知らんけど風味幼馴染の姿煮になりたくないオレは…
「えっ、晴夜‼︎今…夏のにおいがした」
そう言って、いきなり立ち上がったのは、幼馴染の夏樹だった。
…
今、冬だぞ?
「え…?そんなわけ…」
「ちょっとまってて‼︎あたし、みてくるからっ‼︎」
「はぁ?なら、オレもいくよ…」
仕方なく、勉強を切り上げてペンを置いた。
ドタドタドタ
「あ、マジでするかも」
階段をおりている途中で、オレもにおいを感じた。
「ねっ!」
においは、台所からする?
…
「あら、おなかすいた?もうすぐできるからねー」
そうのんきに、台所からフライパンをフリフリしながら言ってきたのは、オレの母ちゃんだった。
コーンバター…
たしかに…夏の屋台からにおってきそうだわ。
「ありがとう…母ちゃん」
「いいのよ、ほら、できるまで勉強してていいわよ」
「「はーい」」
オレと夏樹は、昔からいつも一緒だ。
夏樹の母親が、仕事でよくいなかったから、夏樹はうちでよく留守番をしていたのだ。
もう、きょうだいみたいなもんだ。
いつも一緒で。
…
でも、学校ではほとんど一緒にいない。
だってさ、おまえら付き合ってんの⁉︎って、からかわれるじゃん?
だから、基本ただの同級生をお互い演じている。
オレたちは、なかなかいい演技ができていると思う。
学校では、ね。
家では、ほぼ休日なんかは、ずっと一緒だ。
勉強したり、ゲームしたり、なんなら…ケンカだって…しないか。
ケンカするほど…仲良くない⁉︎
いや、そもそもケンカなんかおきないんだよな。
そして、なんなら…ラブもおきない。
寝ても覚めても、なにもおきないのだ。
…
このままで、よき?
いえ、よきない?
よきないなんて言葉、あるのかないのか知らんけど、このまま…知らんけど風味幼馴染の姿煮のまま、続行していたら、よくない気は…しないでもない。
やっぱり、味見って必要じゃありませんか?
料理も恋も。
濃い恋じゃ、まずそうだし…幼馴染のままだと、なんじゃこりゃ⁈うっすいよ?みたいな、ままだし…
えっ?
恋の味見って…どうすればいい?
どこかで、試供品とかないん?
…
…
「ねぇ、夏樹ってさ…料理とかする?」
「うん、おかあさん忙しいから代わりにたまにつくってあげたりするよ?おとうさんも美味しいって褒めてくれる。なに?あたしの手料理が食べたいとでも?」
…
「あー、そうじゃなくて…味見ってするの?と思ってさ」
「味見かぁ、たまにしたりしなかったり」
「えっ、しないときもあるの⁈」
「うん。たぶんいけるっしょ?みたいなときは、しないー」
「へー」
「なんで?」
「なんとなく」
「ふーん」
味見なし…か。
それもアリ⁈
水なら味見しなくてもいいけど、食い物だとな…
…
でも、やっぱり初心者は、味見必要じゃね?
…
テスト勉強が終わると、オレたちは漫画を読んだり、ゲームをしたりする。
で、夏樹は漫画を満喫していた。
新刊が出たぁ♡と喜んでいた。
「その本、そんなに面白いの?」
「え、もちろんだよ〜。読む?読まないか。恋愛なんて興味ないんだもんねー。晴夜はさ、たたかいとかたたかいばっかだもんね。あ、冒険も好きなんだっけ?で、たたかう?てか、結局そっち系だよね」
…
「読む」
「えっ?」
「読みたい。いい?」
「…あ、うん。珍しい…ね」
「まぁな、たまには他のジャンルも勉強しなきゃだ。」
…
不思議そうに、本を差し出す夏樹。
「サンキュ」
「いえ…」
…
おっ⁈
な、なんだ?
