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知らんけど風味幼馴染の姿煮になりたくないオレは…

作者: 猫の集会
掲載日:2026/03/09

「えっ、晴夜はるや‼︎今…夏のにおいがした」

 

 そう言って、いきなり立ち上がったのは、幼馴染の夏樹なつきだった。

 

 …

 

 今、冬だぞ?

 

「え…?そんなわけ…」

「ちょっとまってて‼︎あたし、みてくるからっ‼︎」

「はぁ?なら、オレもいくよ…」

 

 仕方なく、勉強を切り上げてペンを置いた。

 

 

 ドタドタドタ

 

「あ、マジでするかも」

 階段をおりている途中で、オレもにおいを感じた。

「ねっ!」

 

 

 においは、台所からする?

 

 

 …

 

 

「あら、おなかすいた?もうすぐできるからねー」

 

 そうのんきに、台所からフライパンをフリフリしながら言ってきたのは、オレの母ちゃんだった。

 

 コーンバター…

 

 たしかに…夏の屋台からにおってきそうだわ。

 

「ありがとう…母ちゃん」

「いいのよ、ほら、できるまで勉強してていいわよ」

「「はーい」」

 

 オレと夏樹は、昔からいつも一緒だ。

 

 夏樹の母親が、仕事でよくいなかったから、夏樹はうちでよく留守番をしていたのだ。

 

 もう、きょうだいみたいなもんだ。

 

 いつも一緒で。

 

 …

 

 でも、学校ではほとんど一緒にいない。

 

 だってさ、おまえら付き合ってんの⁉︎って、からかわれるじゃん?

 

 だから、基本ただの同級生をお互い演じている。

 

 オレたちは、なかなかいい演技ができていると思う。

 

 学校では、ね。

 

 家では、ほぼ休日なんかは、ずっと一緒だ。

 

 勉強したり、ゲームしたり、なんなら…ケンカだって…しないか。

 

 ケンカするほど…仲良くない⁉︎

 

 いや、そもそもケンカなんかおきないんだよな。

 

 そして、なんなら…ラブもおきない。

 

 寝ても覚めても、なにもおきないのだ。

 

 …

 

 このままで、よき?

 

 いえ、よきない?

 

 よきないなんて言葉、あるのかないのか知らんけど、このまま…知らんけど風味幼馴染の姿煮のまま、続行していたら、よくない気は…しないでもない。

 

 やっぱり、味見って必要じゃありませんか?

 

 料理も恋も。

 

 濃い恋じゃ、まずそうだし…幼馴染のままだと、なんじゃこりゃ⁈うっすいよ?みたいな、ままだし…

 

 えっ?

 

 恋の味見って…どうすればいい?

 

 どこかで、試供品とかないん?

 

 …

 

 …

 

「ねぇ、夏樹ってさ…料理とかする?」

「うん、おかあさん忙しいから代わりにたまにつくってあげたりするよ?おとうさんも美味しいって褒めてくれる。なに?あたしの手料理が食べたいとでも?」

 

 …

 

「あー、そうじゃなくて…味見ってするの?と思ってさ」

「味見かぁ、たまにしたりしなかったり」

「えっ、しないときもあるの⁈」

「うん。たぶんいけるっしょ?みたいなときは、しないー」

「へー」

「なんで?」

「なんとなく」

「ふーん」

 

 

 味見なし…か。

 

 それもアリ⁈

 

 水なら味見しなくてもいいけど、食い物だとな…

 

 

 …

 

 

 でも、やっぱり初心者は、味見必要じゃね?

 

 

 …

 

 

 

 テスト勉強が終わると、オレたちは漫画を読んだり、ゲームをしたりする。

 

 で、夏樹は漫画を満喫していた。

 

 新刊が出たぁ♡と喜んでいた。

 

「その本、そんなに面白いの?」

「え、もちろんだよ〜。読む?読まないか。恋愛なんて興味ないんだもんねー。晴夜はさ、たたかいとかたたかいばっかだもんね。あ、冒険も好きなんだっけ?で、たたかう?てか、結局そっち系だよね」

 

 …

 

「読む」

「えっ?」

「読みたい。いい?」

「…あ、うん。珍しい…ね」

「まぁな、たまには他のジャンルも勉強しなきゃだ。」

 

 …

 

 不思議そうに、本を差し出す夏樹。

 

「サンキュ」

「いえ…」

 

 

 …

 

 おっ⁈

 

 な、なんだ?

