"神様"
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「暑いぃ……暑い、暑い、暑い、暑いっ!」
「だったら来なきゃいいだろ」
駅に降りたつと共に唯音が駄々をこね始めたので、思わずそうツッコんでしまった。
先日、鑑さんに家に招待されたので僕は行くことにした。色々と話してくれるそうだから。
そして当日、というか今日。鑑さんの家に行くと言ったら唯音が「私も行く」と言い始めたので仕方なく連れてきた。
しかしこうも最初から文句を言うのならば、付いて来なければ良かったのに。
「音にぃ、だっこ」
「あいよ」
僕はすぐに唯音を抱きかかえる。確か……お姫さま抱っこ(?)。そんな名前の奴だ。この前、テレビで見た。
「……音にぃ、おんぶに変えて」
「何で?」
「これだと居心地は最高だけど……音にぃに抱き着けない」
「まったく……それじゃ降りて」
唯音を降ろして、屈みこんでそのまま唯音が乗っかってくるのを待つ。
唯音が乗っかってきたのを感じると、そのまま立ち上がり目的地の鑑さん宅へと向かう。
「えへへ、やっぱりこっちの方が音にぃの顔が近い」
「舐めたり噛んだりするなよ」
「…………」
「……唯音、お返事は?」
「…………」
冗談というものは、時に突き止めてはいけないような真実まで突き止めてしまうようである。
いやまあ、そんな事をしてきたら当然、降ろすんだけど。
無言を貫く唯音に、一体どんな言葉を掛けるべきか。
唯音がその行動を実行に起こすまではちゃんと考えてはいた。
「ぅう……暑い。暑いぃ」
「近くに海はあるんだけどな」
鑑さんの家は、わりと海から近めの住宅街にあった。
一軒家だが……家族と一緒に住んでいるのだろうか。それとも結婚しているとか。
ともかく、そういった事は家の中に入ってから聞けばいい。
「すみません。篠守音亜という者なんですけど、鑑優斗さん居ますか」
インターホンを押して、そう声を大きくして告げる。
「いるよ。いるいる。入ってきて」
玄関のドアを開けながら出てきた鑑さんは、そう言って僕らを招き入れてくれた。
「いやぁー、唯音ちゃんまで来たの?」
「……お前が音にぃに何を言うか分からないからな」
「心配無用。というか無駄かな。彼の方から知りに来たんだから」
「お前……覚悟は――――シキだぁ!」
なんてブレ易い妹なんだろうか。兄としてそう思ってしまった。
唯音は家に入り、靴を脱ぐや否や、見つけたシキちゃんに向かって突進ともいい抱き着きに行った。
「ッ!?」
対するシキちゃんは突然の敵の出現に驚き、家の奥へと逃亡する。
「あはぁー、シキもすごく唯音ちゃんに好かれたね」
「あれに好かれても苦労するだけだと思います」
「体験者は語る、ってやつかな。さて」
鑑さんの後を無言でついて行き、辿り着いたのは一つの部屋。
そこで話をするということなんだろうか。
そのまま部屋のドアを開けて鑑さんは中に僕を招待する。
「……すごい」
部屋の中に入って、見た感想が思わず口から出る。
段ボール箱や、書類などで乱れているデスク。そんなものはともかく両サイドに並んだ豪華な本棚。
そこにある本に思わず目が行った。
紀伝や古そう小説などがずっと並んでおり、中には聖書と思われるものやらスクラップ帳などまで混ざっている。
「とにかく物を知るのが好きだった時があってね。その時に色々と集めた本だよ。音亜くんも読書が好きなの?」
「えぇ。ちょっと……本棚の物を手に取っても?」
「いいよ。なんなら借りてもいい。その代り、ちゃんと返してよね」
鑑さんはデスクの方に向かい、僕はそのまま本棚を物色していた。
しばらく僕が物色している間、鑑さんはデスク上にあるパソコンで何かをしていた。
そして数十分後、そろそろ物色を止め、話を聞こうと思いだした。少し夢中になりだしていた。
「……ん、あれ? もういいの?」
「えぇ。結構、外国の文字で書かれたのが多くて驚きました」
「そうか。英語とかはまだか。それはちょっと悪い事をしたかな」
「いえ、面白かったです」
「そうか。それは良かった」
「それで……」
僕が言葉の続きを言うまでも無く、鑑さんはデスク上での作業を止めて僕に向き合った。
「音亜くん……神様って信じる?」
