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第3章 來島村の歴史


「さて、今から話すのは村の歴史についてさね」


梅ばあちゃんは何から話そうか考えながら話しているようだった。


「尚ちゃんには小さいころすこし話したことあるけど、本当に覚えてないのかい?」


「うん、なにも覚えてないよ!」


「そうかい。まぁ時間もたってるしねぇ…」


「この村には古い言い伝えがあってね、これは私が子供の頃から言い伝えられていることなんだけどね」


「夜暗くなってから出歩くと鬼がさらいに来るってね! 実際昔にね、夜に出歩いた子供が行方不明になるって言う事件も起きたんだよ」


「それからと言うもの村長がこの村では夜に出歩くことを禁じたんだよ」


「そうなんだ。 行方不明になった子は結局どうなったの?」


「そうだねぇー」


おばぁちゃんは困ったような顔をして言いにくそうに話を続ける。


「そのあと見つかったんだよ。だけど身体がバラバラで森のなかで見つかったらしいんだよ」


「でもここは人里離れてるだろ? 当時の警察もたいして機能してなかったからね。村内で内々で処理するようにしたんだよ」


「そのあとは村の外れに祠をたてて祀るようにしたんだよ」


ばぁちゃんは古い本を取りだし、あるページを見せてくれた。


「その事件だけなら祠までたてたりはしないだろうけどね。昔からこの村には遊び歌があるのは知ってるかい?」


「ううん、それ知らない。どんな歌なの?」


ばぁちゃんは本を指差し遊び歌を見せてくれた。


【あさにあそぶのはだれじゃ

ゆうこくにあそぶのはだれじゃ

ばんにあそぶのはだれじゃ


わるいこはだれじゃ

いいこはだれじゃ


わるいこははかをほりおこす

いいこはしずかにねむっとる


わるいこにはむかえをだそう

いいこにはそのままねかせてあげよう


わるいこのししをかくしいっしょにさがしてあそぼう

ずっとずっとあそぼう


とわのじかんをすごそう】


「なんか気味悪い歌だね」


「昔からの歌で今は知ってる人も私と同い年くらいのは人だけだろう」


「問題はこの歌の最後の部分【 わるいこのししをかくしいっしょにさがしてあそぼう】というところが事件と一致してね。それで念のため祠をたてることになったんだよ」


「それで二人には出歩かないようにしてもらったのさね」


美桜ちゃんの方をみると明らかに顔が強張っている。


「美桜ちゃん大丈夫だよ! ただの言い伝えだから! それにそのあとは事件も起きてないんでしょ?」


「そうだね! 祠をたてて夜に出歩かなくなったら起きなくなったね」


「ほらっ。美桜ちゃん大丈夫だから安心して!」


「うん。 尚ちゃんありがとう。でもそんな事件があったなんて知らなかった。うちのおばぁちゃん一言もそんなこと言ってくれなかった…」


「そうだね。この事件のことは怖がるから子供たちには内緒にしてるんだよ。仕方ないことさね」


「うん。そうだよね…」


梅ばあちゃんは話の続きを始めた。


「この迷信めいたものを信じる理由はもう1つあってね。尚ちゃんこの村は昔炭鉱が盛んだったって言うのは知っているだろ?」


「うん! じぃちゃんが炭鉱夫だったっていうのは聞いたよ!」


「そう! じぃちゃんが亡くなった原因は話したことあったかい?」


「ううん…それは知らないよ…」


「そうかい。昔この村では炭鉱が盛んだったんだけどね。ある時大きな落石事故が起きたんだよ」


「それはそれは大きな事故でね。そのときに働いていた人たちの多数は巻き込まれたと聞いているよ。そのなかにじぃちゃんもいてね」



「私は急いで現場に向かったけど危ないから近づくことさえ出来なかった。だいたいの人のご遺体はみつかったんだけどね。炭鉱の奥に入っていた人の遺体は見つけることが出来なかったみたい」