 

 少女漫画って、しょっぱなからラブがうまれたりするのかよ⁉︎

 

 前菜すっぽかして、メインからきましたみたいやんけ‼︎

 

 …

 

 え、オレって…前菜でもなく、メインなんかでもとうぜんなく…

 

 ただいつのまにか置いてあった、お口直しの水…だったりしない⁈

 

 てかさ、壁ドンとかさ…

 

 

 

 どんどんドンドン‼︎

 

 オレは、思わず本を読みながら、壁をドンドン叩いていた。

 

「大丈夫?晴夜…」

「え、あぁ、うん。もちろんさ…ははっ。」

 

 

 …

 

 大丈夫なわけ、あるかっ‼︎

 

 女の子ってのは…

 

 こんなことにキュンキュンすんのかよ⁉︎

 

 ちょっと目があっただけでキュン‼︎とかさ、何秒みつめあったら恋がうまれるとかさ…ぶつかりそうになって、ハグしちゃったとかさ…

 

 ねーだろ…普通…

 

 勉強中…距離が近いってのは、オレたちいつもだな。

 

 …

 

 いつもすぎて、オレはいつもある当たり前の水扱いになってる可能性大。

 

「夏樹って、水好き?」

「え、うん。普通に好き」

 

 …

 

 ホッ

 

 なんとなく安心した。

 それと同時にドキッとした。

 

 普通に好きって言葉に。

 

 まぁ、水のことだけど…

 都合のいいオレの脳みそは、勝手に変換して、普通に好きだけを繰り返した。

 

 

 そして、普通に好きなアレを差し出した。

 

「ほら、水だ」

「あ、ありがとう」

 

 オレは、とある挑戦を試みた。

 

 しかし…

 

 ⁈

 

 む、難しい…

 

 さりげなく手を触れるつもりが…

 

 触れることすら、難しい…っ‼︎

 

 愛がうまれるのって…むずくね⁉︎

 

 

 じゃあ、次は…

 

「ねぇ、夏樹…オレの目になんか入ってるんだけど…」

 

 見つめ合う作戦だ。

 

「あー、それは目玉だよー」

 

 …

 

 見てもすら、もらえない…

 

 くっそー‼︎

 

 恐るべし…

 

 少女漫画よ。

 

 まさか、こんなにも奥が深いとは…

 

 正直…なめていましたね…

 

 あぁ、もう遅いです…

 

 恋愛偏差値…ゼロです。

 

 いまから、勉強しても…手遅れすぎん?

 

 どうやって、水から美味しい飲み物ってできるん?

 

 …

 

 ‼︎

 

 水は、いろんなものに混ざりやすい‼︎

 

 そうだよ‼︎

 

 混ぜたらよくね⁈

 

 てことは…オレを何と混ぜる?

 

 甘めからのスパイス⁇

 

「夏樹、おまえかわいいな。なんてウソだよー」

 

 …

 

「え、なに?」

 

 …

 

 間違えたっ‼︎

 

 水にスパイスなんか合わねーよっ‼︎

 

 やっぱり…水は、そのままの方がよかったんじゃね⁉︎

 

 

 …

 

 

 

「ねぇ、晴夜…信頼とか情ってね、お金じゃ買えないんだよ」

 

 …

 

「あぁ。うん…そうだよね」

 

 …

 

 マズったぞ…

 

 …

 

 オレは…オリに入れられた、なんかだ。

 

 

 なんか、とは?

 

 …

 

 …

 

 ‼︎

 

 

 空気‼︎

 

 空気になればよくね⁈

 

 いつでも逃げられる〜

 

 とらわれない〜みたいな?

