集結、直後分散
タイトルなんかに統一性がない……
『分かった、調べておく』
「オレは引き続き仕事を終わらせる」
『そう、じゃあ早く終わらせてね』
「オメェもさっさと調べろ」
そう言って通話を切るオトア。
しばらくその場に立ち止まった後、片方の踵を浮かせそこに歪めた空気の球を作る。
(…………優先すべきは張空秋音の安全か、それとも敵の全滅か……)
作りだした球を軽く何度か踏みながら思案する。
(……張空秋音の安全の方が優先だな…………)
彼は珍しく人を守る選択をし、球を爆発させ水平方向へ一気に移動する。
「んじゃ、秋音が勝手にどっかに行ったっていうのか?」
「あぁ……すまない、一瞬のうちに消えたんだ」
「別に責めるつもりはねぇーよ」
どうせ義妹なら俺と違っていきなり殺すやら言われないと思うしな。
「でも、どうすっかなぁ…………合流したくても場所が分からないし」
「いや、頑張れは場所は分かると思う」
「どうやって?」
まさか走り回ればとか荒唐無稽な事を言い出す気じゃないよな?
「アタシの力を使って」
「シキの……? でも」
シキの力は、生命力を自在に操る力。
使用法としては生者を殺し、死者を蘇らせるみたいな感じだ。
それがどうやったら、人探しに繋がるんだ?
「遊園地内を一瞬全て燃やして、園内の何処に何人いるかを把握する」
「出来れば止めといた方が良いんじゃないかな、走って探した方が安全な気がする!」
絶対に誤って園内の人が一瞬で死んじまうって!
無理だ、シキにただ普通に蒼い炎を一瞬だけ出して何もしないなんて!
「大丈夫だ。亜実に教えられた技術だから」
「亜実……ああ、あの茶髪か。でもいつの間に? 初日の特訓サボるために今日遊園地にいるんじゃ?」
「知っていたのか……張空陽介が宣戦布告してきた日に、無理矢理やらされたんだ。だからサボるという発想が出てきたんだ」
へー、シキもシキで大変なわけだ。
でも何で茶髪は、一瞬だけ燃やすっていう危険な発想をシキに与えたのかな。
探索にしたって危険すぎるだろ。人を一瞬で殺せる炎なんだから。
「それじゃ、やるから周りに注意してくれ」
「注意?」
「殺しもせず活かしもせず、ただ炎を出すだけはある意味集中しなきゃいけないんだ。規模も大きいしな」
「……つまり、敵が来ないか見張ってろって事か」
「あぁ。頼んだ」
そう言い、シキは静かに目を瞑りながら集中し始めた。
「んァ?」
オトアが身に纏っていた《不可視の鎧》が一瞬だけ蒼く輝き、瞬く間に元の無色透明に戻った。
(……【蒼い死神】か…………オレへの……いや無差別か、それも攻撃じゃねェな………………)
とにかく自分への害は無い。
そう判断したオトアは高速そのまま移動を続ける。
(…………居た)
相手の標的で、今の自分の優先事項。
金髪の少女を見つけたオトアは、そのまま少女の元へ移動しようとした所で上から降り注いできた鉄骨に通路を塞がれた。
《不可視の鎧》によって直撃は免れたが、強制的に止まらなければならなくなってしまった。
「動物園にいた動物達を無理矢理ひれ伏させるなんて、動物愛護団体に訴えられますよ」
「訴えられんのが怖くて、人殺しがやっていけるとでも思ってんのかァ?」
声のした方向へ振り返りながら、オトアはそう言う。
「篠守音亜。なんでそんな災厄のような人物がここに居るんですか?」
声の主は、普通のどこにでも居そうな人柄の良さそうな優男の風の人物だった。
「バイトだよ、ただのアルバイト」
「ただの、の一言で人殺しを許容されたくは無いですね」
「オメェこそ、なんでココにいる?」
「バイトですね、どこにでもあるアルバイト」
「テロの間違いじゃねェのか?」
「さぁ。そうかもしれません」
しばらくの沈黙。徐々に緊迫した空気に変わっていく。
「生物の……いや、物の操作がオメェの力か」
「物って、大雑把にまとめちゃうんですね」
「正確には、可動する物体の操作か」
「もっと正確に言ってしまえば、人以外の生物と可動な機械なんですけどね」
「おいおい、自分の力の詳細なんて教えちまっていいのかァ?」
