#085 特殊性
先ほどと同じ様にざっと読んだ記事の中から得られた理解はそんな程度のものだった。男はそれに補足をするようにいくつか説明を付け加えた。
「パヴィトゥラはあの星、連合における最高の天賜として重用されていたんだ。天賜を得るものは、人間が通常持ちえない多くの能力を獲得する。単純な身体能力の向上から、専用の武器の鋳造、魔法に類似する作用の行使など多岐に及ぶ。それらは天賜における副産物に過ぎないが、それらだけを見てもパヴィトゥラは前代未聞のレベルに達していた」
「達していたって、まさか」
「そのまさかさ。言っただろう、副産物って」
「でも、だとしたら、パヴィトゥラは」
想像はしたくなかった。けれど男が言ったことを総合すれば自然と結論が浮かび上がってくる。
「まだ、本気を、いや本来の力を出してすらいなかったってこと――?」
無自覚に下を向いて独り言のように呟いた。口の中で籠るように声が固まる。
私はパヴィトゥラには勝てなかった。それでも、どうにか食らいついてはいたはずだと勝手に自覚していた。けれどそのすべてがまやかしかもしれないという予感が止められずに湧き上がってくる。
「いや、それは少し認識に差異があるな」
「どういう意味?」
「アイツの力の本質は自発的に発露させるものじゃない。天賜の全てがそうではないけどな。というか大抵は自らの意識で自在に繰り出せるものだ。魔法のようなものを使えるとは言ってみたが、大抵はその魔法と呼ばれるものが天賜における本質であることが多い。アイツのような例はとても稀有なんだ。しかしだからこそ、得ることのできた副産物も通常の水準を大きく上回っていたということだ」
「つまり、全部が特別ってこと?」
「ああ、その方が正しい認識だ。アレは天賜における一般例とはとても言い難い。完全な例外ではないが、特殊であることは事実さ」
特殊という言葉の響きはパヴィトゥラにぴったりだと思った。嫌味でも何でもなく、彼女の全て、容姿や立ち振る舞いなどが私は初めから異質に見えていた。それは紛れもなく彼女を表わしている。
私はそんな彼女に抱く自身の感情の判別がつかないでいる。同情しようと思えばできるだろう。彼女の環境には私とある部分で似たものがあるような気がするからだ。けれど、彼女に素直に共感することもできていない。私が抵抗をしながらも流されていく質であるのに対して、彼女は静かに主張して立ち続けるタイプだろう。私とパヴィトゥラはまるで互いに背中を向けて道を歩いてきたように見えるのだ。
「さて、前置きが長くなったがいよいよアイツに関することだ」
男はガラスの内側に捕らえられている男性の情報を消し去り、代わりに連合とパヴィトゥラに関する文章を並べる。
「少し長くなる。アイツの生まれと、今、あの星で起きていることについてだ」




