事をオトアは難なくこなしていく。
「オレらみたいな殺す事しか出来ない人間ッてのは、所詮は道化師だとは思わないかァ!」
「同感だ。哀れに惨めに死んで、多くの人を笑顔にさせる」
「それにィ、殺す事によって人を救ッちまう」
彼らはこれからも無差別に殺す。
男だろうが、女だろうが、子供だろうが、大人だろうが、貧乏だろうが、豪華だろうが、善人だろうが、悪人だろうが。
彼らは無差別に殺す。
何故なら人殺しが、隼綛にとっては欲望であり、オトアにとっては目的へと通ずる道なのだ。
当然、そんな彼らを肯定する者など一人もいないだろう。
殺す事は壊す事であり、壊す事は意味有るモノの意味を無くさせることなのだから。
彼らが何かを得ることなど無いし、彼らの先には失う道しか残されていない。
戻るという選択肢を捨てた彼らの進む先の道には、時に悪人を殺し、人に感謝される事もあるだろう。時に死を望むものを殺し、感謝されることもあるだろう。
殺す事によって何かを救う事もあってしまうだろう。
されど。
「どの道、オレたちは人殺しだ。殺人鬼だ。死ぬ時にしか価値が無い。……いや、死ぬ時にすら価値が無い」
「だからこそ、オレたちァは道化師なんだよォ!」
「まったくだ」
止むことのない攻撃の中、あらゆる方向から聞こえてくる隼綛の声に納得する。
この道化師たちが殺し合う事で、一人の殺人鬼が消え去る。そうして世界はその幸せに笑う。
自分はもう数時間前までの笑う側へには戻れない。自分はもう消える側へと嵌ってしまったのだから。
だからこそ。
「ッ!?」
足捌きに振り回されるように揺れていたオトアの上半身が止まると、同時に振り上げられた足が隼綛の体を蹴り上げた。
銃弾を軽く上回る速度で幾度も様々な方向から突撃してきていた物をすべて躱しきり、その上、とうとうその姿を捉えて反撃を加えた。
子供が出来る範疇を超えている。いや、大人であれここまでの事が出来る者など居ないだろう。
これを成り立たせるのは、彼の殺すという才能と意志か。
その答えなど在りはしない。
「《爆風の――――――――――」
宙に浮かんでしまい、隼綛が空間移動が出来なくなった状態を狙ってオトアは全体重を込めて掌底を打ち込む体勢へと移る。
正確に言えば掌底ではなく、隼綛と似て非なる力の塊を。
「―――――鉄槌》ッ」
オトアの腕が伸ばされると同時に、幾重にも重なった暴風の槌が隼綛を押し潰すように放たれる。
いや、まあこの程度で死んでくれたら魔神なんて殺せ(ry
私情ですけど、親の勝手で(と言ってもある程度了承してた)検定受けるみたいなんで更新速度は春休みだけど遅くなります。
オトア編、書くの楽しいからヤダなぁ。小月の話の時にそうなれば良かったのに…
……あ、どうせ読者いないから書く意味ないんですけどね。




