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NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
本編 旅行
38/66

共闘

乱雑に《処刑刃(ギロチン)》を振り回し、届かぬ一撃をどうにか浴びせようとする。

(…………この粘り気、見えないのが厄介だが……)

強い違和感を腕に感じながら、振るう速度を変えずに考える。

数撃の斬撃にも何の変化も見せない不思議な防御にオトアはある方法を思いついているが、それを成功させるには色々と布石が足りない。

今からそれを作らなければ。

大きく両腕の《処刑刃》を振り落したかと思ったら、オトアの体は急激に上空へと飛んだ。


オトアの不自然な行動に、思わず顔を上げそうになった敵だったが……その動作の途中、自身の瞳にこちらに走ってきている張空小月の姿が映ったのだ。

(……陽動…………黑鴉でこれを消す気か………………)

オトアの行動に気を取られている隙に、黑鴉の零距離からのエネルギー吸収によってこの防御を崩そうという作戦だったのかと敵は納得する。

しかし黑鴉の吸収は零距離ではなくてはいけない。距離やその形が不安定のものは吸収できない。

事実、オトアの《不可視の鎧(インビジブル ロック)》を消し去る事はできなかった。

つまりはオトアの策というものは本来ならば、根底から無理な話だったのだが。

この防御法は実を言ってしまえば、黑鴉と同じ武器なのだ。

自身の周りに幕を張るといった形で使用する武器……正しく言うならば防具。

オトアによる連続殺人後に、オトアの《処刑刃》に対する防具として開発された、対オトア用の武器。

だからこそ、オトア以外の人間……もっといってしまえば異常なほど強い敵以外には効果を成さない。

小月に攻めさせるオトアの策は通じてしまう。

(ヤバい……一旦逃げなきゃッ!)

回避行動に移ろうとする敵を小月が《不協和音(カオスツイスト)》によって行動停止に追い込む。

そしてこのまま小月が止めをさす……訳が無かった。


そもそも、敵にとっては詰みの状況ではあるがオトアや小月はその事をしらない。

小月からしてみれば《処刑刃》すら受け止める見えない何かがあるとしか分からないし、それが形があるかなんてとてもじゃないが判別できない。

ならば何故、小月はそんな状態で一度しか使えない《不協和音》を使ったのか。

理由は空から降ってきた。


「ッ!」

急激に上空へと飛んだオトアは壁を蹴るように、急降下していた。

理由は簡単。小月に注目をいかせて、自身の行動を悟られない為だ。

張空小月が囮として動いてくれるかは分からなかったが、黑鴉の啄みによって相手の気を逸らす事くらいはできるだろう。

そして小月に注目している間に、自身は急降下し……変形させた《不可視の鎧》を叩きつける。

分かり易い形で言えば、かなり大きめなハエ叩きである。

それを叩きつける。理由は粘り気を取るためだ。

発想は、自身にできる隔てるということだ。

あの敵から、あの粘り気を隔てて無防備にする。ただそれだけの発想だった。

しかし、あの正体不明な粘り気のみを設定するのは少しばかり時間が掛かる。

だから上空に飛び、設定の合間を小月に任せ、設定完了と共に急降下した。

そしてそれを叩きつける。

「なっ…………ッ!?」

自身の防具が剥がれてしまったことに驚いたのか、それともオトアが急速に落下してきたことに驚いたのか。

ともかく、敵にとっては立場逆転どころの騒ぎでは無かった。

ピンチから地獄逝きが決定してしまった。覆す事はできない。

オトアの《処刑刃》を止めることができる武器など他には持ち合わせていないのだから。

だが、オトア自身はもう攻撃はしない。そもそもそれでは《不可視の鎧》にわざわざ設定を施した意味がなくなる。

オトアは叩きつけたまま地面にしゃがみ込み、その代り顔を出してきたのは小月だった。

「―――ッ!?」

オトアが止めを刺さない事に驚きながら、敵はチャンスだと思い込んだ。

相手の武器は間合いを完全に詰め切らなければ効力が無い。それに《不協和音》も解けた。

すでに自由に動ける。今度こそ逃げるチャンスだ。

「遅い。吹き飛べ」

しかしながらその想定はオトアの一言で、砕かれた。

当然、オトアは小月に向かってその言葉と共に爆風をぶつけたのだ。

文字通り、敵へと距離を一瞬で詰めるために。小月の体は吹き飛んだ。

「ッ……ぃ変わらず容赦ねぇ!」

弓形に吹き飛ばされた小月は、無理に姿勢を変えて敵にその銃口を突きつけた。

銃声と共に、敵も小月もそれぞれ反対方向に吹き飛んだ。

何処が共闘だ。

でもまあタイトル詐欺は前からやってたしね

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