↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

第1章 帰省


朝日がカーテンの隙間から差し込む。

外は冬真っただ中なのに無関係そうに鳥たちは忙しなく鳴いている。


尚は眠い目をこすり大きな欠伸をする。


「結局あんま寝れなかった」


昨日夕方まで寝てたこともあり、彼は寝れなかった。


多少ぐったりしながら身体を起こす。

久しぶりに朝にちゃんと起きた気がした。

ここ最近は休みに甘えて堕落した生活を送っていた。


「さむい」


寒さを我慢し、パジャマのままリビングにいく。


朝御飯とメモ書きが2通添えられてた。

1枚は手書きの地図みたいだ。もう1枚は親父からか。


手紙には12時までには待ち合わせ場所に行くように書いてあった。

どうやらもう1枚の手書きの地図は待ち合わせ場所を指しているらしいがだいぶ大雑把に書いてある。

これは無事にたどり着けるのか?

あとは交通費が置いてあった。


「親父ありがたいがすごい不安だぞこれ」


尚はポツリと呟いた。


ひとまず今はまだ7時頃だからまだ余裕はあるだろう。

どれくらい遠いいのか分からないため早めに起きて正解だった。


急いで朝御飯を食べて、シャワーを浴びて服に着替える。


「さて…9時すぎるしいくかな?」


かぁさんの仏壇に手を合わせて小さくいってきますと呟いた。


外に出ると道路には雪が降り積もり、

キャリーケースをガラガラ引きずりながら駅に向かう。


しばらく歩いていると札幌駅に着いた。

駅のなかは人々でごった返している。

正直人が多いところは嫌いだ。

大学を卒業するとこの中の一員になると考えると頭が痛くなる。


人が多いと余計な事を考えてしまうのも嫌な所の一部である。

思わずヘッドフォンから流れる音楽を大きくして周りから聞こえる雑踏を遮断する。


とりあえず來島村に行くために待ち合わせとなる近くの駅までのチケットを購入する。


親父のメモには來島村に行くためには1日1本しか走っていないバスに乗るしかないらしい。

ただ今回はバス停がある近くの駅に車で迎えがくるのだとか。

そんなに人里離れてるのかと思ったが、言う通りにするしかなかった。


何本か乗り継ぎしてようやく待ち合わせ場所に到着した。

長時間座ってたため尚はぐーっと背伸びをする。


「ようやく着いたー! 長かった! 今が12時ちょっと前だからちょうど良かったな」


いびつな地図を見ながら待ち合わせ場所のバス停まで、またキャリーケースを転がす。


「ここら辺なんだけどなぁ... 来てるのかな? てかどんな人が来るのかも教えて欲しかったよ!」


バス停でキョロキョロとしている青年は周りからみたらただの変質者だろう。

ただ幸い周りには誰も居なかった。

キョロキョロしてると後ろからプップーっとクラクションが聞こえた。


尚は振り返ると軽自動車がみえた。

一見普通なんだがただ一部気になるところが、横に大きく【民宿いやし】と書いてる。


じっと見てても仕方ないので近づいてみる。

するとガチャっと音をたてて運転席から人が降りてくる。


「わざわざ迎えにきてもらってすいません!」


尚は頭を下げて低姿勢で挨拶をして、頭をあげるとそこには、身長190はあるグラサンにリーゼントの強面の男性が、ただ胸元には可愛らしいウサギのワッペンがついたエプロンをしている。


「お前か。仁の息子というのは?」


「はいぃ! そうです! よろしくお願いいたします。」


尚は単純に怖かった。可愛らしいエプロンをしてても緩和されない強面感。

むしろ強調されている気がした。


「どうした? 大丈夫か?」


「はい! 大丈夫です! いたって健康です!」


「そ、そうか! それは良かったな! 俺は仁の腐れ縁みたいなものだ。 來島村で民宿をしている西田靖幸(にしだやすゆき)っていう。とりあえず乗れ!」


尚は促されるままに車に乗り込む。


「西田さんは親父の幼なじみみたいなものですか?」


「あぁそうだ! アイツも俺も小学校からの腐れ縁だ。 今回急に電話してタクシーがわりにしやがったのさ」


「あー。なんかすいません」


「いやいいんだ! いつものことだからな」


西田さんは車を運転しながらタバコをふかしている。

親父の我が儘を文句をいいながらも聞いてくれるこの人は案外いい人なのかもしれない。


「ここから村までは結構あるからなゆっくりしてくれ」


「はい! ありがとうございます!」


「それにしてもアイツの息子にしては行儀がいいな! ほんとにアイツの息子か? ハッハッハ!」


西田さんは豪快に笑う。

尚もつられて笑うしかなかった。

西田さんは悪い人じゃないと感じたため気になった事を聞いてみた。


「西田さん、この車は民宿の車ですか?」


「やすでいいぞ! そうだこれは家の送迎車だな。それにこのエプロンも俺の趣味じゃないからな?

嫁のやつを借りてきたんだ」


「奥さんのやつなんですね!」


「そうだ! あんたは顔が怖いから着けていけって煩くてな。うちは二人でやってるからな」


なるほど、でも奥さんそれは逆効果だと思いますよ。

尚はひそかに思った。


しばらく車は舗装されていない道を走り、1時間くらいたったころ、やすさんが話し出す。


「あとすこしでつくぞ! 梅ばぁさんとこでいいんだよな?」


「はい! お願いいたします」


「わかった! それじゃ直接向かうな! ああ、あとな、あまり夜になったら村のなか歩き廻らないほうがいいぞ」


「それはどういうことで」


「さぁついたぞ! 村のなかは暗いからなってことな。でも尚ちゃんと覚えとけよ!」


やすさんは遮りながら冗談混じりでそういってたがとても最後の言葉は冗談には聞こえなかった。

ただその割にそれ以上深く突っ込ませない圧があった。なぜだ。


車は木造の平屋の前に止まった。

周りには畑ばかり、いかにも某番組に出てきそうないかにも田舎のお家だった。


「さぁ梅ばぁさんの家だぞ。あと、時間あったらうちの民宿にも顔出せよ!」


「はい! ありがとうございました。そのうち散歩がてら行きます」


やすさんは軽く手をあげて「じゃぁな」と言って車を走らせた。


尚は雪道をキャリーケースを無理矢理引きずりながらばぁちゃんの家に歩いた。

家の前につき、古びたチャイムを人差し指でおす。

家の中から「はいはぁい」と高齢の女性の声がした。


これからしばらくは村で生活するのかと尚はしみじみ思いながら、扉が開くのを待った。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。