ある奇妙な双子のこと
過ぎ去った過去の情景 訪れる未来の憧憬
時代が繋ぎ合わせた歪な世界…
彼について…
彼は「特別」な子だった
世界になくてはならない存在だった
彼女について…
彼女は「平凡」な子だった
世界に受け入れられる存在だった
無関係のまま生きる筈だった あの日の子供たち
それは偶然か必然か
一人が背負った「特別」は その体を蝕み
一人が授かった「平凡」は その体に病をもたらした
駆け回る足音 ざわめき戸惑う大人たち
畏敬の念はいつしか形を変え 不安を植えつけ
大きすぎる期待は 周囲の失望を生んだ
そんな折人々がようやく見つけた 解決の糸口…
きっとすべてがうまくいく… そう信じて疑わなかった
《世界を回す運命の歯車は時として思わぬ方向へと、その向きを変える》
さまざまな思惑と願いが錯綜する中 望みを託したのは……
あの日何があったのか 知る者はすでにいない
彼は 彼女がいなければ「彼」でいられないように
彼女は 彼がいなければ「彼女」として存在することはない
彼らは互いを愛しているわけではない
羨望を向けることもなく ましてや憎しみを抱くことすらない
虚構のように不確かなそれは 叶わなかった憧憬
見上げた空はどこまでも青く 何事もなかったかのように世界を包む