第一幕~青年は再会を果たす3
「まあ仕方ないか。5年前にお前からの手紙受け取ったきり連絡つかずだったしな…」
「あ、ごめん…引越しとか色々あって…そのうち連絡とれなくなっちゃって」
その笑みが苦笑に変わると、ルイスは彼の肩へ腕を回した。
「別に気にすんなって! 過去のことよりもこれからが大事だろ? なんたって俺たち親友なんだし」
親友。
その言葉に異様なくらいのくすぐったさを、エスタは感じた。
このドガルタに来てから一度も聞かなかった、言わなかった言葉。
ずっと昔からの夢のままの言葉。
「そうだよね…僕たち親友だもんね!」
「…そうそう!」
気がつけばエスタも腕を組み返し、二人は声を出して笑った。
「あ、そうだ! 積もる話もあるけどさ、これからアークレおばさんのところに行くんだ。一緒に行こうよ」
「誰だよそのおばさん」
「僕がお世話になってるおばさんなんだ。喜ぶよ、おばさんもきっと」
そう言うなりエスタはパンを詰めたバスケットと小麦粉の代金を手にルイスの腕を掴む。
先ほどとは立場が逆転し、困惑するルイスを後目にエスタは店を飛び出た。
今から駆けて行けばバスの出発時間には間に合う。
二人は力の限り、駆け出していった。
バスにはギリギリ間に合い、乗り込むことが出来た。
後はドガルタの町を出て十数分程度でアークレおばさんの工場へと辿り着く。
町外れも外れ。
原野の真ん中と言った場所にあるおばさんの工場は丁度、目の前が停留所となっていた。
辿り着いた精製工場は煙を上げ、夕方だと言うのに未だ休まずに動いている様子。
アークレおばさんの工場には毎日トラックで何台もの小麦が運ばれてきて、それを機械で粉へと精製し、世界中に運ばれていく。
世界でも有数な工場なのだ。
そんな工場内に気兼ねなく入っていくエスタ。
それに続くルイス。
工場員はルイスの軍服に気付くと一同揃えて目を丸くする。
その理由は先のエスタと同じであろう。
と、そこへアークレおばさんがおたまを片手にやって来た。
「待ってたよエスタ! って、おや…お隣さんは?」
「僕の親友だよ」
アークレおばさんはまじまじとルイスを眺め、それから大きく頷く。
「なかなかの二枚目だないか」
「それは感謝の極み…しかし貴方の美しさには敵いませんよ、アークレさん」
ルイスは丁寧に頭を下げると、アークレおばさんのおたまを持たない手を優しく握りしめ、その手の甲へとキスを落とす。
当然、工場で働く男連中とエスタは驚愕する。
一方でアークレおばさんはまんざらでもない顔を浮かべ、笑みを漏らした。
「おやおや…女性の扱いも二枚目だねえ」
「いえいえ、それほどでもありません」
アークレおばさんはすっかり気を良くしたのか、おたまを振りながら鼻歌交じりにエスタたちを奥の部屋へと案内する。
と、エスタはルイスへこっそり耳打ちした。
「ホントに性格変わったね、君…」
「そ…そうか?」
ルイスは笑い飛ばして見せると、アークレおばさんの待つ食卓へと先に向かう。
だがエスタは依然として困惑したまま。




