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『……もしもし、どうしたの篠守君?』
「ォ、やっと繋がった。ッたく電波ごと遮断しやがってあのクズ結界」
『…………?』
意味の分からないオトアのぼやきに雇い主は思わず首を傾げていた。
「とこで雇い主? 国一つブッ壊しちまったんだけど、どォにかなるか?」
『……は?』
「いや、敵の居場所をはっきりさせるために東西南北ありとあらゆるものを一気に一ヶ所に集めたんだが……後始末できんのか?」
『…………』
オトアの報告に思わず絶句した。絶句するしかなかった。
確かに自分はこの怪物に一週間で78万人を殺せやら公衆の面前でばれない様にビルを潰せやら無茶苦茶な要求をしてきた。
そしてオトアはそれらに全て応えてきた。完璧に、と言わずとも確実に事を済ませていた。
お蔭で雇い主の事後処理も楽に済んでいたのだが……。
もはや事の大きさが桁違いである。よりにもよって自分が雇った怪物は国一つを短時間で壊滅させてしまった。
だがまあ、自分もそれ位のことが出来るのを期待してこの怪物を雇ったわけだが。
『被害状況は?』
「一ヶ所に集める前に、大きく蒼い光を視認した。【蒼い死神】がわざわざ皆さん死なないように国全体を炎で覆ったんだろう。とんだ化物だ」
お前が言うな。というかお前だけは絶対に言うな。
そんな言葉が喉元まで上ったが、どうにか言い止めた。
どうやら【蒼い死神】が事前にオトアの無謀な策に気付き対処したようだ。死者や負傷者はゼロと考えていいだろう。
つまりは物理的に、一ヶ所以外、焼け野原のような状況だと考えればいいだろう。
そしてその例外である一ヶ所さえ、瓦礫の山と化しているのが目に浮かぶ。
とんだ最終破壊兵器だ。篠守音亜という怪物は。
『まあ、死んでないなら何とかならない訳でもないけど……はぁ、頭が痛いわ』
「大丈夫か?」
お前のせいだ。
その言葉を大声でぶつけてやりたかったが、雇い主は堪えた。
別に堪える必要は無かったが。
『もうそんだけ大きくぶっ壊したんだから、ちゃっちゃと終わらせて』
「あァ。もう先に張空小月を【蒼い死神】の探索に向かわせた」
正確に言えば、張空小月を《不可視の鎧》を纏わせ空から突き落とした、というべきなのだが。
『じゃあ何で篠守君はこんなに優雅に報告してるの?』
「何で、って……そりャ」
敵の注目を集めるための囮として、先程より少し高度を下げて暇を持て余していたからである。
しかしその余裕もそろそろ尽きそうである。
「そろそろ切るぞ」
『あ、そう。それじゃあ精々ボコボコにタコ殴りにされてきなさいよ』
「そりゃ命令か?」
『ただの願望よ。言い換えるなら、篠守君に対する悪意の現れ?』
「なら断る」
そういうと共に電話を切り、眼下にある瓦礫の山々を見る。
一見分からない様に、わずかな隙間からこちらを窺い見る人間を複数確認。
どうせ、さっきの蒼い炎で一般人は気絶でもさせられてるのだろう。
そう検討付けたオトアは右手に《処刑刃》を創り出し、狩る順番を頭の中でシュミレーションする。
「……さて、最初に死にたい奴は名乗り出てもいいんだがァ」
潜む影に動きはない。
「なら無差別に全員、極刑な」
その声と同時に地へ降りた怪物を止めることなど、その場にいた全員には出来るわけも無かった。
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「あのクソが……ッ」
どこかの誰かに背中を足蹴りされてパラシュートなしのスカイダイビングをした俺は、まず辺りの惨状に驚いた。
どこを見たって瓦礫が積み上がっており、多くの人が地面に寝そべり気絶している。
奇跡とでも言おうか、その寝そべっている人全てに外傷はなく息もしている。本当に気絶しているだけの状態だ。
大凡、シキのお蔭だろう。蒼い炎でこの国全体を燃やし尽くしてオトアの破壊行動による死者をどうにか出さないようにした。
さすがはシキ、といったところだろうか。
「……さて」
後ろでは何らかの破壊音が聞こえる。
どうせオトアの野郎がまだ破壊し尽くしないのか、それとも囮としてなのかは知らないが、ともかく暴れているのだろう。
俺はこの内にシキと秋音を探して、二人をここから連れ出す。
最初からそういう算段だ。オトアが全てを破壊して、俺は二人を助け出す。
オトアからしてみれば何もかも予定通りなのかもしれない。俺にとっちゃ、なし崩しでこうなっているようにも思えるけど。
しかしどうやって探そうか。
オトアのお蔭、と言っては難だが……さがす範囲は大分限られている。
それでも時間は掛かるだろう。最悪、オトアの破壊行動が終了するより時間が掛かるかもしれない。
困った。仕方が無いから地道に探そうか。
そう思った瞬間、俺の視界が黒く染まった。
テスト終わって更新しようと思えば、内容がこんなのとか……




