~さる古の伝説~
―――かつて、この世界には【天使】と呼ばれる種がいた。
元々は同じ人であったが、彼らが信仰する神が与えたのだとされている。
彼らは神に限りなく近い姿を持ち、
あらゆる怪我も即座に完治する頑丈な身体と、
自由をそのまま描いたような不可思議な力を扱えた。
その姿はまさに神たちが棲む天からの使い―――【天使】であった。
しかし、いつしか人々は【天使】と呼ばれる彼らを恐れ始める。
神を真似た嘴や翼、趾を持つ恐ろしい姿、
八つ裂きにされようとも再生する恐ろしい身体、
理から大きく外れた恐ろしい力。
彼らを恐れた人々は、【天使】から世界を取り戻すべく立ち上がる。
【天使】もそれに対抗し、人と【天使】の争いは長きに渡り続いた。
それはそれは多くの大切なものを失う、大きな戦となった。
―――長い長い戦いの末、勝者は人であった。
しかし、敗北し命を失っても【天使】たちの憎悪は消えなかった。
彼らは自らの身を劫火で焼き、その身体を灰と化してまで、人を呪った。
元は【天使】であった灰は、風に舞えば人を病に侵し、
留まれば人の形を成し、
人をせん滅するべく襲い続けた。
成す術を失い恐怖した人々は、最後は神に頼むことにした。
人を与した一つの秩序の神は、灰となった【天使】を封印する方法を与えた。
方法を得た人は【天使の灰】を封印することに成功する。
そして人と【天使】の争いは、ようやく終止符を打つこととなった。
その後、人は徹底的に【天使】を排除し続けた。
【天使】に与した者、寝返った者、内通した逆賊は容赦なく炙り出された。
【天使】たちが崇める神を信仰した者たちさえも、邪教者として断罪された。
全ては【天使】をこの世界から抹消するため。
人々の真の平和のためだと唱えられ続けた。
そうして人々は【天使】を語らなくなった。
【天使】が崇めていた神も、邪神と呼ばれるようになり、誰も口にすら出さなくなった。
こうして、【天使】はこの世界から消えた。
―――この伝説により【天使】は、人々を呪う恐ろしき存在、不幸と不吉の象徴として今も人々に語り継がれている。