少女漫画って、しょっぱなからラブがうまれたりするのかよ⁉︎
前菜すっぽかして、メインからきましたみたいやんけ‼︎
…
え、オレって…前菜でもなく、メインなんかでもとうぜんなく…
ただいつのまにか置いてあった、お口直しの水…だったりしない⁈
てかさ、壁ドンとかさ…
どんどんドンドン‼︎
オレは、思わず本を読みながら、壁をドンドン叩いていた。
「大丈夫?晴夜…」
「え、あぁ、うん。もちろんさ…ははっ。」
…
大丈夫なわけ、あるかっ‼︎
女の子ってのは…
こんなことにキュンキュンすんのかよ⁉︎
ちょっと目があっただけでキュン‼︎とかさ、何秒みつめあったら恋がうまれるとかさ…ぶつかりそうになって、ハグしちゃったとかさ…
ねーだろ…普通…
勉強中…距離が近いってのは、オレたちいつもだな。
…
いつもすぎて、オレはいつもある当たり前の水扱いになってる可能性大。
「夏樹って、水好き?」
「え、うん。普通に好き」
…
ホッ
なんとなく安心した。
それと同時にドキッとした。
普通に好きって言葉に。
まぁ、水のことだけど…
都合のいいオレの脳みそは、勝手に変換して、普通に好きだけを繰り返した。
そして、普通に好きなアレを差し出した。
「ほら、水だ」
「あ、ありがとう」
オレは、とある挑戦を試みた。
しかし…
⁈
む、難しい…
さりげなく手を触れるつもりが…
触れることすら、難しい…っ‼︎
愛がうまれるのって…むずくね⁉︎
じゃあ、次は…
「ねぇ、夏樹…オレの目になんか入ってるんだけど…」
見つめ合う作戦だ。
「あー、それは目玉だよー」
…
見てもすら、もらえない…
くっそー‼︎
恐るべし…
少女漫画よ。
まさか、こんなにも奥が深いとは…
正直…なめていましたね…
あぁ、もう遅いです…
恋愛偏差値…ゼロです。
いまから、勉強しても…手遅れすぎん?
どうやって、水から美味しい飲み物ってできるん?
…
‼︎
水は、いろんなものに混ざりやすい‼︎
そうだよ‼︎
混ぜたらよくね⁈
てことは…オレを何と混ぜる?
甘めからのスパイス⁇
「夏樹、おまえかわいいな。なんてウソだよー」
…
「え、なに?」
…
間違えたっ‼︎
水にスパイスなんか合わねーよっ‼︎
やっぱり…水は、そのままの方がよかったんじゃね⁉︎
…
「ねぇ、晴夜…信頼とか情ってね、お金じゃ買えないんだよ」
…
「あぁ。うん…そうだよね」
…
マズったぞ…
…
オレは…オリに入れられた、なんかだ。
なんか、とは?
…
…
‼︎
空気‼︎
空気になればよくね⁈
いつでも逃げられる〜
とらわれない〜みたいな?
…
まて…
空気みたいな存在って…いい意味?それとも…
…
オレには…恋愛ってやつ向いてない?
黙って、りんごでも剥いてろよってことかな?
「晴夜、漫画面白い?」
「えっ…あー、面白いっていうか…むずくね⁉︎」
「え、なんで?」
「だってさ、壁ドンとか…偶然抱きつくとか、諸々さ。」
「でもさぁ、壁ドンは、されたらやっぱりキュンキュンするのか、確かめてみたいってのは、あるなー」
「へー、そうなんだ。なら、いまやってみる?」
「えっ?いっ…いま?」
夏樹は、驚いて立ち上がった。
「どう?」
俊敏な動きができるオレは、すぐさま夏樹に壁ドンをした。
…
ちかっ‼︎
そんでもって、かわよ‼︎
「…えっ、めっちゃ行動力ありす…ぎ…。」
一瞬で頬をピンクに染めて、きょどる夏樹。
「で、どうよ?」
…
「これは…これで…いい、です。」
「そ?じゃあ、これは?」
今にも逃げだしそうな夏樹に、両手壁ドンをしてみた。
「こ、これは…さすがにっ…ロックオンだよぅ…」
「いや?」
「えっ…なんか…ムリぃ〜」
夏樹は、スルスルと小さくなった?
あ、しゃがんだのか。
「大丈夫そう?」
「え、う、うん。ちょっと…いがいに刺激強かった」
「そっか、ごめんな」
「ううん。こちらこそ、その…貴重な体験をありがとう…ございますた」
ございますたって…
…
「恋愛ってさ、めっちゃむずいんだな」
「それは…あれじゃない?晴夜が、まだ本気で好きな人がいないから、ムリに恋愛思考になりすぎてる…とか?」
…
そうなのか?
オレは、夏樹が好きなんだけどな…
てか、なんでオレは夏樹が好きって思ったんだ?
好きパスポートが発行されたわけでもないのに、なんでオレって…そもそも夏樹が好きってなったんだ?
「あたしはさ…好きな人いるし、デートしたり手繋いだりしたいなって…思うから、漫画読んでてキュンキュンするのかも」
…
好きな人いるんだ⁉︎
夏樹って…好きな人いやがったんかよ⁉︎
まさか…夏樹に彼氏できたら、さっきみたいに、頬をピンクに染めてきょどって…あんなかわいい表情すんのかよ?
