放課後
だから、タイトルに意味はない
「ってあれ? まだ俺が在る?」
実におかしな一言と共に俺は目覚めた。
俺の視界には、いつもの天井とシキの心配に俺を覗く顔だった。
「大丈夫か、小月?」
「あぁ……どうしてシキがここに?」
起き上がり、シキに問う。
「心配で様子を見に来たんだ。そしたらお前が寝言で『キャラ崩壊が著しいんだよこのクソ魔神が!』とか『お前はそこまでしてデレシキが見たいのかよ!』とか、挙句の果てには体を揺らして『それに俺を利用するなー!』と叫び出してな。それでアタシが小月を燃やして、無理矢理起こしたんだ」
「それは助かった……ありがとな、シキ」
俺はまたシキに助けられちまったのか。
などと感傷に浸りたいが、魔神に取り込まれそうになった恐怖でまだ体の震えが止まっていないのが現状だ。
「つーか、もう朝なのか?」
「そうだが?」
……夢を見てると、若干自分の体感時計と実際の時刻とに時差が出る事ってしょっちゅうある。
最近は、死んだら朝という感覚だったから何となくズレが大きい。
デッドエンド慣れしすぎたか。
「取り敢えず、朝飯でも食って落ち着くか」
「大丈夫か小月? 腰が抜けて足が震えているが」
「ちょっとお前が魔神を嫌いになる理由が分かっただけさ。出来れば肩を貸してくれ」
言われなくても自分でも分かってるさ。今の自分がとてつもなく情けないってことくらい。
今日の朝食は、誰かの寝言がうるさかったせいで熟睡できなかった義妹が適当に作った料理だった。
実に美味かったし、量が最適だった。これなら吐く事もない。幸せだ。
そして学校である。
よくよく思い出せば、古瀬に追いかけられて昨日は早退した。
教室に入った途端に奇襲されないかと警戒していたが、そんな事はなく、古瀬は茶髪のところに溜まっている生徒の一団の中に居た。
………そういや、茶髪は俺と同じクラスだったっけ。
つまりは、兄貴は俺と同年代の婚約者が居たという事になる。あぁ恨めしい妬ましい。
それとも茶髪が年齢詐称してこのクラスにいるとか?
まあ、1歳や2歳違う程度ならバレやしないと思うけど……それでも恨めしい妬ましい。
ともかくそんな気分で始まった新学期2日目は別に大したことも起きず、むしろ起こったら困る、平穏に平凡に平和に授業を受け、昼飯を食い、午後の授業を受け、掃除をし、下校となった。
そういや、俺って平穏に平凡に平和にを掲げていたような気がする。
シキと出逢ってからはそんなものは遠い星の彼方へ消えてしまったが。
俺は教科書やらを鞄に入れずに机の中において行ってる為、鞄には筆箱と弁当とその他学校には持ってきてはいけない物しか詰まっていない。
俺はその無駄な鞄を持ち、教室を見渡す。
教室には朝と同じく茶髪を囲む一団が残っていた。お前らまだ聞きたい事があるのかよ。
その一団の中に古瀬の姿は無かった。
まあ、アイツが先にどっかに行ったんなら教室に残って雑談をする相手も居ない。
なんせ雑談の内容が残念なものばかりだから、普通の友達とは話せ合えないんだよなぁ。
そんな事より、俺もさっさと帰るか。
そう思い教室を出ようとしたところで、
「小月、一緒に帰ろうではないか」
災厄が到来した。茶髪がよりにもよって話し掛けてきた。
ざわめく一団、どこからか感じる関係を探るような視線、そして古瀬に電話を掛けて現状を知らせようと携帯を出す音。
俺がやる事なんて一つ。
無言と全力逃走を胸に掲げ、貫き通す事のみ。
「お前は俺を死に至らしめたいのか?」
「すまない張空弟、アタシもあの集団に困っていたんだ」
あ、小月から張空弟に戻った。
まあ、確かにあの一団はウザかったろう。ある程度同感できてしまう理由だからこれ以上責められない。
「それにお前に話したい事がある」
「俺に?」
「お前、シキから昨日電話の詳細は聞いたのか?」
「………すっかり忘れてました」
自分なりに探りを入れてました、なんて事が言える程成果は無い。
だからココは素直に言うとしよう。別に本当に忘れてたわけじゃないんだからねっ、と言った方が効果的だったろうか?
「それに、お前の能力について」
「あぁ、そういや聞いてない」
「あと最後にシキの事について、お前に話が聞きたい」
シキについて? どういう生活を送っているとかか?
「ともかく、話す事が多い。どこか座って話せるところは無いか?」
「んー………ファミレスとかなら近くに有るけど」
「ならそこでいい。案内しろ」
茶髪はそう言い、俺の後に着いて来る。
そういや、茶髪から兄貴を事を聞いていない。これは聞けるチャンスかも。
って言いたいけど止めておこう。一応茶髪の婚約者だった人間を俺は疑っている。その疑いを確信づけるための質問なんてあんますべきじゃないだろ。
まあ、こんな心配は無用なほどにガサツな人間かもしれないけど。




