夢
第二、第三、第四、第五。
次々に爆発が各地……主に俺の数秒前まで居た場所で起こる。
「ぐッ…………っくしょうが……ッ!」
「チッ………ちょこまかちょこまかと」
爆風に煽られながらも、俺は必死に帽子のガキから逃げようとする。
徐々にだが足も体も重くなってきている。いい加減シキに保護されたい。
……それにしても、おかしい。
爆発は最初の一回から全て、単発で行われている。
一回爆発したら、数秒の間は爆発しない。
まあ逃げる分には問題は無いけど…………わざとか? それとも、そうしなければダメなのか?
ともかく俺が言えることは一つ。
シキに早く会って、この命懸けの状態を脱したい!
もう無理! 風圧で体中が痛い!
直撃してないだけで、ダメージは蓄積していくって鬼な設定だ。こんちきしょう!
俺はスーパー一般人なんだぞ!
「しゃーない」
帽子のガキがそう言ったのが後ろから聞こえた。
だからといって重たい足を止めるわけにはいかない。むしろ、もっと無理してスピード上げなきゃヤバい気がする!
あぁ、せめて黑鴉があったら完全に逃げれる気がするのに。
「……せーのッ!!」
ガキの掛け声と共に、俺を囲むように(それと俺自身に向かって)連続的に爆発が起こる。
爆発と共に、撥ね飛ばされる感覚と万力に体全身を潰されるような感覚のダブル激痛にブツッと何かが途切れる音がした気がした。
つまり爆発の直撃、それと辺りの爆風による圧迫で俺の意識は一瞬にして途切れた。
同じくブツッ! と何かが途切れる音を聞いた気がした人物が同じ遊園地内に一人いた。
しかし小月の意識が途切れるとは違う意味で、ブチ切れるという意味であった。
「クソ共、土下座ァ!」
乱暴に腕を振り下ろすと同時に、オトアを囲んでいた鳥類達と哺乳類達と爬虫類達は地面に上からの圧迫によりアスファルトの地面に叩きつけられる。
総数を合わせれば100近くに達するであろう動物達を地面に平伏せさせながら、オトアは面倒臭そうに頭を掻く。
《不可視の鎧》でオトアに攻撃が入る事は無いが、100に至りかける動物たちに囲まれ完全に視界を塞がれギャーギャーうるさく喚く状況にオトアのしょぼい忍耐が持つわけも無かった。
「何なんだよ、まったく…………」
動物を踏みつけながらオトアはその場を離れる。
(……敵は見つからない、助けた標的には逃げられる、どうすッかなァ…………)
当てもなく、フラフラと園内を徒歩で巡るオトアは先程から遠くの方向で鳴り響いている爆音を無視して考え耽る。
そんなオトアのズボンで何かが鳴り始めた。
(…………そういや、雇い主に持ち歩くように言われてたな……)
ズボンのポケットから携帯を取り出し、適当なボタンを押す。
『どう? お仕事捗ってる?』
「そォだな、それならイイんだが」
『ダメダメなんだー、使えないね篠守君』
「ウォームアップ中だ、文句を言うな」
『言い訳なんか聞きたくないよ。わたしは使えない犬はすぐに捨てる主義なんだけど?』
「そりゃ助かる。早めにオメェの元を離れたいもんだ」
『躾けのなってない犬…………お兄ちゃんとか言ったらわたしの言う事聞いてくれるのかな?』
「ブッ殺されたいのか?」
『これからは篠守君じゃなくて音亜お兄ちゃんって呼ぶから、さっさと仕事終わらせてくれない?』
「絶対にあとでブッコロスから覚悟しとけ」
『分かったから音亜お兄ちゃん早くお仕事終わらせてよ』
「これ以上、そのネタを引っ張ったら本当にブッコロスけど文句なんて一つたりともねェよなァ?」
『ツンデレだなー、お兄ちゃんったら』
「確実にコロス…………それよりも」
『ん? なになに音亜お兄ちゃん?』
「…………標的が少年じゃなく少女だったんだが?」
『……それはどういう事かな、篠守君?』
「オレが聞きたい。オメェの言う通り【蒼い死神】の傍にいる誰かって事で間違いないのなら、今すぐ調べとけ」
『…………今、調べがついたよ』
「随分と早いんだな」
『篠守君もこれくらい早く相手の要求をこなすべきだと思うよ』
