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第二幕~青年は翼を見る5









「それに…彼女……普通じゃないんだ…」

「は?」


 更なるエスタの言葉にルイスが素っ頓狂な声を上げた。

 既に彼の台詞が普通ではないと内心思いつつ、ルイスは口を開く。 


「確かに百歩譲って煙突から落ちてきたとして、それだけでも普通じゃないが…」

「そ、そこじゃなくて…」


 と、その瞬間、エスタは戸惑った。

 果たしてこれをルイスに話して良いのかどうか。

 これは、本来ならば誰にも話してはいけない状況だ。

 これは、自分だけの秘密にするべき事情だと思った。

 そう、これだけは―――。




 が、しかし。


(―――例え何が…何があっても親友…それは未来永劫変わらない…)


 過る台詞に、エスタの思考が止まる。

 直後、エスタは反射的に話していた。


「…誰にも話さないで欲しいんだ」


 重く告げるエスタ。

 そして、彼は横たわる少女の毛布を少し捲った。

 覗きこんだルイスは先ほど以上に驚き、目を疑った。


「な…!?」


 人の腕以上…子供一人がすっぽり隠れられそうな白いソレ。

 布でも張りぼてでも、毛布の一部でもない。

 まさに鳥の翼がそのまま巨大化したようなソレ。


「…翼―――!」


 ルイスは二日酔いの気持ち悪さも忘れ、彼女の顔を覗き込んだ。

 ぐっすりと眠る少女はまだ幼さの残る顔で。

 白のワンピースを纏い、桃色の長髪の至って愛らしい少女だ。

 静かに息を呑み、ルイスはエスタに視線を向けた。


「何か…したのか…?」

「ええっ? な、何もしないよ! っていうかなんて質問してるのさ!」


 顔を紅くさせ即座に否定するエスタ。

 するとルイスは破顔させ「冗談だ」と、洩らす。

 だがルイスは内心、悪寒にも近い不気味さを抱かずにはいられなかった。

 翼の生えた人間といえば、伝説に聞くアレしかなかった。






 エスタとルイスは一旦、場所を寝室へと移した。

 彼の寝室はこの店兼自宅の二階にある。

 居間と同じくこれまた簡素な部屋で、家具はベッドとタンスしかない。

 とりあえずその唯一腰を置けるベッドにエスタが座り、ルイスは壁際に寄りかかった。

 時計の針は後2時間で正午を伝えようとしている。


「―――単刀直入に言う。あれは今すぐ軍へ渡せ」


 ルイスの言葉が、重くエスタに突き刺さる。

 それは、異形の彼女が『何者』なのかを物語っていた。


「でも……彼女は嫌がる、と思うよ…」


 あくまでも推測でしかないが、エスタは言った。

 しかし、そんな一言でルイスが納得するはずもなく。

 代わりに深い溜め息を漏らした。


「お前は判ってない。見ただろ、あの翼を…知ってるだろ、それが何を意味するのかくらい」


 ルイスの言う通りだった。

 昨夜と明け方の混乱状態から冷め、冷静になった今のエスタも理解はしている。

 あの翼が何を意味するのか。

 その説明をするには先ず、大昔の伝記を紐解いた方が早いだろう。









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