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NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
本編 旅行
31/66

忘れ去られた理由

くふふ……くはははははははは…………。

…………ひゃっほーいっ!!

10月だぜ! 10月!! 幸せな月じゃないかぁ! はははははははははっ!!

もう最高! この上ないくらいに最高だよ、まったく!

今のこの俺の最高潮のテンションは遡ること二日前に……いや、夏休みに起因する。

忘れている人が多いだろう。事実、俺も忘れていた。

「旅行?」

「……忘れたの?」

俺を蔑むように見てきた義妹に若干ムカつきながら、記憶を辿る。

旅行、旅行……きっと義妹が行くという事は俺は絶対に行かないから、つまり―――。

俺、フリーダム!?

「……シキも一緒に行くから、それでアンタ一人になるけ―――」

「行ってらっしゃい!!」

マジかマジかよマジなんですか、ドッキリとかじゃないよなおい!

シキの野郎、貧乳とか言って以来、出会いがしらに燃やしてきやがって。

もう地獄の悪魔とか鬼とかともメル友関係になりそうなくらい会っちゃって……ってあれ、俺一度も天国に行った事がない?

「……随分と嬉しそうだけど」

「そりゃもう! 殺しにかかって来る黒髪も異常な量の朝食を嫌がらせのように毎日だしてくる金髪もいなくなるんだぜ! 嬉しくないわけが」

あ、ヤベッ。口が滑った。

「……ま、とにかく留守番よろしくね」

「ところで何日間の予定で?」

「……三泊四日」

三日間はこの家に義妹とシキがいないということか!

ヤバい、ヤバい。テンション上がってきたぁ!!

………………というのがまあ、二日前の出来事だ。

この二日間、この旅行のお陰で俺は平穏で平凡だが平和な日々を送れた。

今、この生きているという事自体が人類の最大の幸せだと気付けた。

しかし、だ。

明日で帰ってきてしまう。蒼い瞳の死神が。金髪の小悪魔が。

非常に残念だ。いやでも、旅行でシキが貧乳やらのことを忘れてしまっていたら俺が殺されることはなくなる。

まだ希望の光を捨ててはならない! 諦めたらそこで人生終了だよ! 冗談抜きで!

そんな風に自分を励ましているときであった。玄関のチャイムが鳴った。

「はーい」

ってな風に何の警戒もなくただ普通に玄関を開ける。

そこに立っていたのは薄ら笑いを浮かべる不気味な人間だった。



上は中途半端に肩位まで伸びている。身長もそこまで高くなく、中性的な顔立ちをしている。

男とも見えるし、女とも見れないわけじゃない。女=胸があるという方程式は俺の中ではとある死神さんの存在で否定されているから、なおさら分からない。

「いやー、上がらせて貰って本当すまないね~」

笑いながらその来訪者はそう言いながら俺に愛想笑いを向ける。

「それで、どこの誰で誰にどんな用なんですか? もしもシキが目当てだとしたら―――」

「わざわざ旅行で一人しかいない張空家に来たんだ。張空小月に用があるに決まってるでしょ」

……俺に用? こんな奴に覚えは無いから、多分裏の世界の人間だとは思うけど……。

自分で言うのものなんだが、俺にわざわざ会いに来る価値なんて無いと思うぞ。

…………魔神の魂が中にあるという事以外では。

「そんな警戒しなさんな。別に襲いにきたわけじゃないんだし~」

「……じゃあ何しに来たんだ?」

さっきから飄々と軽い調子で気味の悪い笑いをされているからか。

何となく、癪に障るこいつにいつの間にか警戒していた。

「いや君に一度会ってみたいという人がいてね……ホントあの人は遣われる奴のことを一切考えないんだから困るよ」

「あの人…………?」

「あぁ、まあ気にしなくていいよ。そんで小月君に会いに来たのはそれだけじゃなくてぇ他にも理由があるんだけど、一つ確認」

「何だ?」

「黑鴉、今ある?」

「……魔神に頼めば、いつでも出せる」

まあ師匠のところに取りに行けばいいんだけど。魔神に頼んだ方が圧倒的に早い。

「あっそ。だったら旅行先で【蒼い死神】やら張空秋音やらがクーデターに巻き込まれようが焦る必要はないね」

「…………あ?」

「あー、ダルイな。簡単に説明するよ。一日前クーデターが起きて、その場所にたまたま【蒼い死神】やら張空秋音やらがいましたとさ」

「……えっ、いや、どういうこと?」

「助けるor助けない。さー、どっち?」

「いや助けなんかいらないだろ」

シキには蒼い炎がある。殺人鬼が襲いかかろうが、テロリズムが起ころうが、あれがあれば瞬時に解決。

敵全滅で幕を閉じる。

「それがさぁ、張空秋音を人質に捕られたみたいで【蒼い死神】も手も足も出せずにお手上げで、挙句の果てには自分も人質になっちゃったわけみたいでさぁ」

「……おい、それ本当か?」

「だからわざわざ君に会いに来たんでしょうが。まあ連れて来いって言われたから来たっていうのが本音だけど。でどうするの? 助ける?」

「助けるに決まってるだろうが!」

「うわ、うるさい。こうやって怒鳴られたり殺されかけたりするのはいつもこっちの役目で、あのアマは自分がポテチを横取りする手段しか考えずに済むなんて、本当世界は不条理で出来ているとしか思えないよ、本当」

その後しばらくブツブツと小言を言った後にソイツは立ち上がって俺に向かって言った。

「まあ取り敢えずついて来て。まずはあのアマに会って、まあその後は交通手段とかはソイツが整えてくれるから」

今年最後の更新。よいお年を

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