探索
「――――答え方はYesかNoだ。ちなみにNoと答えれば叩き斬る。それじゃァ第一の質問―――――」
現在、襲ってきた敵と思われる人物を《不可視の鎧》の縫い付けという方法にて捕縛、拷問中である。
そもそもだ。正直な感想を言わせてもらえば、襲われても仕方ないと思った。
不法入国とか、敵だからとかそういう理由を抜きにして。
オトアはわざわざ敵に襲われるために、散歩をしなが力を振るって近隣の建物を倒壊。一応は人に被害が出ない様に工夫をしているらしいのだが、どうにも俺にはただ空気の槌で片っ端から薙ぎ倒しているようにしか見えなかった。
ともかく、歩きながら破壊を撒き散らしていた俺たち……主にオトアを止めるために敵が奇襲を図って、ボロ負け。
今に至る。
ここまで不条理だと、やはりオトアと俺では力の差というか思考回路の違いを感じる。
「そうか、分からない、かァ……それじゃ」
「やめ――――」
一体どういう手段を使ったのか知りたくもないが、捕縛していた敵の首はオトアの手刀で断ち切られ、その断末魔はどこにも響くことは無かった。
血飛沫すらも中空で見えない壁に当たったかのように、オトアに浴びられることなく地面に落ちていく。
「……それで、どうだったんだ。拷問の結果…………」
「んァ、それよりもオメェ顔色が悪いが大丈夫かァ?」
そりゃお前、目の前でそんなグロ映像を見せられれば誰でも吐き気がするわ。
ただ臭いもしないし、血も浴びなかったから吐いてないだけで、本当だったら吐いてるわ。
目の前で、悪事が働かれてるのに何も出来ない自分を感じれれば……誰でも嫌気が差す。
偽善すら届かない力の差を前にして、ただ殺人を傍観する側にでもなってみろ。バカオトア。
「結果だが……正直な話、下っ端には何も話しちャいねェそうだ」
「嘘っていう可能性は……?」
「無い…………が、まァ一つだけ予測はたった」
「予測?」
「敵は首都の中央部にいる可能性が高い」
「…………何で?」
「んァ……張空。お前がもしクーデターを起こすとしたら、どこを襲う?」
そんな想定、今までの人生で一度たりともした事ないんだが……。
でもまあ、テロとは違ってクーデターってのは国を乗っ取るみたいな感じだから…………。
政治と最も関わりが深い所を攻めた方が良いはずだ。だから例えば……。
「国会とか?」
「まァそうだろうな。政府機関が置かれている場所、その町などだろォよ……実はここはその町なんだが」
「…………えッ?」
「この国の要の場所がここだ。だからもしもクーデターをして政治の仕組みを変えるのならば、ここに多くの人がいるはずなんだが…………」
「……そういや、人の気配があんま無いな」
「いくら建物を薙ぎ倒そォとも、悲鳴や怒号の一つも聞こえない。一般人がまったくいない」
でもそれは普通じゃないか?
だって一般人とか居たって、邪魔だろうし……いや。
「どこの国に脅されるか分からねェから、普通、自分の傍に一般人は多く置いておきたいはずだろ?」
それなのに、一般人はまったくと言っていい程いない。
それどころか、オトアが数多の建物を破壊しようとも敵は少数しか出て来ない。
ここには人がいない。ここは敵の拠点じゃない?
「移動するぞ」
「でも、どこに?」
「正攻法で探したところで何日かかるか分からねェ。当然、作業をショートカットするわけだが……」
呟きながらオトアは空を見る。今日は雲一つない、晴天であった。
眩しいくらいの日差しは――――
「上だな」
「は?」
「発見次第、直接叩く。オラ、オメェも行くんだよ」
突然、襟首を掴まれたかと思ったら絶叫マシーンすら驚愕の速さで急上昇。
常世すべてのアトラクションのどれよりもスリリングで死をリアルに感じる事ができる体験だった。
というか、俺は持ち上げられたのかな? 死んで天国に行っている最中なのかな?
「おい、しっかりしろ」
まるで邪魔な物を捨てるかのように、オトアは俺を放り出した。
…………って、あれ? さっき急上昇したよな?
って事は、今ココ……お空の上?
「うぎゃああああっ! 落ちるぅぅ!!」
「ッるせェなァ、足場の上なんだから落ちるわけないだろ」
《不可視の鎧》によって作られた足場の上に現在俺は居るらしい。
というか簡単に状況を整理すると。
空を見たオトアは雲一つない光景を、見通しが良いだろう、という風に判断し《不可視の鎧》を駆使し空中に急上昇。
気圧や酸素濃度の影響を受けない様に俺にも《不可視の鎧》を纏わせて、足場も作り、今から探索なわけだ。
高性能で凡庸性も高いオトアの雑音拒絶。
それに比べて、俺のときたら…………。
そんな話はともかく。
「どうやって探すんだ?」
なんせ確かに見通しは抜群にいいが、小っちゃくて人がよく見えない。
「全部潰して、潰れなかったところに敵がいるだろ」
「……いやいやいや! 一般人も殺す気か!?」
「多少の犠牲は厭わない。そんな精神で行かなきャ時間切れだ」
「でもそれよりも安全な方法があるだろ!?」
「安全ねェ……」
どこか面倒臭そうに考えていたオトアだが、何かに閃いたような顔をして一言。
「敵が散らばッてて、何処に居るか分からねェんなら……わざわざ一ヶ所に集めてやればいい話じャねェか」




