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NOISE.2  作者: 坂津狂鬼
本編 デート?
24/66

結論3つ

「畜生、畜生……なんで【蒼い死神】なんかが介入してくるんだよクソッ」

そんな事を呟きながら逃げようとする帽子を被った子供の前に何かが通り過ぎる。

それはオトアが作りだした剃刀のような縦型の刃だった。

「自分だけ逃げて助かろうってかァ? 人生そんな上手くいくもんじゃねェぞ」

シキを振り切ったオトアは、最後の仕事に取り掛かる。

「……篠守音亜…………なんでそんな怪物がココにいるんだよぉ……?」

「全員揃って同じこと言いやがって、つまんねェ奴らだな」

「クソックソックソッッ!! 死ねぇ!!」

そう子供が叫ぶと、蛇のように連続して爆発が起き、最終地点であるオトアの居る場所において取り囲むように爆発、それが更なる大爆発を呼び寄せる。

が、

「変わった遺言だなァ」

《不可視の鎧》の前にはそんなもの通用しない。

爆炎の中からこちらに歩いて来るオトアを見て、子供は呆然としその場に膝を付く。

「……ガキを苦しめて殺すのも目覚めが悪ィ」

オトアは子供を見下ろす形で、そう言うと右手を上げる。

「だからせめて、楽にスパッと殺してやるよ」

上げた右手を手刀の形にすると、前腕部から手刀のさらに先までの空間が歪み始める。

「なんだよ……それ」

「《不可視の鎧 処刑刃ギロチン》。まあ簡単に説明すれば、隔てる力そのものだ」

歪み始めた空間は、段々と右手を包みながら出刃包丁の様に変形していく。

「つまり、コイツの効力ってのは―――」

なんの躊躇いも無く振るわれた右手の軌道に沿うように子供の体がなんの抵抗も無く二分割に切断される。

「空間切断だ。肉や骨による抵抗も無しに人体をスパッと切れちまう」

出刃包丁の様に変形していた空間は元に戻り、オトアは自分に掛かった返り血を拭う。

(……昔に作りだしたもんだったが、結局、すべての原理は空間を隔てる事にあるってわけか。無意識のうちに理解してたのかもなァ………)

しばらくその場に止まり、携帯のバイブルが鳴るのを待つ。

数分後、少女からの電話があった。

『調べ終わったよ。ビンゴだった』

「そォか……」

『それで、篠守君。結論を聞かせてよ』

「……今から言う事はオレの勝手な推論だ。理論的に有っているだけで、実際にそォなのかは分からねェ」

そう言いながら、オトアは独りでに歩き出す。

「魔神の力は知ってッか?」

『夢、だっけ?』

「あァ。正確には事象の有無。無い事を有る事にして、有った事を無かった事にする力だ」

『それが?』

「8年前の魔神の死体。それと2年前の張空陽介の死体。この二つには同じ共通点がある」

『外傷が無い事、死後硬直が無かった事、死神の力でも生き返らなかった事でしょ?』

「違う」

即座に否定したオトアはそのまま言葉を続ける。

「死体が偽物だって事だ」

『…………偽物?』

「まァ、こっからは順を追って説明する」

『出来るだけ分かり易くね』

「魔神の力は、【蒼い死神】とは違って湯水のようには振るえねェし代償も存在する」

『それは知ってる』

「魔神が事象を変える際に、既存する物体や空想の物体、負った傷などは簡単に変更できるが規模によっては話は別だ」

『リスクが生じるの?』

「いいや、リスクは生じねェ。生じるのはタイムラグだ」

『変えるのに時間が掛かるっていうの?』

「あァ、人の過去の経歴や容姿を変えるのには時間が掛かっちまう。他人の記憶をすり替えたりするのにもな。そういう関係で、人の死は変更する事が出来ない」

『へー、でもそれがどうしたの? っていうか説明ダルい』

「とんでもない事を言い始めるなァ。聞かせろッつてきのはオメェだろ」

『もう結論から説明して。そっちの方が早いでしょ?』

「まあ、それもそォだが」

オトアは歩みを止め、辿り着いた答えを言う。

「オメェに調べて貰ったことで分かった事は3つ。一つ目はオメェの聞きたがっていた張空陽介のシナリオの一部だ」

『早く聞かせて』

「まず2年前の張空陽介の死体。あれは魔神が創りだした張空陽介の偽の死体だ。死後硬直が無かった点と【蒼い死神】の力が効かなかったこと。この二点からして魔神の創りだした偽造死体って事で間違いねェ。それによって考察できるのが、張空陽介と魔神とは2年前コンタクトを取っているという事。そしてこれは勝手な妄想だが、張空陽介は魔神を使用して何かをしようとしている。だから張空陽介の狙いを潰すために相手側が今回の事件が起こしたという風に推測できる」

『待って篠守君。魔神は8年前に死んで、今は張空小月の中に居る。つまり張空小月もこの事実を知ってるってわけ?』

「いいや、知らないだろォな」

『それじゃその話は無理が生じる』

「あァ、そォだな……二つ目の結論。8年前の魔神の死体も偽物であった。根拠は同様」『それでさっきの話が成り立つと?』

「成り立ちはしねェだろォな。二つ目の結論で証明出来る事と言えば魔神の本当の肉体が未だにこの世界に存在しているという事くらいだァ。ただ三つ目の結論に結びつくだけのものだからな」

『それじゃぁ三つ目の結論とやらを聞きましょうか』

「三つ目の結論……魔神は力と意識を張空小月に、肉体を別人として変更し、今も生きている」

『……それでも魔神の力を行使するには――』

「張空小月の体から一時的に離れて、肉体に戻る事は不可能じゃない」

『断言できるの?』

「力の一部程度なら、無理じゃない。確証はある。言えはしないがな」

『…………そう。つまり取り敢えずは、張空陽介の狙いは魔神であるのね?』

「あァ、おおよそだがな」

オトアは後ろを振り返りながら、混濁した話を簡潔に纏める。

「つまり、張空陽介は未だ世界のどこかで生きていて、8年前に死んだとされる魔神……篠守唯音の肉体は張空秋音に変わり今も生きているってわけだ。理解できたか【蒼い死神】?」

「な……んて…………?」

オトアの視線の先には、動揺するシキの姿が有った。



「おい、大丈夫か秋音?」

オトアの言う通り、鉄骨の山の後ろ側に横たわっている義妹の姿が有った。

肩を揺らしながら意識の有無を確認してみる。

「……ん…ぅう…………」

ゆっくりと義妹が瞳を開いていく。

「はぁ…………」

何となくだけど、終わったって感じがして思わず安堵の溜息が出る。

直後、義妹に殴られた。

「何すんだよいきなりっ!」

「……ここは?」

「俺へした事は無視かこらぁ!」

「……うるさい」

「グハッ!!?」

「……それでココは?」

「遊園地」

「……もう一発殴られたい?」

「その前に、もう帰るぞ」

「……へっ?」

「トラブルによって、閉園だ」

「……そうなんだ……シキは?」

「あとから合流する。ほれ、立て」

そう言って、俺は手を差し伸べ、義妹はそれをしっかりと握りしめる。

分かりづらいと思いますよ。

だから結局オトアの最後の台詞が全てです

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