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最終章 脱出


尚はやすさんから借りた車でトンネルまで走っていた。

山道だと間に合わないため必然的に民宿の前を通り商店街を突っ切る必要があった。

途中に何体かゾンビを見るが見向きもせずにゴールを目指す。


民宿いやしだった建物が見えてきた。

建物は燃え尽きており、ちらほらと建物の近くに死体が転がっている。


「やすさんと夕さんはやっぱり死んじゃったんだね…」


「うん…俺達を守って逃がしてくれたんだ」


「夕さんは感染してたのかな?」


「たぶんね…引っ掛かれたときに…」


「そっか…やすさんと夕さん、いい人達だったね…」


美桜ちゃんは優しい子だ。

自分の命もかかってるのに、失った命のことを悲しめる。

俺は美桜ちゃんを何がなんでも守りたい。

約束したばぁちゃんとやすさん、夕さんの為にも…尚は隣で涙を流す美桜を見てそう思った。


「外に出たらちゃんと供養してあげよう…」


「うん…そうだね。絶対そうしよう」


そして車は商店街に入る。

商店街でも辺りには血がついており、惨劇があったことが見てわかった。

周りを注意して走っていると、昨日までお店を出していた人が何人かゾンビとなってさまよっている。


「あの人、お肉屋さんじゃない?」


「本当だ…あの時店のシャッター閉じてたけど、もしかしたらその時にはすでに感染してたのかなぁ…」


さまよっているゾンビ達は車に気付き近付こうとするが尚は、止まることなく走り出す。


「この感じだと他に生きてる人はいないかもねぇ…みんな感染しちゃったのかなぁ」


「わからないけど…こんなのが街に出たらもっと酷くなるよ…早く脱出しないと…」


商店街を抜けて一本道にでる。

この道をまっすぐ行けばトンネルにつく。

まだ時間は30分くらいはあるから間に合うと尚はすこしほっとした。


「尚ちゃん! 前!!」


ほんの一瞬だった。

目の前に見知った姿が、あの日いなくなった梅ばぁちゃんだった。

尚は避けようと車のハンドルをきった瞬間後ろタイヤがスリップして操作が効かなくなり畑につっこんだ。

幸い二人とも無事だった。

車が使えなくなり歩いてトンネルまでいくしかなくなった。


「美桜ちゃんごめん…」


「ううん…今は急ごう…」


血だらけになっている梅ばぁちゃんがすこしずつ近づいてくるが、そのまま尚達は歩き出す。


「ごめん…ばぁちゃん…」


尚は去り際に小さく謝った。

美桜ちゃんは足を引きずりながら道をひたすすむ。

尚は美桜ちゃんに肩を貸しながら一歩づつ進んでいく。


「美桜ちゃんあとすこしだから頑張って…」


足場が悪い中二人は一生懸命歩いている。


「尚ちゃん久し振りなのにとんだ再会になっちゃったね…」


「そうだね…ここから出たらまた再会をやり直そう…うちの親父も会いたがってたしご飯でも行こうよ」


「うん…出来たらいいなぁ」


「きっと間に合うから…トンネルも見えてきてるし!」


「尚ちゃん初めて会ったときの事覚えてる?」


「うん…俺が一人で遊んでたら美桜ちゃんが話しかけてくれたんだよね…俺はなかなか人見知りだったから友達いなくて美桜ちゃんが初めて友達になってくれたんだよね」


「うん…あの時私も人見知りで友達いなくて勇気だして話しかけたのが尚ちゃんだったの…」


「そうだったんだ! 似た者同士だったんだね!」


二人は笑いながら話し出す。

昔話に花を咲かせる親友のように。


「尚ちゃんしょっちゅう先生に怒られてたよね!」


「あれは俺が悪いんじゃなくてクラスの奴をかばったら結果的に…」


緊張のなか笑顔になったのがひさしぶりであった。


そしてついにトンネルに着いた。


「美桜ちゃんようやく着いたね! 間に合ったよ…良かった」


「うん…そうだね」


「あとすこしで爆発しちゃうから行こうよ!」


尚は美桜の手をつかんでトンネルをくぐろうとした。

だが美桜は尚の手を振りほどいた。

トンネルの前で固まる二人。


「美桜ちゃんごめん…痛かった? でも危ないから行こう!」


「ううん…違うの。ねぇ尚ちゃん私そっちには行けないの…」


「えっ? なんで? そこにいたら雪崩に巻き込まれるよ?」


「うん…知ってるよ…」


美桜の弱々しい声が響く。


「尚ちゃん私噛まれちゃったみたいなの…」


「うそ…いったいどこで」


「さっきの廃坑で…転んだ時にゾンビに捕まれて…」


美桜は足首を見せる。

足首にくっきりと歯形がついていた。


「だからね、尚ちゃん。私はここまでみたいなの…」


「そん…な…どこかに治せるお医者さんがいるかも知れないし…」


「尚ちゃん言ってたでしょ? 治せないよって。村の人のこと見たら…無理だよ」


「でも…」


尚の言葉と同時にドンッと爆発音が立て続けに聞こえた。


「尚ちゃんもう時間みたいだね…守ってもらってたのにごめんね」


「嫌だよ…こんなのって…」


ドドドドドドド...!

雪の滑る音が聞こえてくる。


「尚ちゃん良かった…上手くいったみたい…」


俺は涙で前が見えなかった。

彼女はいつものような笑顔で笑っていた。


「尚ちゃん…私の初恋の人はね…尚ちゃんだった」


俺は突然の告白に戸惑った。


「尚ちゃん…元気でね…さようなら」


「美桜ちゃん!」


振り絞った時にはすでに目の前は雪におおわれていた。

彼女の姿はどこにもなかった。


「美桜ちゃん…俺の初恋もあなたでした…」


尚は誰もいない場所で小さく呟いてまた涙を流した。


尚はしばらくしてからトンネルを抜けるため歩き出した。


後日談へ続きます

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