対峙
「篠守音亜!? 何でここに!?」
「細けェ事は良いんだよ」
一歩一歩、少女を誘拐していた男に近付くオトア。
男は尻餅をついた様な状態のままで退こうとするが、直後、体が硬直したように身動きが取れなくなる。
「な、何で……ッ!??」
「《不可視の鎧》応用、名付けるならァ……縫い付けって所か。オメェの体をオレの力で包んで、その場に拘束しただけだ。これでゆっくり話が出来るなァ」
男を見下ろす形でオトアが問いかける。
「何故、少年じゃなく少女なんだ?」
「……はぁ!? 知らねェよ! 俺達のボスが今回の計画はそこにいるガキを攫う事だって」
「そォか、下っ端じゃ役に立たねェか」
溜息混じりにそう言うと、オトアは男に背を向け、少女の方へ行こうとする。
「み、見逃してくれんのか……?」
「見逃すだァ?」
首だけを動かし、男に視線を向けたオトアは、
「死ぬに決まッてんだろ」
指を鳴らし、男の頭部が圧縮され破裂する。
死体に目もくれず、オトアは少女の方へ向かう。
金髪である容姿からして、日本人では無いだろう。
オトアはそう予測しながら、何か少女の身分が分かる物を探ろうと手を伸ばした瞬間。
突如現れたライオンと熊と虎に襲われた。正確には、《不可視の鎧》を一応纏っていた為、襲われかけただが。
空振りをした、三体の獣にオトアは空間を破裂させ吹き飛ばした。
「……ッたく、何で遊園地に来てまで物騒なネコ共に襲われなきゃいけねェんだよ」
頭を掻きながら立ち上がり、オトアは吹き飛ばした獣達の方へ視線を向ける。
獣たちは、もうすでに次の突撃を仕掛けようとオトアに向かって走り出していた。
「ハァ……無駄に活気に満ち溢れやがって。止めるコッチの身にもなって欲しィもんだ」
ぼやきながらオトアは指を鳴らし、《不可視の鎧》で先程の男と同じように獣達の動きを止める。
動きを止められても尚、抵抗の意思を見せつけるように雄叫びを上げオトアを威嚇する獣たち。
騒音にウンザリしたオトアは、ある発想を思いつき、また指を鳴らす。
次の瞬間、抗うような雄叫びは微塵も無く消え去った。
「空間を隔てる能力って事は、音の遮断も出来るってわけか……案外、便利なもんだなァ」
自らの能力に感心しつつ、今度こそ少女の身分を証明するものを探ろうとする。
が、少女はもうすでにいなかった。
無言でオトアは辺りを見回し、舌打ちする。
(……糞共の目的を連れまわせば、簡単にぶち殺せまくれるとは思ったんだけどなァ…………〉
溜息を吐きながら、オトアは適当に歩き出す。
少女が勝手に逃げたとしたら、まだこの近くに居るはずだ。
つまりは、この近くに敵が寄ってくる可能性が高いという事。
少女に会うのが先か、敵に遭うのが先か、はたまた誰とも会わずに時間を潰す事になるのか。
欠伸をしながら、オトアは頭を掻く。
そんなオトアに獣の群れが向かってくるのは数十秒後の事だった。
「はぁ……はぁ…………」
と若干息切れしかけている俺だけども、実際はまだまだ走れるような気がする。
なんだろう。前までは結構キツイ部類まで行ってると思うんだけど。裏の世界に関わって死にかけまくったからか?
慣れって怖い。
にしても、二人とも見つからない。
シキと義妹はちゃんと無事なんだろうか? というか義妹の方が心配だ。
裏の世界に関わっているからと言って、オトアやシキのように強いってわけじゃないと思うんだ。
第一、鑑師匠なんかは戦闘員じゃなくて物作りが専門だった。
そんな風に、義妹も戦ってめっちゃ強いってわけにはならない。だから心配だ。
そして次に心配なのは俺自身。正直言って、俺は弱すぎる。
だから早くシキに逢って、保護して貰いたい。独りで行動するより確実に安全だ。
義妹がシキに保護されてて、そこに俺が合流するのがベストなんだが……。
どうにも胸騒ぎがする。嫌な予感というやつか……。
「おい、お前」
突然、後ろから声を掛けられた。
止まるしか無いだろうな。普通に考えて。
今の状況からして、今俺に声を掛ける奴なんて裏の世界の……敵しかいないわけだ。
「んだよ、俺は今忙しいんだ」
「こっちもだよ。こんな面倒事さっさと終わらせたい」
「ところで聞くけど、その面倒事ってのは?」
「人殺し」
もうヤダ、殺しとか俺の専門外だから。
基本俺はかませ犬以下の存在なんだぞ、こんちきしょう。
相手の顔も見たくない俺としては、このまま走り去って見逃して欲しいんだけども。
「つーことで、死ね」
と、言う事ですね。俺の人生がいきなりクライマックス?
って疑問詞つけてる場合じゃねぇ!
俺は適当に横に全力で飛び退くが、何かの衝撃に当たり、そのまま近くにあったベンチまで吹き飛ばされる。
「痛ッてぇ………」
ベンチにモロに頭ぶつけた。
あぁ、もう最悪だ。
っていうか今、何で俺は吹き飛ばされたんだよ。
「あぁー、避けるなよ。面倒だろ」
「……ったく、何でまた俺が殺されなきゃあかんのよ」
頭を擦りながら、立ち上がる俺の視界に攻撃してきた奴の姿が映る。
中学生……いや小学生か?
ともかく割とまだ身長も高くなく、帽子を被った童顔のガキが居やがった。
っていうか童顔ってわりと女だか男だか分からない時が無いか? 帽子なんか被ってやがると。
「一応確認しておくが、張空小月だな」
声変わりもしてないし、普通に男女どっちだか分からんね。
まあどっちにしろ、俺を殺すんだろうけど。
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