第九幕~青年は未来を誓った5
「―――アグオン将軍、一つ聞いても良いでしょうか…?」
その言葉にトラストは何も答えなかったが、構わずにルイスは続けて尋ねた。
「先ほどの質問に答えて貰えませんか…貴方がたは一体何を隠しているのですか?」
それは先刻聞きそびれた質問だった。
今回の事態について、イグバーンとトラストは何度か洩らしていた不可解な言動。
そして、それらを一つに繋げる謎の言葉。
「予言とは…何ですか?」
トラストは暫く沈黙したまま、杖をつき歩き続けていた。
こんな事態に陥っているのに、尚も頑なに口を閉ざすその様子に、それほどの重大性があるのかと察するルイス。
と、トラストは静かに足を止めた。
「確かに…お主には話しておくべきか」
覚悟を決めたようにそう言って、彼はようやくその重い口を開く。
「隣町までの道のりはまだ少しばかりある。それまでの道中ではあるが聞いてくれんかの…」
そう言うとトラストは再び歩き出すが、その足並みは先ほどよりもややゆっくりとなったように見える。
合わせるように、ルイスの足もまた自然と遅くなる。
「落日の予言…そして、それにより犯してしまた我らの大罪について…」
予想以上の重大性を示唆した言葉。
ルイスはおもむろに眉を顰め、無意識に指先に力が入る。
と、その手で持っていた包み紙がくしゃりと音を立て、隙間から何かがぽとりと地面に落ちた。
「―――…花?」
落としてしまったそれを拾ったルイス。
それは薄桃色の一輪の生花だった。
ミラ―スと似た髪の色をした、美しい大輪の花。
「確かそれは…ティイジェの花だったかの。どんな環境下でもたくましく咲く気高い花故に、旅人を見守る花とも言われておる…」
恐らく、アークレがお守り代わりにと添えてくれたのだろう。
そんなことを思いながら、ルイスは懐かしいその花を静かに眺めた。
「…この花ってそんな名前だったんですね…初めて教えて貰いましたよ」
そう言うとルイスは苦笑を洩らし、おもむろにハンカチを取り出す。
それでその花を丁寧に挟むと、彼は大事そうに懐へとしまった。
彼方まで草原が続く路の中。
その空の遥か遠くでは、一羽の鳥がその翼を広げ、更に向こうへと飛び去っていった。
鈍色から解き放たれた茜色の彼方―――蒼穹の空へ。
まるで落ちていくように、鳥は飛んでいく。




