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第九幕~青年は未来を誓った1











「これで…予言通りになってしまったという事か……天使は目覚め、次は終焉……」


 荒野と成り果てた町の跡地で、おもむろにそう呟くトラスト。

 彼の独り言を耳にしたルイスは顔を顰め、尋ねる。


「…予言って何ですか? あの人も何か知っているようだった…貴方たちは何を隠しているんですか…?」


 そう言いながらルイスの脳裏に、イグバーンの姿が過る。

 彼の言動は腐ったように歪んでこそいたが、任務には冷酷な程に忠実な人間だった。


『―――いいか、最初で最後に信じてやるから…だから絶対にコイツを何とかしろッ!!』


 だからこそ、裏切り者に全てを託すような人間ではないことを、ルイスはよく理解しているつもりだった。


「そ、それは……」


 ルイスの質問が予定外だったのか、口篭もるトラスト。

 あるいは誰かに口止めをされているのか。

 彼の様子から恐らく後者なのだろうと、ルイスは悟る。

 と、そのときだった。


「ルイスーー!」


 遠くから聞こえてきた声。

 聞き覚えのある声の方へとルイスたちは視線を向ける。

 するとそこには車に乗ってアークレと数人の作業員がやって来ていた。

 窓から身を乗り出し懸命に手を振る彼女は、車が停まるなりドアを蹴破り飛び出して来た。


「ああ、ルイスッ! 無事だったのかい!!」


 駆けつけると同時に、アークレはルイスを抱きしめた。

 息苦しくなるほどの力強い抱擁。

 その温かさに、ルイスは一時だけ表情を緩ませる。


「一体何があったんだい!? エスタは…あの子はどうしたんだい?」


 しかし、彼女の言葉を聞いた直後、ルイスの表情は直ぐに曇っていく。

 異変に気付き、すぐさま駆けつけただろうアークレの顔は青白く、とても不安そうにルイスを見つめていた。

 そんな彼女の顔色が、余計にルイスの口を噤んでしまう。


「…すみません」


 思わず、こんな返答しか出来ない自分を悔やむルイス。

 だが実際、事実を話すべきか、どこまで話して良いものか。

 ルイスには判断が出来なかった。

 何より、中身が違うとしてもこの現状を生み出したのがエスタなのだと、口が裂けても言いたくは無かった。


「うわっ! 何だこりゃ!?」


 そのときだ。

 二人の背後で、工場の作業員が悲鳴に近い声を上げた。

 視線を送った先には老人―――トラストに守られるように抱きかかえられた少女の亡骸。

 その少女のボロボロになった翼を見つけ、彼らは叫んでいた。


「翼…って、本物か?」

「まさか、天使…いや、そんな…」


 天使。

 その言葉が飛び交った瞬間、作業員の男たちに不穏な空気が広がる。

 彼らの反応は決して悪気があるものではない。

 伝え続けられ、積み重ねられた記録と歴史がそうさせてしまっているのだから。

 だが彼らのそうした言動に耐えられる程、ルイスの心情は穏やかではなかった。


「マダム・アークレ」


 彼女の抱擁を解き、ルイスは真っ直ぐにアークレを見つめる。


「何も言わず俺たちを工場に連れて行ってください…!」








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