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第五幕~青年は事実を知る7








 記者の男の話はおそらく、事件の真相に近いものだったのだろう。

 だが、それ以上にエスタが衝撃を受けたもの―――それはルイスの怒りの形相だった。

 ルイスとミラ―スを信じたいがために求めた事実は、触れてはいけないものだったんだと、激しく動揺した。

 そして同時にエスタは気付いた。

 自分が納得できる理由が欲しかっただけなのだと。

 誰にだって言えない本音や事情がある。

 エスタ自身にだって言えない秘密はあるというのに。

 ならば、疑わないための理屈も、信じるための言い訳も、始めから不要なはずだ。

 ルイスの口から聞いた言葉こそが、何より信ずるに値する証拠のはずだ。

 それがエスタの想う『親友』なのだから。





「駄目…じゃないだろうけどよ……」


 疑心の晴れた真っ新な瞳でエスタはルイスを見つめ続ける。

 その純心に耐え切れず、ルイスは思わず視線を逸らしてしまう。


「じゃあ僕は親友を信じる。だからこの話はこれで終わりだよ」


 ―――親友を信じる。

 その言葉のこそばゆさと重さに、ルイスは更に眉を顰めた。


(そもそも『親友』って意味はき違えてないか…?)


 そんな言葉も思わず浮かんだが、突っ込むことなくルイスはぐっと飲み込む。

 深いため息を吐いた後、エスタの肩から手を放した。




 再会したときからそうだった。

 エスタは純粋無垢の子供のような眼差しで、いつもルイスを見つめていた。

 『疑うことを知らない』というより『信じることしか知らない』ような、そんな瞳だった。

 一方のルイスがどんな思いで彼を見ていたのかも、知らずに―――。





(本当に、コイツは……)


 ルイスは色々と考えた。

 この刹那で色々なことを考え、そして直後、破顔した。


「お前…ほん、っと…最高の親友だぜ!」


 そう言って大きな声を上げて笑い出すルイス。

 唐突な笑いにエスタは驚いてしまい、動揺からあっという間に赤面していく。


「な、何か僕可笑しなこと言った? 間違ってる?」

「いや、それで良いんだよ」


 笑いを止めたルイスは再度、エスタの肩を掴んだ。

 掴んで更に彼の首へ自身の腕を組む。


「お前さ……前に軍を辞められないのかって言ってたよな?」

「う、うん…」


 先ほどとは打って変わったルイスの態度の変化。

 彼を信じると断言したばかりのエスタも、流石に困惑してしまう。

 だが、ルイスの笑顔につられて、思わず笑みを浮かべた。

 それはぎこちないものでも作り物でもない。

 本当に自然と零れ出た笑顔だった。


「この任務が終わったら…辞めようと思うんだ。俺」

「え…?」


 エスタは思わずルイスと視線を交える。

 彼の表情は何処か吹っ切れたかのようにスッキリとしていた。

 エスタは瞳を大きくさせる。


「そしたらさ―――お前と、ミラースちゃんと一緒に何処か違う町でパン屋をやりたいんだ」


 ルイスが切り出した提案は、予想外の言葉であり、エスタにとって最も願っていた夢だった。








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