ある雨の日
※この話は本編に関係が一切無い話なので、読みたい人だけ読まないでください。出来れば全員読まないでください。お願いします。
「最悪だ……」
夏休みもあと2日。そんな中、一つのことに気がついた。
もしかして俺はエキサイティングな夏休みを送ってはいたが、普通の夏休みを一日たりとも送ってはいないんじゃないか?
中学時代に補習なんて拷問制度なんてものは無かったし、その補習の最終日にトラックに轢かれかけてシキと出会い、ファミレスで金をむしり取られ、廃墟で野球ボールにされて、魔神に会わされて、よくわからん場所に連れていかれて、なんかよくわからん化け物に殺されかけ、盆休みにジジィん家に帰ったらシキの友達に会って、偽パーティで恥かかされて、オトアに軽く殺されかけて、海に行ったらよくわからんうちに武器手に入れて、よくわからんうちにオトアに半殺しにされて、気がついたらベットの上で、シキに声をかけたら燃やされて、カッコよく馳せ参じてしまったらオトアの怒りを買って三途の川に浸りかけて、魔神に力を貸してもらってそれを棒に振って、オトアに殺されかけて、シキと逃げて……。
その他シキに振り回される事、大多数。なんやかんやで俺はエキサイティングな夏休みを送ってはいたが、普通のごく一般的な夏休みを送っていなかったわけだ。
そこで俺は思い出した! 自分がシキと出会う前は平穏平凡平和を掲げていたことに。まあそんな設定は作者すら忘れて……おっと何でもない。
ともかく、俺は普通の夏休みというものを一応形式的に送ってみようと思った。暇だから。
俺が思いついた普通の夏休みは、ゴロゴロ、かき氷、読書。
その中で俺は読書をチョイスした。
…………というのは嘘の言い訳で、本当は国語の読書感想文が終わってないから読書にせざるおえないわけで、結局、今年の夏休みの最後も宿題に縛られるのであった。
しかし! 夏休みはまだ2日ある、すぐに適当な本を借りて適当に感想文を書けばいいのだ!
そして最後の一日をゴロゴロする!!
俺はそう意気込んで、義妹に馬鹿にされながらも、図書館へダッシュ。すぐさま本を借りて、
なんか来ていた台風によってボロクソに濡れているわけだった。
「最悪だ……」
どうにか本は死守(落ちていたビニールでカバー)しているが、俺自体がずぶ濡れだ。
っていうか、絶対に義妹の野郎しっていて馬鹿にしやがったな。兄に教えてやる優しさはないのか?
はぁ………、風邪ひきそう。
「おい、小月」
「んぁ?」
人生を諦めた青年のように俯きながら歩いて俺の名前が、前から不意に呼ばれた。
そこにいたのは片手に開いた傘、片手に閉じた傘を持つシキだった。
「どうしたんだ、シキ?」
「どうしたって、雨だからお前にわざわざ傘を持ってきてやった」
「………お前ってやつは」
涙が出そうなくらい親切なことしやがって……。義妹だったら濡れて帰ってきた俺を汚物と同然に扱うのに。
ホント、お前ってやつは…………なんて優しいんだ!
親切心が身にしみて、シキを抱きしめたいところだが……残念ながら、俺はビショビショ。抱きつけん。
「ほら」
シキは俺に向かって閉じていた傘を差し出す。
「あぁ、ありがとう」
俺はそれを素直に受け取り、すぐさまに傘を開く。
「それにしても、よくすれ違いとかにならなかったな」
シキの隣を歩きながら、つくづく思う。
多分、図書館までの道は義妹が教えたんであろうけど、それでも俺とすれ違いになる可能性はある。
こうして会える方が確率的には低いだろう。
「まあ、小月を見つけるのは簡単だからな」
「……俺の行動パターンが単純ってこと?」
「いや、そういうことじゃ…………無いんだが……」
「んじゃ、どういう事だ?」
「いや、それは…………ッ」
隣を歩くシキは、そのまま黙って俯いてしまう。
やっぱり俺の行動パターンは単純なのか? まあ、自分から行動するのとか俺は得意じゃないけど。
それっきり、シキに話しかけ難い雰囲気になってしまい、二人とも沈黙したまま歩き続ける。
しばらくすると、目の前に大きな水たまりが出来てる小道に入り、前から車が向かってきた。
「危ない!」
このまま歩いていれば、シキは車が撥ねた水にかかって濡れてしまう。
そう思ってシキの手を掴み、俺の方へ引き寄せた。
「ひゃ!? ななな何するんだ、小月!」
