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第6話 単なるシスコン


『……SP、対象のステータスを消してくれ』


『かしこまりました』


 しゅん、と仮想ディスプレイが消失する。


 ヤバいな……。


 本格的にヤバい。


 どうすれば良い?


 桜が与えられたスキルは、まさかまさかのユニークスキルだ。


 そりゃ桜もプルプルの涙目になる。


 なんせロシア、フランス、中国のユニークホルダーは全員が全員、何者かに襲撃されている。


 襲撃されているのはユニークホルダーだけじゃない。


 保有上限数1000人のアルティメットホルダーですら暗殺の対象となり、度々命を落としニュースになっている。


 レア度の高いスキルは希少な資源であり、国力を一気に増大させる圧倒的な奇跡だ。


 大国どもが薄汚れた手を何一つ隠さずに希少なスキルの独占・寡占を目指して各国で暗躍している。


 この安全で平和な日本ですら先月に自衛隊のレジェンドホルダーが毒殺され、国会で責任問題が追及されている。


 だから世間では、世界で未だに暗殺事件が無い保有上限数1万人のスペシャルホルダーが最も安全で最も自由に生きれる『最良』のレア度と見做され尊敬されている。


 それ以上のレア度の高いスキルホルダーは国益のぶつかり合いから暗殺の対象となり、それ故に国家に厳重に保護され、その見返りとして自由を失い国家の駒として扱われている。


 その頂点がユニークホルダーだ。


「お兄ぃ……」


 そのことを理解している桜が不安そうに涙目で俺を見上げている。


 そんな愛する妹をそっと優しく抱き締め、落ち着かせる為に頭を撫でてやる。


「桜、安心しろ。お兄ちゃんが必ず桜を守ってやるから」


「でも……」


「でもじゃない。ほら」


 桜から少し離れ、小指を立てる。


「約束だ。何があってもお兄ちゃんは必ず桜の傍にいる。何があってもお兄ちゃんが必ず桜を守る。だから桜は不安に思う必要は何一つない。だろ?」


「……うん」


 桜がそっと小指を立てて差し出し、お互いの小指を絡ませ合う。


「「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます、指切った」」


 指を切った後も、大切な何かを探すように小指を眺める桜。


「少しは安心したか?」


「うん……。お兄ぃを信じる」


「あぁ、お兄ちゃんを信じろ。桜の為ならお兄ちゃんはたとえ火の中水の中、どこでも飛び込めるぞ」


「ふふっ。お兄ぃなら、本当に飛び込みそう」


「お?笑顔が戻ってきたな。可愛い桜はやっぱり笑顔が一番似合うな」


 繊細なガラス細工に触れる様に咲夜さんに似てきた桜の小さな顔を優しく撫でると、桜は嬉しそうに目を細めて俺の手の平に顔を預ける。


「……桜。これからのことで色々と考えなければならないことがある」


「うん……」


「これからのことを色々と決めなければならないこともある」


「うん……」


「まず最初に考え決めるのは……」


「うん……」


「買い物とディナーをどうする?桜の誕生日だろ?」


「あ!」


 ガバッと驚いた顔をする桜。


 自分の誕生日なのに、完全に忘れてたよな?


「ホントだ!お兄ぃ、どうしよ!?」


 お?


 調子が戻ってきたようだ。


「そうだなー。このまま今日買い物とディナーに行っても良いし、別に後日に買い物とディナーに行っても良いし、桜の気分次第だろ?」


「なるほど!んじゃ、えーと、んーと」


 ウンウンと腕を組み悩む桜。


 馬鹿可愛い。


「……ねぇねぇ、お兄ぃ。誕生日プレゼントとしての買い物とディナーをキャンセルして、迷宮の探検はダメかな?」


 そうきたか……。


「さすがに迷宮の探検は……」


「お願い、お兄ぃ……」


 俺の服を両手でちょこんと掴み、ウルウルと涙目の上目遣いで見上げて来る小悪魔な桜。


 くっ、可愛い……。


「……少し考えるから、とりあえず家で昼飯でも食べるか」


「はーい!お昼ご飯、用意するね!蕎麦で良いよね?」


 大喜びの桜。


 くそっ。


 俺が折れたと完全に見透かしてやがる……。


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