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Lifes∵正義と悪は1人2役、演じるのは泣き虫ヒーロー  作者: 凸遅 ひーる凹
第0章 Life's…
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第1話 正直言って犯罪まがい

本編が始まっちまいますぜ!

 頑張りやしたので楽しんでくだせぇ!

   皆さんは、自分のことが好きですか?


 俺は嫌いです。大嫌いです。とても弱くて、情けなくて、自分勝手で、強がりで、泣き虫で、勇気がなくて、そんな俺が、ずっと嫌いでした。


 だから、赤ちゃんが空から落ちてきて、俺の何かが変わるかもって思ったんです。






 親というのは勝手なもので、俺が小さい頃は好きな服すら着させてくれなかった。っていうか女の子っぽくてかわいい服しか家になかった。


 かわいいモノを見るのも愛でるのも好きだけど、自分がそうなりたいかっていうのは違う話だ。小さい頃の“あこがれ”はカッコいいヒーローだったのに、かわいいモノで飾られた俺は、“あこがれ”とはほど遠かった。


 そのうち積極的には親と会わなくなり、俺はいつの間にか高校1年生。友達はまだ居ないけど普通の高校生活を送っている。






 放課後、とある小さな山の麓に来ていた。そこに父さんの職場があり今日は少し顔を出すつもりだった。しかし同僚の方に父さんは海外へ行っていると聞き、もともと用件があった訳でもないため、父さんと会う時間がただ遠くまで散歩しただけの時間になってしまった。



「すいません、じゃあ帰ります」


―――海外に行くなんて聞いてないぞ…






 家に帰ろうと外に出て扉を閉じた瞬間、山頂の上空が一瞬だけ焼けるほど強く光った。いつもの俺ならその場であたふたした後に、恐るおそる帰っていただろう。いくら小さい山だと言ってもわざわざ登って確かめに行こうなどとは思わないはずだ。




 しかし、今日の俺は悲しみに暮れていた。











 教室内、俺は独りで机に伏せている。



―――はぁ、初対面の人とほとんど話せてないや…



「早瀬君だよね、次移動だよ?」


「へ…?」



 クラスの男子に話しかけられた。これはチャンスだ、高校生活で初めての新しい友達ができるかもしれない。ここは気合いを入れて返答しよう。



「…あ、おん!うっすいぇす、はい…。いや、あの…

それくらい分かってたんだからね!…みたいな」




「……………………………………え?」




「あっ、いやちがっ、ちょっその、あはっわ、笑ってょ~。」











 深く空気を吸い込み、肺に染み渡る酸素の形を脳裏に描き出したのち、まだ行く当てのない呼気の群れを見透かして、俺は思う。




―――あっ、死にたい




 放課後は友達ができない自分に呆れてマイナス思考だったため、きっと判断力が鈍っていたのだろう。だから山頂にその光が訪れたとき、自然と光の中心に行くという選択をしてしまった。


 そうして行き着いた山頂では、体を丸めた赤ちゃんがその身1つで空からゆっくりと落ちてきているという場面に遭遇したのだった。―――






 山頂に着く頃には大きく息切れしていたが、それを刹那で忘れてしまうほど、夕日に照らされた赤ちゃんは神秘的だった。


 あまりの非現実さに呆然としていたが、考えに考え抜いた末、赤ちゃんを家に連れて帰ることを選んだ。実はそこに時間の分だけの深い考えがあったわけではない。


 そこにあったのは「赤ちゃんかわいー」ぐらいの気持ちと、後から追ってくるとてつもない犯罪臭だった。











「まじでやっちまったよ。」



 自宅にて、どこのだれの子かも知らない乳幼児を連きてきた今日この頃のなう。



「いやでも、やっぱり空から落ちてきたってのは不可解だし、あのまま放っといたら山の中で1人取り残されてたわけだし。ただの赤ちゃんじゃない説と良心的に見過ごせなかったっていう言い訳もある。この2重の予防線を張っておけば犯罪じゃないと俺は主張できる。たぶん。」



 赤ちゃんは服も着ずに眠っていた。


 ちょうどいい服はないと思うけど、毛布的なサムシングは持ってこようと俺は家の奥へと入っていった。




 使えそうな物をありったけ腕に詰め込み、もと居たリビングに戻ると、赤ちゃんは唐突に発光しだした。


 内心で「エええ~~~」と展開に置いていかれそうになるも、光の眩しさに目を閉ざす。光の輝きが弱まるとそこには小学生くらいに成長した赤ちゃんがいた。


 内心で「エええ~~~」と思いつつも、目の前の不思議な現象をなんとなくで受け入れる。なんせその赤ちゃんは、その少女は、空から降ってきたのだから。



「……?あれ、もしもし~。おーい、(オチャ)」



 てっきり成長した少女が起き上がって何か始まるかと思っていたが、その少女は眠ったままであった。


 白銀の髪の毛が少女の体を覆うほど長く伸びてはいるものの、春先に裸一貫というのは見ていてとても肌寒そうであった。キメ細やかできれいな肌はずっと見ていたいと思うほどだったが、イエスロリータ・ノータッチ学会に怒られる前に少女を毛布で柔らかく包んだ。