そう言ってシキはいきなり俺を両手で押すが、あんまり力が入っておらず、俺を突き飛ばすというよりも自分が姿勢を崩して俺から少し離れた場所に尻もちをつくような形になってしまった。
丁度その時に車が通り、水しぶきが勢いよくシキに降りかかり……さらには雨に濡れて、その…………。
スケスケェーな状態になりまして……ね。せめて傘が盾になれば良かったんだけど、神様はいたずら好きだなぁー。
服って透けるとエロいよね。密着感を露わにして。下着とかも見えるし。
…………いや、俺は何も見ていないよ。何も見てない。
「……………………」
あぁ、シキが俺をジト目で見てくる。俺は悪くない、濡れないよう気を遣っただけなんだ。
過失は無いんだ。悪意もないんだ。やましい気持なんて一片たりとも無かったんだ。
「…………そうか、こうならないように小月はアタシの体を引っ張ったんだな」
「見てません見てませんから許してください」
「ああ、別に気にしてない。小月はアタシを助けようとしたのだからな」
シキさん、あなたの口はそう言ってらっしゃいますが、あなたの目は殺す殺す殺すと訴えかけてきているんですが。
「ところで小月」
「なんだシキ? やっぱり処刑か?」
「お前はその程度しか濡れていなくて、アタシはこれだけ濡れてしまった」
「なんかさぁ、濡れるって表現はエロいよね」
「取り敢えず、傘を返せ。ついでに母なる大地に命を返せ」
「あ、はい」
「ヘクションっ!」
「……あれ? シキが傘を届けていったはずなんだけど?」
「いや、まあ理由は色々ありましてねぇ……」
シキに傘を没収されたり、水たまりに蹴り飛ばされたり、そのままシキに置いていかれたり……色々と。
「……? まあ、いいや。さっさとシャワー浴びてきたら? 風邪ひいちゃうし」
「そうだな」
ビッショビショの服のまま玄関より先の敷居をまたがせてくれない義妹の提案だ。素直に受取ろう。
にしても、マジでこれは風邪を引くんじゃないか?
……いや、何度も死にかけた俺の体がたかが風邪ごときに屈するわけがないか。
俺は洗面所に入り、服を脱ごうとしたところで、
「…………こ、づき?」
以下説明略。え? 許さない? 無理無理無理、俺見てないもん。ギリギリ見てないから。
「お前……ここで何してるんだ…………ッ?」
何って言われましたら、死にたくない、と神に祈りを捧げているとしか。
「答えろ小月ぃ…………ッ!!」
「ちょっと待て! 落ち着けよシ――――――」
慌てて、両手をシキに向かって出しながら落ち着けようとする俺。
さて質問です。両手を前に……シキに向けて出す時にはある一つの現象が起こります。何でしょう?
模範的な答え。
アニメとかだと湯気が視界を遮ってくれるけど現実ではそんなに白い湯気はかなりの温度を保ってないと発生しないと思うし、そもそも湯気とかって気温の低い方に移動するからいつまでも風呂場でフリーズなんてしてましたら当然、色々見てしまいましてですね、それで、あの、案外肌が白かったり、予想以上に貧乳じゃなかったり、水滴を垂らす髪が肌に密着してて白と黒とのコントラストがそのええとだからつまり……、
俺の全身が真っ蒼に燃えたって事です、はい。
「ブ、チ、コ、ロ、ス…………」
宣言すんのがちっとばかし遅いですよ、シキさんや。
気づいたら俺はリビングにいた、なんて事が日常になり始めたらとうとう俺はゾンビの仲間入りを果たしてもいいと思うんだ。
そんな事はどうでもいい。
「秋音、お前の悪意によって俺は地獄の炎に焼かれたわけだが」
「……忘れてただけ。そもそも責任転嫁は良くない」
「だけど、お前にも3割くらい責任がある」
はぁ…………、もう焼き殺されるのは嫌だ。いや、今回は断然俺が悪いのだけど。
…………あれ? そういやシキどこだ?
覗き以降、姿を見ていない。もしかして恥ずかしさでどこかに閉じ籠ったとか?
「……そういえば、シキに客が来てた」
「客?」
「……鑑、とか言う人」
「あぁ、あの変た―――師匠が来てたのか。それで、何か言ってた? セクハラしてきた?」
「……なんか、シキに服を渡してくれって。あとお土産にケーキをくれた」
服はコスプレのやつ。ケーキは……まあご機嫌取りか、もしもの時の命綱か。
いっその事、鑑師匠も焼き殺されてしまえばいいのに。魂の奥底まで。
「……そして多分、今シキはその服を着てると思う」
「ごめん、俺本読まなきゃいけないから自分の部屋戻るわ!!」
これ以上焼き殺されたくないのが本音ですが、何か?
