内側の行動
何度言っても収まらない、タイトルなんかに意味は無い
ファミレスで俺はドリンクバーを、茶髪は肉の類の料理全てを注文した。
俺は最近思う。裏の世界に関わっている女性は大食漢になる呪いでもかけられてるんだろうか?
シキしかり義妹しかり茶髪しかり。絶対に食ってる量が胃袋の大きさと合っていない。
「それで、昨日の事だが」
「何言ったんだ、張空陽介は?」
俺はコーラを啜りながら茶髪に問う。
茶髪は、両手に骨付きチキンを持ち、そのまま食いながら答える。
「またもや予言をしてくださったよ」
「予言?」
「こちらが何時何処で誰が誰に奇襲を受けるかという、予言だったよ」
「………意図は? 予言をわざわざ伝えに来た意図は?」
「そんなものを言うと思ったか?」
「そうか…………」
兄貴は今、どこかで生きている。そのどこかで誰かとゲームをしている。
そのゲームの内容は多分だけど、戦争。
多分、今回の予言はそのゲームの中での兄貴の一手。
相手の手を錯乱させるためか、潰すためか、相手に対する攻撃か。
どれにしろ、今は兄貴の手の通りに流されるしかない。
「おい、どうした張空弟?」
「……何でも無い。それより俺の能力についてだ」
ともかく今のところは兄貴は味方らしい。なら今のところはこれ以上疑わなくていい。
今のところは。
それよりも自分の能力についてだ。
なんか他の事を考えすぎててずっと忘れてたが、これもこれで謎の塊である。
相手の行動を歪める力が俺の能力なのだが、まあしょぼい。
受動的だし、回数制限あるし、相手の動かそうとした部分しか効果が無いし、効果も簡単に切れる。
その上、能力に矛盾まで発生している。呼吸などは行動に含まれないという矛盾。
まあ、別にそんなの俺的にはよろしいのだけど、一応茶髪はその矛盾の答えをしってそうな事を言いやがった。
「まあ、アタシの予測なんだが」
予測かい。答え知ってるんじゃないのかい。
………とは言いたいが、さすがに他人の能力の全てを知ってますなんて図書館みたいな奴には見えないし、兄貴のような何でも解けちゃいますよという化物にも見えない。
だけど茶髪は矛盾に気付いた。その上でその答えを推測した。
天才では無いんだろうけど、無知な凡人からしたら凄い事である。
「お前の能力は、外側の行動以外の……内側の行動も歪められるんじゃないか?」
「内側の行動? んだ、それ?」
多分だけど、茶髪の言ってる外側の行動って言うのは目に見える行動の事を指してるんだろう。
となると内側の行動って言うのは……心の行動って言う事か?
「そうだ。心理的な部分も歪められる可能性がある」
「行動原理っていうか……動機を歪められると?」
そんな事が出来たら強力過ぎる。動く理由をこっちで勝手に歪められるんだから。
「お前の実際の能力は、相手の外側と内側の行動を歪める能力。しかしその強力さにお前の拒絶の度合いがついていかずに、回数制限や効力の短さなどの欠点が出てきたとアタシは思うんだ」
「確かに……それなら道理が通っているような気がしなくもない」
俺の拒絶の度合いは小さい。だから能力もしょぼいと思っていた。
しかし相手の行動理由まで歪められるんなら、このしょぼい能力も最強能力に早変わりだぜ!
…………と、言いたいのは山々なんだが。
「どうやるんだ、それ?」
「知らん」
「ですよねぇー…………はぁ」
受動的で相手の動かそうとした部分しか歪められない、という欠点は有効だ。
相手の心理状態が分かる様な天才さんじゃない俺に、この能力って………。
「しかしまあ、宝の持ち腐れだな」
「言うな!」
まったく茶髪の言う通りである。
結局のところ、俺の能力がしょぼいままという事は変わらない。
何だよ、期待させやがって。結局はこういうオチかよ。
「最後に、アタシからも聞きたい事があるんだが」
「そういうやシキがなんたら言ってたな」
いつの間にか、頼んだ料理を全て食い終わっていた茶髪に俺は若干引きながら話を聞く。
「明日、シキの奴に特訓をしようと思ったんだが用事があって無理だという」
「へぇー」
「用事は張空弟、お前とのデートだと言ってるのだが」
「そういや、そんな事もありましたねー」
っていうかデートうんぬんはサボりの為の理由だったんかい。
わざわざ面倒な理由を立て並べやがって、お蔭で俺は魔神に呑まれかけたんだぞ。
つーか茶髪に対してデートなんていう言い訳したってサボれるわけが無いだろ。
それとも俺の考え方が少しおかしいのか? 女にとっちゃデートは物凄く大事な用事の部類に入るのか?
「本当なのか?」
「えぇ、まあ」
「シキの奴に無理に言わされてるわけではないのだな?」
「微妙ですが、まあ話を合わせてるとかではないです」
「そうか」
何だ、茶髪の奴。こんなに詳しく聞いて来て……もしかして、こいつもシキ病患者の一人か?
魔神に芯まで汚染された一人だったのか?
「ならば、仕方ないな。シキとの約束だから」
「約束?」
どうやら茶髪はシキ病患者では無いみたいだ。しかし約束って何なんだ?
「幼い頃にシキと約束してな。お互いの幸せには邪魔をしない、と」
「何なんだよ、そのおかしな約束」
「そうしないと陽介との時間が作れなくてな」
なんだ、のろけ話だったのか。あぁーあ、気分悪くなってきた。
気分悪いし、帰ろうかな? いや帰るべきだな。うん。
「んじゃ俺、帰るわ」
そのまま俺は席を立ち、外に出る。
さぁて、茶髪の野郎がドリンクバー代請求する前に家に帰るとするか。
っていうか、自分のドリンクバーの料金すら払う気が無いって……俺ってつくづく器の小さな男だな。
いや、違うか。
明日は、あのシキに大量に有り金を食われる日なんだ。この位の節約はしなければ。
…………………節約? 節約なのかこれって?
一応、このクソ小説を読んでいらっしゃる御方たちに言っておきますけど。
あと3日間は不定期に一日一話更新するんで。
その後の更新は、宿題という悪夢に立ち向かうか現実逃避するかによってきまるので。
多分、現実逃避して最悪な事態になって更新出来なくなると思うんで