「神様ですか…………正直、信じてません」
"いる"のかもしれないけど、何もしなければ居ないのと同じだ。
だから神様がいようと見せられても信じるかどうかといえば、信じないだろう。
「でもね、この世には神様って呼ばれる者があるんだよ」
「どういった話ですか?」
「例えば、唯音ちゃん。例えば、シキ」
「…………ふざけるのはよしてください」
笑いを堪えながら、鑑さんに言い返した。
だって、そうだろう。あんな自分よりも歳下で今もこの家ではしゃぎまくっている二人が神様なんて。
「ちなみにシキは死神って呼ばれて、唯音ちゃんは魔神って呼ばれてる」
「ふっ」
思わず笑ってしまった。
死神。黒いローブを着て大きな鎌を持っている骸骨。
魔神。偉そうに踏ん反り返っている悪魔たちの中の最強。
そんな奴らが、あの可愛らしい二人だなんて……変身でもすると言いたいのか、この人は。
「まあ、それが正しい反応だよ。証拠を見せてくれと言ってもいい」
「あるんですか、証拠?」
「シキに直接見せて貰えば分るだろう。その代り、唯音ちゃんが僕を殺そうとするのを必ず止めることを約束してくれないか?」
「まさか」
「説明する段階をいくつも飛ばしているからね。一から説明しようか」
そういって、鑑さんは僕の眼をしっかりと見て語り始める。
「超能力とか魔術とか、実際にこの世の中にあったら……いや、実際に見せられどうする?」
「……原因を突き止めます」
「そうだね。正しい判断だ。結果には原因があるから突き止めるべきだ。だけど……その結果が正体不明のものだったらどうする?」
「正体不明?」
「ようは科学的根拠なんて一切ないことだったら、どうする」
「認める……しかないですね」
「そう。それが正しいだろう。そして認めた世界が、この世にはある」
科学的根拠がないものがあると認めた世界。それがこの世の中にはあるという。
でも日常的に、科学的根拠がないものなんて、ない。
「まあ総じて僕らは、裏の世界、なんて呼んでるんだけど。これといった特別な名称は無いよ」
「……その世界では"神様"と呼ばれるものがいる、と?」
話をまとめるなら、そうなるのだろう。
裏の世界がある。そこには神様と呼ばれる者がいる。それがあの二人。
ただそれだけの結論に至るのだろう。話の流れからして。
「もっと正確に言うとね、神様のせいで神様が創られた、って言う事なんだけどね」
「……?」
「んー。取り敢えず、裏の世界の存在は認める? それだけなら証拠を見せられるけど」
「…………認めます。証拠もいいです」
「案外とあっさりしてるんだね。どうして?」
「人がこうして生まれてることに科学的根拠がそもそも無いと思ってますから」
「そうか。なら話を進めよう」
そういうと鑑さんは辺りに有った書類の一つを取り、その裏に何かを書き始める。
「例えば、A君がその裏の世界の技術を使ったり、核爆弾使ったりで最強になったとする」
そう言いながら鑑さんはその図を書き綴っていく。
Aとかかれた棒人間に『俺最強!』と書かれていく。
「もしもAが世界征服したとしたら、当然、それを止めれる人間はいないよね」
「えぇ」
「ならこのAが世界に飽きて、世界を壊そうとしたら?」
「止められる者は居らず……世界は滅びますね」
「そうだよね。でもそれだと神様ってのは困るらしい。寿命までこの世界を生かしたいみたいだからね」
「でも止めれる者なんて」
「例外規定。最強の上の存在……まあ神様と言う言葉が一番正しいんだけど」
鑑さんの言葉を聞いて、考えが自然と誘導される。
神様は困るんだ。世界を滅ぼされることを。滅ぼす力がある者を恐れている。
止められる者がいるのならばいい。世界は滅ぼす力を止めれるほどの力があるものがこの世にいれば。
しかしそれがいなければ?
世界を滅ぼす力を超す力を、世界は作らなければいけない。
そんな力を持つ者は……一人。
「この裏の世界のでの"神様"ってのはね、簡単に言えば『最上の抑止力』というわけなんだ」
やっとこの世界の詳細が語られましたね。最初ら辺に言えよ。
一応、補足で裏の世界が9割以上いるのは『科学的根拠ではないものを認めた者』が9割以上いるとでも思ってくれれば幸いです。
UFOとか超能力とかそこら辺を見て、認めたということですね。