俺にとばっちりが来るフラグだってことくらい分かってんだよ。逃げずにどうする? 戦うか? 即敗北決定だぞ、こんちくしょうが。
そうやって、自室に戻ろうとした俺の腕を義妹が掴む。
「……ニヒィ」
「おいやめろ。本当に愉しそうに笑うな。気色悪いんだよ、気違いが」
「……ちょっとだけ、蒼い景色が見たいだけなの。お願い」
「ちょっとだけ、じゃねぇーんだよ! こちとら命懸ける事になるんだぞゴラッ!」
「……大丈夫、慣れたでしょ?」
「慣れるわけねぇーだろ!」
「秋音ェ!」
壁越しにシキの怒鳴り声。
あ、もうダメだ。俺も巻き込まれた。蒼い炎に呑まれたなこりゃ。
「こっちに来い!」
「……やだ」
義妹はシキの地獄へのお誘いを断った。っていうか断れるのか、いいなぁ。
「……何か文句があるなら、こっちに来ればいい」
わざわざ死を回避したのに自分からお呼びになりますか。
本当に死神ちゃんが来ちゃってあの世に繋がる川で遊泳する事になっちゃうぞ。
「うぅ……そっちに小月はいないか?」
そりゃ、さっき全裸を見られた人間の前にそうそう出たくないよな。
そういや別にどうでもいいけど、俺、なんか死んだ衝撃なのかどうなのか分かんないけど、見た瞬間の記憶が見事に吹っ飛んでるんだよなー………男として、残念だ。
「……いる。当然」
「ッ! やっぱりこっちに来い秋音!」
「……やだ」
やっぱ、全裸見られたの気にしてんのかな?
だった一応、覚えてないって言っといた方がいいよな。焼死決定するだろうけど。
「シキ、言っておくけど俺はさっき見たものは覚えてないぞー」
「当たり前だ! 吹っ飛ぶように燃やしたんだ!」
オブラートに包んで俺は言った結果、シキの炎の利便性が増えている事を知りましたとさ。
死ぬ前の記憶が抜けるのもまた怖いものなんだけどなー…………。
「ともかく秋音はこっちに来て、アタシに殺されろ!」
……とんでもない事を言いやがった。普通に殺人鬼っぽいことを言いやがった。
ある意味、さすが死神だ。褒め言葉じゃないけど。
「……メイド服がそこまで嫌なの?」
そうか、師匠はメイド服を持ってきたのか。
何故、そのセンスなんだろう。この季節はメイド服じゃないと思うんだ。
師匠に限って、メイド服っぽいとかではないと思うんだけど。ちょっと季節を見誤ってないか?
そもそもメイドはあんまりな………………。
「ガーターベルトだもんなぁ…………」
「……ガーターベルト、良いじゃん」
「いや、ニーソックスの方が良いだろ」
「……ガーターベルト」
「ニーソ」
「……ガーターベルト!」
「ニーソだっつてんだろ!」
「……喧嘩売ってるの? ニーソがガーターベルトに勝てると思ってるの?」
「ハっ! それこそ、ガーターベルトがニーソに勝てると思い上がってやがるのか?」
「……上等、表出な」
「あぁ、良いぜ! 徹底的に論破してやるよ」
「お、おい秋音。何を熱くなってるんだ……? こ、小月も少しは二人とも落ち着こ――」
「「……レイヤーは黙ってろ!」」
「二人とも、そこに土下座!」
何故かブチ切れたシキが、リビングへ突入してきた。
まあ当然、シキはメイド服なわけで、白と黒のコントラストが……ってあれ? デジャブ?
いや、違うな。シキのメイド服を見たのは初めてだから。どこでだろうか?
まあ、どうでもいい。
「バカ義妹、お前は何故ガーターベルトに加担する? そちらに何があるというんだ?」
「……相手の意見を否定した上でニーソの良さを語ろうとする手は読めている。だがこちらは一撃必殺の切り札があるんだよ、愚兄」
「ふっ、そんな言葉でニーソから逃げ切れると思っているのか?」
「……シキの太ももを見て、萌えないのかい?」
「なん……だと……!!」
くそっ! 一撃必殺……一言必殺じゃないか!
俺が萌えると言ったら義妹への敗北を示す。萌えないと言えば、こいつはどうせ近くで見れば分かるやら言って押し出して、風呂場の二の前を起こすつもりだろう。
そもそも見る行動を示す時点で、シキに焼き殺される確率が非常に高い。というか殺される。
そして見ない選択肢は『見たら屈するから見ない』という意味を持ってしまう。つまり義妹への敗北。
俺に残されたルートは焼死エンドか敗北エンド。
そんな……もう詰みじゃないか。俺は終わりだ。
…………いや、諦めるものか。考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ考えろ。
まだあるはずだ、第三の隠しルートが。希望の道が!
