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NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
8年前
53/66

魔神からの呪い

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


「……鑑、優斗」

「ん、やっと起きたか」

唯音が目覚めるとそこはベッドの上で、近くには愛しの音亜ではなく鑑が居た。

窓辺から夕日が差しているため、もしかしたら音亜は鑑の代わりに食事でも作っているのかもしれない。「ありがとね。正直、僕じゃ彼を更生っていうか……正しい道を歩ませることは出来なかったと思うから」

「礼を言われることじゃない。そもそも何で私は寝てる?」

「泣き疲れたからじゃない。あまりにも声が大きいからシキも心配してたよ」

「…………私は、お前を許さない」

「また何で?」

「部屋に入った時、音にぃが落ち込んでた。お前はきっと相当キツイことを言った」

「だろうね。僕は真実を言ったから」

「ッ……だから私はお前を許さない」

「なら殺す?」

「殺さない。呪ってやる」

「あぁ、それは怖い」

オーバーリアクションを取りながら、それでもある程度覚悟していたのか、鑑に大きな驚きは無かった。

唯音はその反応にムカつき、一番最悪な呪いは何かを考えだす。

「僕にどんな呪いをかけるんですか。魔神さん」

「……シキコン……」

「………………えっ?」

「まずはオタクにさせてその後にシキ大好き人間へと改造する呪いを掛ける」

「随分と具体的だね。その真意は?」

「シキのそういう姿が見たい!」

「欲望丸出しだね。でも唯音ちゃん。夏休みの間はともかく、休みが明けてしまったらこの家に来る暇も少なくなるから……その呪いの意味は無さなくなると思うけど?」

「ん!? ……なら期間限定にする。夏休みだけ。その後、呪いを解けば問題無し」

「随分と緩い判決を下す神様だね」

「はい今から呪うよ。3,2,1」

「…………何も変わらないのだけど?」

「シキに会えば分かるよ……ぐへへへへ」




一方、そんな事が起きてるとは知らずに音亜とシキはキッチンにて合同で料理を作っていた。

「包丁使えるんだね、シキちゃん」

「鑑に教えられた……自分が留守の時に、変な人が来たらこれで刺せって」

「……随分とバイオレンスな教育だね」

「嘘だけど」

「嘘なのかよ……それじゃ後は炒めるだけだからシキちゃんはサラダを盛り付けておいてくれない?」

「分かった」

皿に野菜を盛り付け始めたシキを見て、ふと音亜は一つ疑問に思った。

シキが若干笑顔なのである。

音亜はしかめっ面のシキばかりを見てきた為に、疑問に思い、訊いてみた。

「料理が好きなの?」

「別にそういうわけじゃない」

「でも、なんか楽しそうじゃん」

「魔神がいないから」

「あ、あぁ……唯音が居ないと安心するとか?」

「うん」

これは兄として妹にどう伝えるべきか。

音亜は悩みながら火を点けて具材を炒め始めた。




そして結果として、音亜は唯音に大激怒することにした。

暴徒と化した鑑を全身で止めながら。

「唯音! 元の鑑さんにすぐに戻せ!」

「無理だよー、呪いの強度を弱めることはできるけど……解くのはちょっと」

「時間が掛かると?」

「気分が乗らない」

「シキちゃん、こいつフライパンで叩いちゃって」

「分かった」

「ごめんなさい、ごめんなさい! フライパンは痛いから止めてぇ!」

「なら冷蔵庫にするか? シキちゃん頼んだ」

「分かった」

「にゅみゃぁぁ! 今日の音にぃは厳しいよぉ!」

取り敢えず、応急手当として呪いの強度を下げてシキにコスプレやら変な知識やらを強要する程度にし、鑑を首の裏を強打することによって気絶させた後、ロープで縛り上げて、唯音から呪いの解除方法を聞く事にした音亜たち。

「で、呪いの解除には何が必要なわけ?」

「音にぃの愛とシキの萌え!」

「シキちゃん、包丁じゃなくてフォークね。フォークの方がより痛みが出るから」

「分かった。持ってくる」

「嘘ですごめんなさい許して刺さないで!」

「じゃあ、改めて。呪いの解除には何が必要なんだ?」

「時間と気持ちの持ちようかな? 解除って言うより、この場合は時間を戻すような感じになるだろうから、1日2日掛けてやれば戻るとは思う」

「なら今すぐやれよ」

「その代り、エネルギーの消費量が半端じゃないの。それに対価がキツイ」

「……? 難しい話抜きで、物的には何が必要なんだ?」

「飯と安眠グッズ。それに大量のティッシュとハンカチ」

「安眠グッズって……寝ずにやれよ」

「寝なきゃできないの」

唯音の言い分に溜息を吐きながらも、音亜はシキに今この家にどれだけ物があるのかを確かめてもらう。

結果としてはティッシュと安眠グッズと飯が不足していることが分かった。

「…………明日、買いに行くか」

「え、買い物!? 私も行くぅ!」

「当たり前だ、荷物持ち」

「……なんか今日は本当に、音にぃが厳しい」

「怒ってるからな。さすがに」

ある程度のおふざけならば、言い方が悪いが、いつもの事なので諦めがつく。

だが色々と自分たちに親切してくれた鑑に対してのこの仕打ちはさすがに音亜も堪忍袋の緒が切れてしまった。

「ともかく明日は買い物。シキちゃん、近くに大型スーパーとか無い?」

「知ってる」

「なら地図とか書いてくれないかな。一応、家の鍵が何処にあるか分からないからシキちゃんには留守番してもらわなきゃならないし」

「……分かった。待ってて」

「あ、音にぃがシキと仲良くなってる! 浮気だぁ!」

唯音が騒ぎ出すのを聞いて、本気で頭が痛くなってきた音亜であった。

そして、長い長い一日が始まろうとするわけですね。

よく分かります。オトア編の暗い場所へと突入ですね。

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