「おじいちゃんもその中の1人さね。炭鉱に生き埋めになって亡くなってしまったんだよ」


梅ばぁちゃんは悲しい顔をして話を続ける。


「そのあとしばらくたってからだね。村のなかで急死する人が増えたんだ。村では祟りかなにかだって話になってね」


「また村長が元炭鉱跡地に供養するための祠をたてることにしたんだよ。そしたらぱったり亡くなる人が減ったんだよね。そして念のためなにかの流行り病かも知れないと言って急死した人は、当時土葬が主流だったんだけどすべて火葬して供養してあげたんだよ」


「それからはたいしてトラブルもなく今があるって訳さ。なにが原因なのかはわからないけど今更村の掟に背くのは怖いからね。美桜ちゃんと尚ちゃんには悪いけど我慢しておくれ」


「ばぁちゃんそんなことがあったなんて知らなかった。おじいちゃんのことも。話してくれてありがとね」


「ううん! 梅ばぁちゃん心配してくれてありがとうございます」


美桜ちゃんはばぁちゃんの手を握りながらお礼をいった。

それにしても村にはそんな歴史があったなんて知らなかった。

なにも知らずに守られていたんだなって思った。


「ばぁちゃん祟りについてはこの本になにも書いてないの?」


「ん? すこしだけ書いてるよ! この村の名前來島村は昔落石事故を起こした辺りから一部で鬼島村と言われてたんだ。その理由がこれさね」


おばぁちゃんが1文を指差した。

そこにはこう書かれてた。


【掟を破るもの祟りにて鬼が死者を連れてよみがえるものなり】


「鬼が死者を蘇らせる? そんなことがあるわけないよ」


「そうだろうね! でもここまで厄災が続くと人は信じるものさね。村長が亡くなった人をすべて火葬にしたのも一部これが理由さ」


「そっか。村を守るためにそうしたんだね」


「そうゆうこと! はい! これでこの村の歴史は終わり! 」


「美桜ちゃん怖い話してごめんね! 」


おばぁちゃんは美桜ちゃんの頭にぽんっと手をおき撫でた。


「ううん! 怖いけど知らないよりはいいと思った。おばぁちゃん知れてよかったよ!」


「そうか、それは良かった! 尚ちゃんなにかあったらお前が美桜ちゃんを守るんだよ」


「うん! わかったよ!」


「さっ! それじゃお風呂入って寝ようかね!」


「美桜ちゃんの着替えは尚ちゃんのパジャマあるからそれを着なさい」


「はい! 尚ちゃん服借りるね」


「う、うん! 好きにつかって!」


尚は今更ながら思うが可愛い女の子が泊まることに緊張していた。


「おばぁちゃんお先にお風呂いただきます!」


「ゆっくり暖まるんだよー」


おばぁちゃんは持ってきてくれた本を片付ける。


「ばぁちゃん、やすさんところもこの話知ってたのかな?」


「どうだろうね。 でも忠告してくれたってことは軽く知ってるんじゃないかね」


「そっか。きっと俺も知らなきゃ行けなかったよね」


おばぁちゃんは優しく頭を撫でてくれた。


「尚ちゃん世の中には知らない方が幸せなことがたくさんあるんだよ。 今回のことも知らなければ怖がらずに済むしね」


「でも問題は知ったあとさ。そのあとはどうするかは自分次第さ。いいかい今は自分の手の届く範囲でいいから守ってあげるんだよ。 きっとおじいちゃんが生きてたら同じことを言われるはずだよ!」


尚は「わかったよ!」とすこし小さく返事をしてそれでも力強く頷いた。


「それにしても仁は遅いね! いつ頃くるのかね?」


「それは確かに! あの親父なにしてんだろ?」


ふと携帯をみると圏外だった。

木々に囲まれてるからかな?


「明日あたり電話でもしてみるよ!」


「そうだね! そうしようかね」


美桜ちゃんがお風呂から出てきた。


「おばぁちゃんお風呂あいたよー」


「それじゃ尚ちゃんも入っておいで」


「うん! じゃお先にいただきます」


「美桜ちゃんは今日はばぁちゃんと一緒に寝るかい? それとも尚ちゃんと寝るかい?」


「梅ばぁちゃんと一緒に寝るよ!」


尚はそんな会話が遠くから聞こえてきてすこし複雑な気持ちになった。


「明日もいいことあるさ」


目からなにか熱いものが出たのはここだけの話だ。




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