「シキのメイド服には萌えるしシキの太ももにも萌えるが、それは直接ガーターベルトを付けたシキに萌えたわけではなく、シキの太ももなら、というかシキなら何でも萌えるのだが、その中でもニーソを履いたシキの太ももに一番萌える」
途中で思った。これは焼死エンド決定だな、と。
言い終わって思った。そもそも死ぬくらいなら負けたほうが良かったんじゃないか、と。
でもほら、命は死ななくてもプライドが死ぬじゃん。義妹だとなおさら。
まあ一言遺言を残せるんなら、我一生に悔いなし、って事だ。
さぁ! さっさと俺の体を真っ赤に……真っ蒼に染めやがれ!
「~~~~ッ! ぅう………」
反応が無い。というかむしろ俺が真っ蒼になるんじゃなくて、シキが頬が真っ赤に染まっている。
一体何があったんだ?
「……負けた」
義妹が敗北宣言をした、有り得ない。っていうか何に負けたんだ。そもそも何で勝負していたんだ俺達は。
「こ、小月ぃ……あ、あのなそういうな事はな……思っても口に出さないのが普通であってな、その……」
縮こまってブツブツと何かを呟くシキ。一切何を言っているのか分りません。
っていうか取り敢えず、俺は謝るべきだろう。色々と。
「いや、すまんなシキ。あれは全て嘘という事で聴かなかった事にしてくれ」
「嘘なのか……嘘なのかっ!?」
「な、何だよ。落ち着けってシキ」
取り敢えずその掴んでいる俺の胸倉を離そうか。頼むから。締まるから。締まってるから。
「……ッ! そういえばシキ、確かめる方法が一つ思いついた」
義妹よ、お前が思いついたのはどうせ俺を殺す方法だろうが。顔に出てんだよ、思いっきり。
っていうか今からシキに何させるつもりだ? よく分からんが俺の死亡フラグは回避されてしまったし。
「……『お帰りなさいませご主人様』と言えば、自然と反応が分かる」
クソ義妹がぁ!! お前絶対にボッコボコにしてやるからな!
絶対に死ぬじゃねぇーか! シキが照れでもしたら当て付けに俺が殺されるし、そもそも言われた直後の俺の反応によっては死亡確定じゃねぇーか。
っていうか絶対に死ぬ気がする。作者がオチ思いつかないからとかいう理由で俺の命がここで終わる気がする。
「む、無理だ!」
「……嘘を見抜くためだから。減るもんじゃないし」
「で、でも……」
「……そもそも、その衣装を着た時点で言うのが宿命」
「うにゅにゃぅ…………」
オチ確定だ。俺の死がオチとかもうどれだけ作者は鬼畜なんだよ俺に対して。
恨みでもあるのか? あるんだよな、多分。
クソッ! 今からどうにか死を回避できな――――――、
「こ、小月」
「ん? 何だ?」
「行くぞ……」
シキが深呼吸を始めた。死は回避できないようだ。
でもさ、死亡理由として弱くないかこれは。完全に当て付けだろう。
作者の羨望による嫉妬だろ俺の今回の死亡理由。多分、いや絶対に。
「お、おお…………おか…おかえ……」
「あぁ、死が近づいてくるよ……」
死神の鎌……じゃなくて炎の気配が刻一刻と近付いてくるよぉ……。
「―――お、おかぃりにゃしゃいませ、ごじゅしんちゃまっ!!」
かっみかみで紅潮しながら台詞を言うシキ。
言い終わると同時に、というか「まっ」の部分で俺の……というよりシキの前方直線状に蒼い炎が迸る。
いやまあ、当然俺はその直線状にいて焼かれたわけなのは言うまでも無いんですけど。
どうにかギリギリ義妹を巻き込む事に成功したのは、一応、言っておくべきだろう。
ザマアミロ、人を罵倒するからこうなるんだ。
えぇ、私は小月が嫌いです。
投稿しろ投稿しろ、うるさいから途中でぶった切って投稿しましたよ。
続きはありま…………すが秋音までがデレる可能性がある物語なんて書きません。
ガチで小月をこの物語から無き存在にしてしまうので。
別に俺は存在消してもいいキャラだと思いますけど。つーか永眠すればいい、小月というキャラは。
…………と、まあ本気1割、真実9割の後書きなんて放っておいて。
この話はマジで読まなくてもいい、というか読むなというものなんで。
続きが書きたきゃ書きますが、書くわけありませんので。
あ、本編はしっかりと書きますよ。書きますとも、時間を無駄にかけて