表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/2

第2話 スヴェンの旅立ち

「誕生日おめでとう!」

「おめでとう、スヴェン!」

父さんと母さんが僕を祝ってくれている。今日は僕の17歳の誕生日だ。

「ありがとう、父さん、母さん!」

「まさか父さんよりも大きくなるなんて、夢にも思わなかったぞ!」

「大きいだけじゃなくて腕っぷしも負けないさ!」

「お、言うね~どれ、腕相撲でもいっちょやるか!」

「あらあら、食事がさめちゃうわよ?」

3人しかいないというのに家の中はとてもにぎやかだ。この村では17歳になった男子は一人前の男として認められるのだ。早い話が大人になったということ。

「あ~、また負けた~!」

「ははっ!まだまだお前にゃ負けん!」

父さんは力がとても強い。もう60歳の大台も近いというのに、いまだに勝てる気がしない。

「でも、強くなったな、スヴェン」

そういって、頭を優しくなでた。

「もう、子供じゃないんだから恥ずかしいよ!」

手を振りほどいてご飯を一気に口へ運んだ。

「絶対強くなって、父さんを負かせてやるからね!」

「おぉ、期待してるぞ!」

そんなこんなで家族で楽しくご飯を食べた後、大事な話を切り出さなければいけなかった。そう、人生の目標を達成するために必要なことだ。

「父さん、母さん。大事な話があるんだ」

「どうしたの?急に改まって」

「実は、17歳にもなったし、旅に出てみたいんだ」

突然の話に、先ほどまでのにぎやかな雰囲気から一転して、しんと静かになった。

「本気なのか?」

「うん。前から言ってたよね。色んなところを見て、色んな経験をしてみたいって」

もちろん、半分以上は建前だ。ちょっと村の外にも興味はあるけれど、何よりあいつらへの復讐が目的だ。

「そうだったな・・・そうか、旅に・・・」

「私はいかないでほしいわ・・・」

「ジェーン、スヴェンも男だ。外に憧れたり、広い世界を見たいんだろう」

「ごめん、父さん、母さん」

しんみりとした空気に包まれた中、最初に口を開いたのは父さんだった。

「よし、じゃあ行ってこい!ただ、必ず帰ってくるんだぞ!」

「止めても無駄ね・・・せっかく行くならたくさん思い出話、持って帰ってきてね」

「あと、おいしいお土産も忘れるなよ!」

「うん、ありがとう!」

しばらくの間父さんと母さんに会えないのは寂しいけれど、もうずっと心に決めていたことだ。絶対に目標を達成して、ここにまた帰ってくる!


翌朝、目が覚めると母さんが台所で何やらたくさんのおにぎりを握っていた。

「あら、おはよう」

「おはよう、母さん!」

「今日、旅立つのね」

「そうだね、朝ごはんを食べたら出発するよ」

そういうと、母さんが大きなかばんにおにぎりを詰めて

「ほら、旅に行くならたくさん必要でしょ。薬草も詰めておいたから、けがをしたらちゃんと塗るのよ」

「はーい」

どうやら出発の準備をしてくれていたらしい。朝ごはんも作ってくれていた。

「あれ、そういえば父さんは?」

「ふふっ。お父さんはね」

と、言いかけた時、どんっ!と豪快な音を立てて家の扉が開いた。

「スヴェン、起きたか~?!」

父さんが勢いよく入ってくるなり名前を呼んできた。

「朝から元気だなー、起きてるよ」

「お、そうか。旅立つお前にプレゼントを買ってきたぞ!」

そういうと、テーブルに少し大ぶりな剣を置いた。

「え、これ確か村で一番高い剣じゃ・・・」

「そうだ!旅には何があるかわからないからな。これくらいしかやれんが、持っていけ!」

村を出れば獣だけでなく凶暴なモンスターも出てくるらしいので、とてもありがたい。

「ありがとう、大事にするよ!」

「おう!」

そうして家族3人、旅立ち前の最後の食事を一緒に食べた。


「じゃあな、気をつけろよ」

「何かあったらすぐ帰ってきていいんだからね」

「うん、いってきます!」

両親とは村の端で別れを告げた。

「あいつ、大丈夫かな」

「えぇ、きっと無事帰ってくるわ」

別れた後、少し涙を流すショーンとジェーンだった。



村を出たはいいものの、正直どこへ向かっていいかわからない。一応地図はもらったがこの辺りは山と川しかなく情報を集められそうな町も結構遠い。これは、近くの村を転々としてみるしかないか。とりあえず山の中でも高原になっているところがあるらしいのでそちらへ向かうことにした。

しばらく歩くと鳥の巣があった。

「お、これは鶏肉ゲットのチャンスだ・・・!」

近くの茂みに隠れ、鳥が来るのを待つ。


「カァ!カァァァ!」

「あ、やば・・・」

隠れたつもりですぐに見つかってしまった。この鳥はクイガラスだ!その名前の通りの大食漢で食物や獲物の匂いにとても敏感だ。きっと、カバンに入れてあるおにぎりの匂いすら感じ取れる。村にいたとき何度か狩ったことがあるけれど、それよりはるかに大きい!!

鋭いくちばしを突き出してもう突進してくる。これはかなり危ない。

さっと横に避けて、

「くらえ!狩猟斬!」

父さんが最も得意な狩りのための技を、父さんからもらった剣で繰り出す。

「カァァァァァァァッ!!」

狩猟斬は獲物の身体をなるべく傷つけないよう一瞬で頭を落とす必殺の技。これで狙われたら最後獲物はなすすべなく倒れる。

「ふぅ、何とか仕留めた!これでおにぎりのおかずができるぞ」

狩った後の肉の捌き方は母さんから教えてもらった。命をいただく以上、しっかり残さず食べるというのが肉屋の父さんと母さんの教えだった。

「おぉ、さすがに大物だけあってたくさんの肉が獲れた!」

これは運ぶのも大変だな。まぁあと少しで高原に入るから、そこで食事にすれば問題ない。お昼を楽しみに、再び出発した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