 

 …

 

 まて…

 

 空気みたいな存在って…いい意味?それとも…

 

 …

 

 オレには…恋愛ってやつ向いてない?

 

 黙って、りんごでも剥いてろよってことかな?

 

「晴夜、漫画面白い?」

「えっ…あー、面白いっていうか…むずくね⁉︎」

「え、なんで?」

「だってさ、壁ドンとか…偶然抱きつくとか、諸々さ。」

「でもさぁ、壁ドンは、されたらやっぱりキュンキュンするのか、確かめてみたいってのは、あるなー」

「へー、そうなんだ。なら、いまやってみる?」

「えっ?いっ…いま?」

 

 夏樹は、驚いて立ち上がった。

 

 

 

「どう?」

 

 俊敏な動きができるオレは、すぐさま夏樹に壁ドンをした。

 

 …

 

 ちかっ‼︎

 

 そんでもって、かわよ‼︎

 

 

「…えっ、めっちゃ行動力ありす…ぎ…。」

 

 一瞬で頬をピンクに染めて、きょどる夏樹。

 

「で、どうよ?」

 

 …

 

「これは…これで…いい、です。」

「そ?じゃあ、これは?」

 

 今にも逃げだしそうな夏樹に、両手壁ドンをしてみた。

 

「こ、これは…さすがにっ…ロックオンだよぅ…」

「いや?」

「えっ…なんか…ムリぃ〜」

 

 夏樹は、スルスルと小さくなった?

 

 あ、しゃがんだのか。

 

「大丈夫そう?」

「え、う、うん。ちょっと…いがいに刺激強かった」

「そっか、ごめんな」

「ううん。こちらこそ、その…貴重な体験をありがとう…ございますた」

 

 ございますたって…

 

 

 …

 

「恋愛ってさ、めっちゃむずいんだな」

「それは…あれじゃない?晴夜が、まだ本気で好きな人がいないから、ムリに恋愛思考になりすぎてる…とか?」

 

 …

 

 そうなのか?

 

 オレは、夏樹が好きなんだけどな…

 

 てか、なんでオレは夏樹が好きって思ったんだ?

 

 好きパスポートが発行されたわけでもないのに、なんでオレって…そもそも夏樹が好きってなったんだ?

 

「あたしはさ…好きな人いるし、デートしたり手繋いだりしたいなって…思うから、漫画読んでてキュンキュンするのかも」

 

 …

 

 好きな人いるんだ⁉︎

 

 夏樹って…好きな人いやがったんかよ⁉︎

 

 まさか…夏樹に彼氏できたら、さっきみたいに、頬をピンクに染めてきょどって…あんなかわいい表情すんのかよ?

 

 だれだよ‼︎夏樹の心奪ったヤロウは‼︎

 

 これか…

 

 このもどかしい気持ちが好きってやつなのかよ⁉︎

 

 

 …

 

 

「夏樹、好きなやついるんだ?」

「えっ、うん。」

「そいつって、同じクラス?」

「ううん。」

「なに部?」

「…サッカー部だけど?」

「じゃあ、もしかして…オレの友達だったりする?」

「なんで?てか、どうしたの?」

「どうもこうもねーよ…オレもいるよ、好きなやつ。だから、恋愛本読んで勉強しなきゃって思ったんだ」

「え…いるんだ。好きな人…それってなに部?」

「テニス部」

「…じゃあ、あたしの友達かもじゃない」

「だな。」

「知らなかった…な。晴夜って、全然恋愛興味ないって思ってたのに…するの?」

「え?なにを?」

「告白からの壁ドン…さっきしたみたいに…するの?」

「あー…しないな」

「なんで?晴夜ならいけるって…」

「それは、ムリだな」

「…なんでよ?晴夜モテるし、自信持ちなって。あたしが言ってるんだよ?幼馴染の、一番近くでみてきたこのあたしがっ…」

「そうだよなぁ。オレたち近すぎたのかもなぁ…」

「うん…近すぎた。」

 

