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朱紅をむすぶ  作者: 十七二
第一章 少女が死んだ日
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#Ending

 私はこの物語の結末を知っている。


 この時間には無数の選択肢が存在する。可能性と呼ばれるそれは、やがて無数の結末へとたどり着く。


 本当だろうか?


 現実は、一瞬一瞬のうちに、無数にある可能性とやらから、たった一つを選び出す。ほとんど直感的に、無意識に、無作為に、自分で選んでいると錯覚しながら、たった一つの行動を起こす。


 そして捨て去れらた行動の数々の結果によって生まれるはずの数多の結末すらをも排斥し、ひとつだけの結論に辿り着く。


 時間とはその繰り返しである。


 ありとあらゆるものが、ありとあらゆる選択を繰り返し、有り得たかもしれないもしもを一様に無為なものへと還し、そしてなぜか、ただ一つのエンディングへとひた走る。


 誰がこんな結末を望んだのか。誰がこんな終焉を喜ぶのか。誰がこんな彼方へと至ろうとするのか。


 本当に?


 捨て去られてしまった無数の可能性の先を夢想することがある。


 あの時あの番号を選んでいたら。あの時あそこに立っていなければ。あの時あの人に話しかけなければ。あの時、もしそこに私が存在していなければ――。


 どんなものだったのだろうか。希望に満ち溢れた、あなたが望んだ結末を用意できていただろうか。それとも、現在の選択こそが正しかったからこそ、あそこで選ばなくてよかったとあなたは安堵しているだろうか。


 分岐点を模索する。


 右の道へ進んだ時。一つ遅らせた時間を指定した時。選択そのものを取りやめた時。


 選ばれなかった点の先は何処へと繋がっているのか。しかし残念、その先は暗闇で、あなたは一条の光を見ることもないだろう。


「結末」とはそういうものだ。


 あなたが夢想する可能性すらも、結末は内包する。しかし、それは数多の結末の中から呼び寄せられたのではない。確かに選択の瞬間まで、結末は無数に存在している。あなたが一秒早く手を伸ばすか、指に力を入れるか、その手を取ると決めるか。そのすべてが選択の連続であり、分岐点であり、辿り着く一瞬の前までは、確かにそうしなかった未来も在った。


 しかし、それらは全て過去のものである。


 結末は確定している。


 あなたが何を考えようと、どう足掻こうと、何を選択しようと、結末は確定している。過去に戻り、ありとあらゆる分岐点に干渉し、何もかもを変えようと、全てを破壊しつくしても、あなたの結末は変わらない。この時間に、もしもなど存在はしない。あなたは過去から形作られ、あなたは今に生きて、あなたは未来の結末へとたどり着く。そうして、時間は流れる。


 恣意的に思えるって?


 その通り。これは恣意的なものだ。だが、それこそが結末の正体だ。誰かが選んだものではないし、誰もかれもが選ぼうとしたものでもない。それでも、恣意的なまでに結末は時間の先で待ち構えていて、いずれ間違いなく辿り着く。抗うことはできない。結末は確定しているのだから。


 もう一度言おう。私はこの物語の結末を知っている。


 私は多くの可能性を見た。本当に多くの可能性を。


 けれど、なぜか辿り着く先は一つだった。


 全てがそこに繋がっているのではない。ただ、決められた結末へと、すべては走っている。どうしようもなく、そこへと駆けていく。


 まあ、それは私の代償でもあるのだ。


 後悔はいくつもした。いくつも決断を、やり直せるものならやり直したい。しかし、そんなことをしたところで、結末は変わらないのなら――、それもまたひとつの結末なのだ。


 私の知る結末はただひとつだけ。私はただ、それを肯定する。

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