「それで、誰なんだ?」
『張空秋音。張空小月……篠守君を追い詰めたガキの義妹だね』
「秋音……? 随分と…………懐かしい名前だな」
『え? 知り合いなの?』
「いいや、昔、考えさせられた名前だ」
『???』
「関係は、無いと思うが……張空秋音の情報をもう少し集めてくれないか?」
『言われなくても。その娘が相手の標的なんでしょ? 狙う意味は確実にある』
「あァ。その間、オレは敵を殲滅してる」
『こんなにお仕事のペースが遅いのに、殲滅なんて言葉を使っていいの? 日本語間違ってない?』
「お勉強には向かない性格なんでね」
そう言うと、オトアは通話を切り、上を向く。
「さァて、オレの力はお空を飛ぶ事は出来んのかなァ?」
両踵を浮かせ、その間に空気を圧縮した球を作る。
そしてそれを爆発させ、オトアは自らの体を垂直に飛び上がらせた。
「で、俺は死にかけたらここに来ると」
「まあ私にとって、貴方が死ぬことは困るからね」
白と黒、そしてその間に一枚の鏡がある空間。気付いたらそこに居た。
鏡の向こうには腰まで伸びた白い髪で顔を隠している少女が一人。魔神であるらしい。
「私、思うんだけど」
「何だよ?」
「貴方って極上に弱いし、バカだよね」
「言うなよ。俺が一番自覚してるんだから」
オトアの様に強い力は持っていないし、兄貴の様に鬼才と呼ばれるほど有能であるわけでもない。
それが俺なんだから。
「力、貸してあげよっか?」
「暴走しろと?」
「……言っておくけど、暴走したのは私が悪いんじゃないからね」
「いや、そういう事じゃなくて」
黑鴉が無い今の俺が魔神の力を借り受けたって、暴走するだけだろって話だ。
「ってかさ、魔神の力って何なんだ?」
「え、今頃?」
魔神の力を借り受けたのは二回。
一回目は暴走。
二回目は捨てた。
つまり、俺は今まで一度たりとも魔神の力を拝んだ……というか理解して使ったことが無いのだ。
本当に俺ってバカだよな。
「シキが命を司るように、私は夢を司るの」
「夢?」
「無い事を有る事にして、有った事を無かった事にする力かな?」
「何それ!? 最強じゃん!」
「だから魔神って呼ばれてるんだけどね」
「なぁ、それって人の死も無かった事に出来るのか?」
「それは無理。死神じゃないんだから」
別に誰かを生き返らせたいわけじゃないけどな。
魔神一人で全てが出来る程、現実は甘くないか。
「そしてシキと違って私の力には副作用がある」
「……悪夢か?」
「そう。力を使おうが使わなかろうが自分が惨殺される悪夢を見る」
「慣れれば、大したデメリットでも無いな」
「……普通の人は、そうとは考えないと思うんだけど」
そうなのか?
8年間かかさずに自分が殺される悪夢を見れば、案外平気なもんだろ。
あ、でも目覚めが悪いな。しかしそれだけだ。
「多分ね、睡眠不足になるっていう風に普通の人はなると思うんだ。目覚めが悪いだけじゃ済まないと思うんだ」
「いや、俺はスーパー一般人だけど割とそれだけだ」
現実は悪夢よりも苦なり、って事かな。俺にとっては。
「ともかく、俺が今その力を借りたって暴走するだけだろ」
「だから、創ればいいじゃん黑鴉」
「……創れるの?」
「持ってなければ創りだせばいいだけでしょ?」
「恐ろしく無謀な事を言いだすなお前は」
「ただの既存の大型拳銃ごときを呼び寄せるなんて私の力を持ってしたら朝飯前だから」
なんて頼もしい魔神なんだ。
「その代り、あとでシキの水着姿の――」
「黙れよ変態。さっさと力貸さんかボケ」
なんて残念な魔神なんだ。
gdgdな展開しか書けない俺がもう嫌だ。誤字脱字ばっかりに違いないんだ……
まったく関係ないですけど。
【蒼い死神】と魔神を戦わせたらどっちが強いんですかね?
っていうか魔神の力を持ってすれば、オトア自慢の《不可視の鎧》も消えるんじゃ?
じゃあ、魔神とオトアを戦わせたどっちが強いんですかね?
シキとオトアではオトアの方が強かったけど。魔神の強さはどのくらい?