「教えようが教えまいが、自分の力は貴方の前では無に等しいでしょうから」
優男の発言に、オトアは眉をひそめた。
「何か手でもあるよォだな」
「えぇ。悪名高き篠守音亜が相手ですから。自分が手を下さなくても他の人が相手を引き受けてくれます」
「ヤバい! やっぱりアイツは居たんだ!」
「何だどうしたシキ?」
発狂したか? いつもは集中なんてしてなさそうな奴だもんなお前は。
「オトアだ! オトアが高速でどこかに向かってる!」
「へー、お前の炎は誰だかまで分かるのか」
「……いや、そんな事は分からない」
俺の冷めた発言に、シキも連られて冷静になる。
シキの探索は聞いた話だと、あくまで何処に何人いるかを把握するだけ。
誰が、までは分からないんだろう。
「でも! あの速度はオトアだ!」
オトアが高速移動するところなら俺も見た事がある。
でも、
「オトアの移動速度をお前は知ってるのか?」
「……知らない」
この世に高速移動できる人間がオトアの他にも居ると言われてもおかしくない。
雑音拒絶は拒絶の度合いで力が変わる。スピードだってそれで補えると言われてもおかしくない。
「ッ!! いい事を思いついた!」
「却下だ」
「直接確かめに行けばいい!」
「人の話を聞け」
「分かったら早く行くぞ小月、もしかしたら秋音もそっちにいるかもしれない!」
「んな都合のいい展開があるわけねぇーだ無理矢理引っ張んな腕が千切れるってマジで!」
こっちの意見など聞く耳を持たずに、腕を引き千切る様に俺を引っ張りながらシキはどこかへ走り出した。
「オトアっ!」
「…………そォいう事か」
「本当に居やがった……」
三者三様の態度を取りながら、シキ、小月、オトアは園内のとある一ヶ所に集った。
「……張空ァァッ!」
「ひゃいッッ!?」
威嚇するような態度を取るシキを見て、オトアは状況を判断。
不可能な【蒼い死神】の説得を諦め、冷静に判断できる人間にこの場を託すことにした。
いきなり名前を呼ばれた本人は、小心者の様に驚き、何事が起こるのかと動揺しながらも身構える。
「あの鉄骨の山の向こうに張空秋音が居る。そしてそこに張空秋音を攫おうとする男がいる」
優男を顎で指しながら、オトアは続ける。
「この状況で自分が取れる最適な行動を取れ。オレはこの場から退く」
そう言うと、オトアは浮かせた踵の間に空気の球を作り、それを爆発させその場から高速移動で立ち退く。
「……シキ。オトアを追いかけろ」
「でも……あの鉄骨の山の向こうに秋音が居るとか」
「オトアの言葉だぞ、信じるのか……?」
「いや、それは…………」
「……俺はオトアの言葉を信じてあの山の向こうを調べてみる。シキはオトアの言葉を疑って追いかけて行ってくれ」
「逆の方が、適任じゃないのか?」
「いや、俺だとオトアに追いつけない。速度的に」
「…………分かった」
そう言うと、シキもオトアを追いかける為にその場を退く。
残ったのは二人。優男と小月だけ。
「本当、逆のほうが適任じゃなかったんですか?」
「シキは少し単純だからな。簡単にお前を倒してしまう」
「返す言葉も無い。でもそれで問題無いでしょ? なんせ敵なんだから」
「いや、俺的には問題ある。聞けなくなっちまうだろ」
「何を?」
「張空秋音を攫った理由。まあ、あんまり期待はしていないがな」
「それを聞くためだけに自分とタイマンですか。張空小月は殺しておけと追加で依頼が来ているんで、簡単にぶっ殺してしまいますけど、貴方は強いんですか?」
「弱いよ」
簡単に自虐した後、小月は少し頬を緩ませる。
「ただ、実験台がちょうど欲しかったんだ。ある事を証明するための」
「証明?」
「気にするなよ。それが証明できたら、お前は俺に勝てなくなるだけだから」
小月の癖に余裕ぶりやがって、そこまでぶっ殺されたいか。
ともかく後2話以内に遊園地の一件は終わらせるつもりです。
ようは、次で小月は勝たなきゃいけないという制約が。
黑鴉が手元にあるから、まあ勝てない事は無いとは思うんですけどね




