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その後24(立場の違い)


 セオドリックがとんだ事態に焦る中、アニエスは別のことに焦っていた。


「コーラどうしよう、顔を知ってしまった人のお屋敷の廊下や階段を裸でうろうろしちゃった……」


「だから言ったじゃありませんか」

「うう、後悔と反省が止まらないよお」


 それは本当に今更どうでもいいことを悩んでいる。


「アニエス!」

「はい、殿下どうかしましたか?」

「私は、誓ってアニエス以外に求婚を申し込んだりしていない!!」

「そうなのですか?」

「もちろんだ、だからさっきのも私は(あずか)り知らないことだ!」


 だがこれに関しては、アニエスはセオドリックよりもずっと冷静に捉えている。アニエスはふむっと考えてアニエスなりの見解をセオドリックに話す。


「殿下が言うのならそうなのでしょう……ですが、殿下の婚約に関しては大きな事柄だけに、殿下の知らないところで何らかの契約が結ばれていないとも限りません。もしかすると国王様が便宜を図っているかもしれませんし……政治的な駆け引きが知らぬ間に行われているのかもしれません」


 確かに、セオドリックがいくら承知していなくても、ことは国家の先行きさえを左右することだ。秘密裏に進行していてもおかしくない。


「そうだが父上に関してはありえないな。父上には先に話しを通してこの件に関しては私に一任することを約束された」


「では国王様はこの件はご承知ではないのですね」


「ああ、父は私との正式な約束は絶対に破らない」


「ではセシリア様に直接お伺いを立てるしかないのでは?」


「そ、それは、ちょっと……どうだろう」


 セオドリックが彼女を避けるのは他にもいろいろ理由があるのだ。主にセオドリックと彼女との過去のいろいろ仲睦まじい行いにおいて……。


「セシリア様と殿下はお会いしたことはあるのですか?」


 それをアニエスがそのものずばりで核心をつく。


「というか殿下の歯切れが悪いということは、ほぼ過去に関係があったのだろうな……と私は確信を持って聞いているおります」


 それでもってセオドリックの急所を鋭く刺した。


「いや、えっと、そうだな……」


「殿下、別に私は殿下の恋人でも婚約者でもないので攻めているわけではございませんよ?」


「お、お嬢様……逆にそれは(えぐ)ります」

「アニエス嬢、ど、どうかお手柔らかに……」

「……」


「ただ、認識にズレがあるのなら早々に手を打って、擦り合わせた方が良いのではないかなと……。でないと事態の収拾はどんどん難しくなっていくではないかと……」


「……君はこの件に関して、またずいぶん事務的なんだな」


「私がどうこう口出しできる立場ではないことを殿下もご承知でしょう?」


「それは君側の意見だろう?」


「それこそ殿下側の意見ではありませんか……では私はどう言ったらよろしいのですか?」


 セオドリックが気分を害していくのが空気の緊張感から伝わる。

 とはいえアニエスの言う通り、アニエスはこの件に変に首を突っ込むことはできない。

 なぜなら一度セオドリックのプロポーズを断っている立場だし、セオドリックが秘密裏に再度結婚を申し込もうとしている事実を全く知らないのだ。


 それなのにセオドリックに私というものがありながらと(なじ)ったりすることなど、たとえセオドリックが望んでいても出来やしないだろう。


「……もういい。その話はもうこれで終いにしてくれ」


「……はい殿下、助言を求めているわけでもないのに差し出がましく出過ぎた真似をしました。大変申し訳ございません」


 アニエスは萎れた花のようにしゅんと委縮し小さくなった。

 セオドリックはそれを横目に見て、頭をグシャグシャッとかく。違う! こうしたかったわけではないのに……そう思うも、この件に特別な関心を示さないアニエスにどうしてもイラついてしまう。


 アニエスにとって、このことはやっぱりその程度のことなのかと思うとやるせない気持ちになるのだ。ではいったいどうするのが正しいのだろうか……?


「はあ……わかった。確かにアニエスの言う通りだセシリア嬢と話してみよう」


「え、でも、私が勝手に申し上げたことに合わせる必要はありません。殿下どうか無理ならお止めになってください」


「いや実際この件についてはいくら何でも彼女の発言は浅はかすぎる。……もちろん本人の話を聞かない限り何とも言えないが、私が直接会って確認したい」


「殿下は……セシリア様にまったく気持ちはないのですか?」


「さあな、でもどうせ君にはどうでもいいんだろう」


 セオドリックは意識して抑えようとするがどうしても言葉の端がトゲトゲしくなってしまう。しかし、アニエスはそれにもめげずに発言した。


「……あの殿下、私も同席してはダメでしょうか」


「はっ?」


「私もセシリア様がどんな方なのか会ってみたいです。もちろん殿下がお許しくだされば……ですが」


 これはいったいどういう意味なのだろうか? セオドリックはアニエスの真意を計りかねて二言目がつげられなかった。


「どうか、私を利用してセシリア様の真意をお計りください」


 いったいアニエスのこの行動の意味は、次回に続く。


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