 近すぎてみえなくなることもあるって聞いたことあるな。

 

 

 …

 

「あたし…さ、晴夜に彼女できても、応援するよ。」

「オレも夏樹に彼氏できたら、応援するし相談にのってやるよ」

 

 …

 

「晴夜に彼女とか…想像できないけど、てか、そんなの…ムリだよ」

 

 …

 

「なんだよ、さっきは自信もちなって言ったくせに」

「ムリだよ…晴夜に彼女なんか…やっぱりムリ」

「…オレって、やっぱり恋愛向いてない?」

「ううん、そうじゃない。ヤダ…やなの…」

「なにが?さっきの壁ドンキモすぎた?」

 

 …

 

「たしかに…あれは…だれにもしない方がいい。てか、してほしくない」

「やっぱりキモいか。ごめんな…イヤなおもいさせて」

 

 …

 

「そうじゃない…。しないで…ほしいの。するなら…それは……あたしだけがいい‼︎あたししか、みないでほしかった‼︎」

 

 ?

 

 

「え?」

「あたしにだけしてよ‼︎それをするのは、あたしだけがよかった‼︎恋愛の勉強なんかしないでよ!他の人にそんなこと…しないでよ。ずっと…あたしのそばにいてほしかった…の…もう、帰るね」

 

 え…

 

「えっ?まって!夏樹の好きなやつって…」

「晴夜に決まってるじゃない‼︎だから、さっきの壁ドンとか…めっちゃドキドキしたし、嬉しかった…。なのに、あれはただの練習ってわかって…ものすごくショックで…」

 

 …

 

「夏樹…あの顔は…オレのために向けてくれてたのかよ。もう一度、あの顔みせてよ」

 

 夏樹に優しく壁ドンした。

 

 包み込むみたいに優しく。

 

 夏樹は、目をウルウルさせながらオレをみた。

 

「夏樹、かわいい。オレの好きなやつもテニス部の夏樹っていうんだ」

「えっ?」

「夏樹がずっと前から好きだった。だから、あんなかわいい顔、だれにもみせるなよ?オレだけな?」

「うん」

「その顔も、かわいい。」

 

 夏樹は、照れ笑いした。

 

 夏樹の照れ笑いは、それはそれはかわいいのだ。

 

 口をきゅっとして微笑む。

 そして、目をぎゅっとつぶるんだ。

 

 夏樹のささいなひとつひとつの仕草がすべて愛おしい。

 

 これが、恋ってやつなんだな。

 

 

 そのかわいい表情がいっつもキュンだった。

 

 そんなかわいい表情した夏樹が、こんなに至近距離にいたら、もうすることは一つしかない。

 

 チュ♡

 

 かわいい夏樹にキスをした。

 

 

「夏樹、かわいいよ」

 チュ♡

 

 

 照れる夏樹のこの表情を、オレは一緒忘れないだろうな。

 

 

 むかし、なにかのおはなしで聞いたことがある。

 

 心にお花が咲くってことを。

 

 夏樹の心にもお花咲いたかな?

 

 心の花が枯れてしまわないように、オレは定期的に夏樹の心の花にお水を絶え間なく注いだ。

 

 

 十年後も、それは続いている。

 

「夏樹、愛してるよ♡」

「あたしも愛してる♡」

 

 お互いに、心のお花は咲きっぱなしだ。

 

 これからも、心にお水を注いでいく。

 

 

 心の花は、永遠に咲き続けるだろう。

 

 

 心ってやつは、めにみえないから厄介だ。

 

 でも、少しの一瞬の表情や仕草でオレは、夏樹の心の花の状態をいつも気にかけているんだ。

 

 さてと、今日もお花にお水をたくさんあげましょう♡

 

 枯れてる葉っぱは、ないかな?

 

 肥料たりてるかな?

 

「夏樹、さむくない?」

「ううん、あ…やっぱり少し寒いな」

「なら、あっためてあげる」

 

 ギュ〜♡

 

 ♡

 

 

 おしまい♡

 

 

 

 

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