第4話a¹
4話は少し工夫しています!楽しんでください!
◆早瀬和希 かく語りきり◆
「じゃーね!」「がんばれ会長、ばいばーい!」
「はーい。またね、2人とも!」
少し長い髪を揺らし、満点の笑顔で挨拶を返す彼女は、笑広悠希、この中学校の生徒会長だ。
「(やっば、生徒会企画の案、提出日近いのに全然思いつかない。早めに動き出さないといけないのに…)」
机には余白の多い書類が何枚かあった。
「ゆーき、がんばってねー」
「あっ、ありがとー!ばいばーい!」
悠希は再びきらびやかな笑顔を返す。
「(みんなに心配されてるようじゃ、学校を引っ張って行けない。ちゃんと仕事を終わらせないと…)」
「案、とりあえず作ってみたんですけど…、どうですか?」
スーツを着た女性教師を前に、悠希は書類を差し出す。教師はパラパラと紙を流して読み、それが終わると悠希の方へ視線を動かした。
「これで学校の皆が楽しめる行事にできますか?」
「え……?」
悠希はその場で固まって思考を巡らせる。
「(そ、そんなこと聞かれても…、それに…みんなが完璧に楽しめるモノなんて…)」
「―――幸い、最終の提出日まで、もう少しだけ時間が残されています。詰められるところは徹底的に詰めて、良いイベントにしましょう。」
◆◇◆◇◆
「(もしもーし!入れてー!!)」
インターホンに写るのは、笑広悠希である。ココロは椅子の上に乗り、悠希の居るスクリーンを覗いていた。
「やー、ごめんねココロちゃん。急に押し掛けちゃって」
「…べつにいい。それで、なんでウチにきたの?」
ココロはいつも通りの無愛想で受け答えをする。
「あっ!それよりココロちゃん!朝ご飯は食べた?」
針は9時15分を差していた。
「もしまだなら私が作ってあげようか?」
ココロの雰囲気がぱあっと明るくなる。
「あははっ!ココロちゃんは今日もかわいいね~」
「!?……うるさい…」
ココロのほっぺに少しばかり熱が
「じゃあ、キッチンと冷蔵庫借りるよー、って忘れてたけど和希は?」
悠希が辺りを見渡すが、そこにココロ以外の人影を見つけられないでいた。
「…かずきは今、戦ってる。」
「え?何と?」
―――刹那、ガシャンッと物が崩れ落ちる音がする。
「(あああーーっ!!!痛っつぅああーー!!!)」
家の奥から激痛に苦しむ声が聞こえた。悠希は何の迷いもなくその方向へ走っていった。
その声はある部屋の中から発せられたモノのようである。
悠希は朝っぱらから聞こえた大きな声に対して、ちょっとドン引きめな顔でドアを開いた。
「なにしてんの?」
ぐちゃぐちゃの体勢で床に倒れているという感覚だけが俺の脳に伝わっていた。上も下も自分ではわからないため、悠希の顔が逆さから視界に入ってきたことに驚く。
「いや、なにって言うか。ちょっと筋肉痛で…」
俺は体の筋をピクピクさせつつ、悠希の方を見て問いに答える。昨日のドッチボールで調子に乗った ふぃふてぃはーふひきこもりー のオイラは、イキリ顔でボール回避のみを繰り返し、ものの見事に全身の筋肉繊維が逝ってしまったようである。
それを見た悠希は、動けない俺の元に、じわりじわりと距離を詰めてきた。
「…?な、何?何のつもり?」
「えいやっ」
悠希は俺の無防備な脇腹に両手を忍ばせ、十本の指を一気に荒ぶらせる。
「ひゃっ!あはははははははっっっ!!ちょっ!なんっっ!!」
その瞬間、筋肉がピキッと音を立てる。
「ぴゃぐっっ!!っぁあ!痛っつぅああーー!!!」
和希さんは運動なんてやってないんです。
勉強もスゴい頑張ってる訳でなくてね、基本ゲームとかしてます。だから筋肉痛は大敵なんです。