だれだよ‼︎夏樹の心奪ったヤロウは‼︎
これか…
このもどかしい気持ちが好きってやつなのかよ⁉︎
…
「夏樹、好きなやついるんだ?」
「えっ、うん。」
「そいつって、同じクラス?」
「ううん。」
「なに部?」
「…サッカー部だけど?」
「じゃあ、もしかして…オレの友達だったりする?」
「なんで?てか、どうしたの?」
「どうもこうもねーよ…オレもいるよ、好きなやつ。だから、恋愛本読んで勉強しなきゃって思ったんだ」
「え…いるんだ。好きな人…それってなに部?」
「テニス部」
「…じゃあ、あたしの友達かもじゃない」
「だな。」
「知らなかった…な。晴夜って、全然恋愛興味ないって思ってたのに…するの?」
「え?なにを?」
「告白からの壁ドン…さっきしたみたいに…するの?」
「あー…しないな」
「なんで?晴夜ならいけるって…」
「それは、ムリだな」
「…なんでよ?晴夜モテるし、自信持ちなって。あたしが言ってるんだよ?幼馴染の、一番近くでみてきたこのあたしがっ…」
「そうだよなぁ。オレたち近すぎたのかもなぁ…」
「うん…近すぎた。」
近すぎてみえなくなることもあるって聞いたことあるな。
…
「あたし…さ、晴夜に彼女できても、応援するよ。」
「オレも夏樹に彼氏できたら、応援するし相談にのってやるよ」
…
「晴夜に彼女とか…想像できないけど、てか、そんなの…ムリだよ」
…
「なんだよ、さっきは自信もちなって言ったくせに」
「ムリだよ…晴夜に彼女なんか…やっぱりムリ」
「…オレって、やっぱり恋愛向いてない?」
「ううん、そうじゃない。ヤダ…やなの…」
「なにが?さっきの壁ドンキモすぎた?」
…
「たしかに…あれは…だれにもしない方がいい。てか、してほしくない」
「やっぱりキモいか。ごめんな…イヤなおもいさせて」
…
「そうじゃない…。しないで…ほしいの。するなら…それは……あたしだけがいい‼︎あたししか、みないでほしかった‼︎」
?
「え?」
「あたしにだけしてよ‼︎それをするのは、あたしだけがよかった‼︎恋愛の勉強なんかしないでよ!他の人にそんなこと…しないでよ。ずっと…あたしのそばにいてほしかった…の…もう、帰るね」
え…
「えっ?まって!夏樹の好きなやつって…」
「晴夜に決まってるじゃない‼︎だから、さっきの壁ドンとか…めっちゃドキドキしたし、嬉しかった…。なのに、あれはただの練習ってわかって…ものすごくショックで…」
…
「夏樹…あの顔は…オレのために向けてくれてたのかよ。もう一度、あの顔みせてよ」
夏樹に優しく壁ドンした。
包み込むみたいに優しく。
夏樹は、目をウルウルさせながらオレをみた。
「夏樹、かわいい。オレの好きなやつもテニス部の夏樹っていうんだ」
「えっ?」
「夏樹がずっと前から好きだった。だから、あんなかわいい顔、だれにもみせるなよ?オレだけな?」
「うん」
「その顔も、かわいい。」
夏樹は、照れ笑いした。
夏樹の照れ笑いは、それはそれはかわいいのだ。
口をきゅっとして微笑む。
そして、目をぎゅっとつぶるんだ。
夏樹のささいなひとつひとつの仕草がすべて愛おしい。
これが、恋ってやつなんだな。
そのかわいい表情がいっつもキュンだった。
そんなかわいい表情した夏樹が、こんなに至近距離にいたら、もうすることは一つしかない。
チュ♡
かわいい夏樹にキスをした。
「夏樹、かわいいよ」
チュ♡
照れる夏樹のこの表情を、オレは一緒忘れないだろうな。
むかし、なにかのおはなしで聞いたことがある。
心にお花が咲くってことを。
夏樹の心にもお花咲いたかな?
心の花が枯れてしまわないように、オレは定期的に夏樹の心の花にお水を絶え間なく注いだ。
十年後も、それは続いている。
「夏樹、愛してるよ♡」
「あたしも愛してる♡」
お互いに、心のお花は咲きっぱなしだ。
これからも、心にお水を注いでいく。
心の花は、永遠に咲き続けるだろう。
心ってやつは、めにみえないから厄介だ。
でも、少しの一瞬の表情や仕草でオレは、夏樹の心の花の状態をいつも気にかけているんだ。
さてと、今日もお花にお水をたくさんあげましょう♡
枯れてる葉っぱは、ないかな?
肥料たりてるかな?
「夏樹、さむくない?」
「ううん、あ…やっぱり少し寒いな」
「なら、あっためてあげる」
ギュ〜♡
♡
おしまい♡




