第8章 廃坑跡
しばらく車を走らせるが、雪が除雪されていないため運転しにくい箇所が多い。
そのうち岩の破片や重機などの放置が目につくようになってきた。
「あと少しで着きそうだね。ここらへんはゾンビも居ないみたいだし、早いとこダイナマイト見つけて脱出しよう」
尚は生還に希望を感じ始めていた。
「うん! そうだね…でも気を付けていこう…さっきも地下室にいたから」
そんな尚を察してか、美桜は気を引き締めるように促す。
「そうだね。どこから入ってきてるんだろうね」
「わかんないけど…おばぁちゃんが地下道が続いてるって言ってたからもしかしたら地下にもいるのかも…」
「そうなんだ…それでも俺はもう迷わないようにするよ…」
尚のハンドルを握る力が強くなる。
「美桜ちゃん着いたよ…きっとここだよ」
炭坑の入り口に張られている木の板は腐り意味をなさなくなっている。
入り口の近くには古びたコンテナがポツンと置いてあった。
二人は車を止めてコンテナに近づく。
「昔休憩所とかに使ってたのかな?」
尚がコンテナの窓を覗きこむ。
「そうかもね! 尚ちゃんこのドアならバールで壊せるんじゃないかな?」
コンテナのドアはたしかにすこし歪んでおり、バールを差し込むスペースがある。
尚はバールを隙間に差し込み扉をこじ開けた。
扉をあけると数十年分のかび臭さがたちこむ。尚と美桜はむせた。
コンテナの中は書類や暇なときに遊んでたんだろうかトランプが散乱している。
二人は服で鼻を隠しながら前にすすむ。
「ずいぶんひどい臭いだね…」
「数十年たってるからねぇ…仕方ないよ。監視所とかにもなってたのかなぁ?」
「そうだね…通信設備もとかもあるからそうだろうね。あ、美桜ちゃんこれ見て!」
尚は一枚の紙を見つけた。
そこには炭坑の地図が書いてあった。
「ここがコンテナだから…あっ! ここに爆発物保存場所って書いてるよ! きっとここにダイナマイトも保管されてるはず」
「うん! そうだね。あっ! ここが梅ばぁちゃんが言ってた祠なんだ…迷信じゃなかったんだね」
二人は廃坑の悪い言い伝えが頭をよぎったが、今は進むしかなかった。
何もなければ絶対通ろうとは思わないだろう。
尚も美桜も同じことを思っていた。
「とりあえず時間がない。早く済ませよう」
「うん…」
コンテナの中で懐中電灯を手にいれ、廃坑の入り口に進んでいく。
廃坑の中は外の寒さとはまたちがった寒さがあった。
「尚ちゃん薄気味悪いねぇ…」
「そうだね…薄暗いから気を付けて進もう…」
美桜は尚の服の袖を握りながら後ろをついていく。
さっき見つけた地図のお陰で迷わずに目的地につけそうだ。
その途中で祠が目にはいる。
祠は荒れており、誰も立ち入ってないように感じられた。
「尚ちゃん。もしかしたらこのゾンビウィルスも祠の祟りなのかな?」
「まさか…でもそうだったら恐ろしいね…」
「それに、なんで今なんだろう」
「わからない…。こういうのは人智を超えてるんじゃないかな…。どう考えても俺たちは何もしてないし…」
「何かの実験に巻き込まれたりとかは?」
「それは映画とかドラマの見すぎじゃない?」
「えぇー尚ちゃんだってゾンビのこと持ち出してるのに…」
「それは、ははは…」
無理やりに繋いでいた話が途切れてしまった。
祠の異様な雰囲気と廃坑の薄気味悪さでもしかしたらという考えが頭をよぎる。
尚は美桜の手を握る。
「美桜ちゃんあとすこしだから頑張ろ…ちゃんと守るから」
「うん…ありがとう。信じてる」
美桜はその証とばかりに、手を握り返した。
「尚ちゃんあれじゃない? 保管されてるところって!」
「そうだね! あれみたいだね!」
懐中電灯で照らすと鍵のかかった箱がいくつか並んでいる。
南京錠は錆びだらけでバールでなんとか鍵を壊せそうだ。
尚はおもいっきりバールを振り落とし南京錠を壊す。
キンっという金属音が廃坑に響き鍵は壊れた。
「よしっ。壊れたね。ダイナマイトが無事だといいけど…」
箱をあけると中にはダイナマイトが入っており、ほぼ湿気にやられていたが、無事なのが3本程度残っていた。
「3本くらいあれば雪崩は起こせるかな…」
「尚ちゃんみて! ここに発火装置もあるみたいだよ!」
「それがあればトンネルにいってからダイナマイトを爆発することが出来るね! でも使える?」
「うん…一応動くみたいだけど、これ時限式みたいだね…」
発火装置はつまみがあり時間をあわせて、つまみが0の値にいくと火花が起きる簡単なものであった。
「昔の人が工夫してつくったみたいだね。とりあえず今はそれを使おう。よし目的のものも手にいれたから早くいこう!」
「うん! ねぇ尚ちゃんなにか聞こえない?」
「ん? なんかの唸りごえかな…」
尚急いで懐中電灯で周りを照らした。
すると人影がゆらゆらとこちらに歩いてくる。
「美桜ちゃんあいつらだ! さっきの音で集まってきたのかも…動きは鈍いから避けながらすすむよ!」
「うん…」
美桜は尚の後ろを着いていきふらふらと近寄ってくる人影を避けていく。
明かりに照らされた人は見るも無惨な姿だった。頭は筋肉の筋が見え骨が見えている部分もある。
必死で捕まえようと両腕を伸ばしてくる。
数はいつのまにか10体は越えていた。
「美桜ちゃん光が見えたからあとすこしだよ!」
尚が後ろを振り返ると美桜の姿がいない
「うそっ! 美桜ちゃん?!」
懐中電灯の光で辺りを照らす。
ゆらゆらと人影はみえるが美桜の姿がいなかった。
「美桜ちゃん! どこ!?」
尚が呼び掛けるとすこし向こうから美桜の声がした。
明かりを照らしながら声の方に進む。
「尚ちゃん! こっち!」
懐中電灯を当てると足を引きずる美桜の姿があった。
「足をくじいちゃって、ダメかと思った」
「良かった…美桜ちゃんおぶるから乗って!」
「うん…ありがとう!」
尚は美桜を背負い廃坑を出た。
中ではゆらゆらと動いているが動きが早くないためそんな怖くない。
「美桜ちゃん早く仕掛けてここを出よう!」
尚はコンテナがあった場所など三ヵ所にダイナマイトを仕掛ける。
時間を調整し、45分後に爆発するようにセットした。
「美桜ちゃんあと45分で爆発するから早く脱出しよう!」
「うん…いこう! トンネルに」
尚と美桜はまた車にのり村の唯一の脱出口に走らせた。