 時刻は夜10時、徹夜でゲームをした昨日が響き、うとうとし始める頃に少女は目を覚ました。



「………??」



 ベッドなどの寝転がっても痛くないところへ移動させようか、第3者から見たらイヤらしくないか、などとつまらないことを考えていた俺の目と少女の目が合う。少し驚いたような素振りを見せ、少女は肩を揺らして怯えだした。



「あ、えっと、体調はどんな感じ?寒くない?」



 返事はなかった。少女は真っ赤に輝く瞳ごと毛布でその顔を隠してしまった。



 自分でも少し品がない話だとは思うが、俺は同級生とかと話すより自分と比べて弱そうな存在と話す方が得意だ。いや別にロリコンとかじゃないけどさ…、いやショタもいけるって話じゃないけどさ。


 まあとにかく、変に緊張してないから、目の前で震えてる女の子への気遣いくらいはできるってことで…



 そんな感じでとりあえずは怯える少女をそっとしておいて、よいこにしては少し遅めの晩ご飯を用意し始めた。と言ってもただのインスタント食品や冷凍食品の寄せ集めだが、ないよりはマシの精神である。それに近年の冷凍食品なんかとってもおいしくなってきてるし、なんと言っても―――



―――ぐうーっと小さな音が毛布から聞こえる。



 もちろん毛布が流行りに乗って擬人化したわけではない。隠れた少女がレンジの中のご飯のにおいを嗅いでお腹を鳴らしたのだろう。



「…お腹すいた?」



 少女に問いかけてみる。まだ返答はない。



「…ごはん食べる?」



 毛布がピクリと動いた。少しはこちらに興味がある証拠だ。



「(ならばもっとご飯のにおいを嗅がせて差し上げよう。)」



 毛布の近くにアツアツの食品達を並べると、毛布は小さな口を開け、少女の顔をちらつかせた。


―――更に大きなぐうーっが聞こえる。


 もうご飯にしか目が行っていない。



「遠慮なく食べていいんだよ?」



 俺が声をかけると、少女はたった今こちらに気づいたようにビクッと体を硬直させ、すぐさま毛布に戻って行った。



「(ああ、俺が居ると邪魔なのね)」



 俺は距離を取るためソファーに座り、少女の食事を待つことにした。だがしかし、その晩の間に少女がご飯を食べることはなかった。






 起きた後で朝ごはんも出してみたけどお腹の音を鳴らすだけで食べてくれなかった。お昼は学校に行く前にいろいろ置いてったけど結局ダメっぽい。(育児放棄じゃないお。)


 でも、今日の夜は一味違うぜ!なんてったって唯一の高校の知り合いかつ料理が上手い幼なじみを説得してめちゃめちゃ美味しそうな手料理を作ってもらったんだもん!!俺でも食いたいよ、このご飯。


 大きなお盆に美味しそうな料理を乗せ、いつも通り毛布の近くに配置する。今日こそは、せめて一口でも何か食べてほしい。そんな思いで遠くから少女を見守る。


 すぐに毛布から顔を出したが、その状態で停止している。小さく顔を出した少女がご飯をにらんでいるという状況は、少し滑稽でもあったが、当の本人にとっては警戒を解くのに必要な大真面目な儀式なのだろう。


 やがて、かつてないほどのお腹の音とともに毛布から両手が出てきた。いいぞ!と俺も観戦に没頭していたが、痛恨のミスがあったことに気がつく。


 少女は箸もスプーンも使い方を知らなかったのだ。


 それに気づいたのは少女が熱いスープに手を入れた瞬間だった。反射でスープから手を離した少女だったが、指先が赤くなっていた。俺は急いでフキンを手に取り、少女のもとへ走った。少女は居ると思わなかったであろう俺の登場にガタガタッと後ずさったが、走る俺に追いつかれた。


 ヤケドになっていないかをとにかく確認しようと少女の手をとったが、少女はびっくりした様子で俺の手を強く振り払ってしまった。






    ああ、俺の手は“また”振り払われるんだな






 はっと我に帰り少女に向き直る。少女も悪気があったわけではなく反射的に手を振り払ったようで、俺を案じておろおろしていた。


 そうしている少女は、今まで身を隠していた毛布から完全に離れていた。そこで俺は、今だ!とばかりに少女を水道まで連れていき、保健の授業で聞いた通りの処置に努めた。


 最初はぷるぷる動いていて処置しにくかったので、無理矢理にでも続けていたら途中から安心したのか、お互いに力を抜いてテキパキとヤケドの処置ができた。






「ああ、すっかり冷たくなってる。」



 俺は晩ご飯の食器を調べるように触り呟いた。



「……ご、ごめん…なさい。」


「(!?…ちゃんと話せたのか)」



 申し訳なさそうにビクビクしている少女は、気持ちも視線も下を向いているようだった。


 なるべく安心させようと、少女の目線まで屈み、優しい笑顔を心がけて言う。



「きみ、名前は?」


「……名前?………ココロ。」



 ただ小さく少女はそう言った。



「そっか、ちょっと待っててね」


「……??」






「はい!できたよ!」



 冷めてしまった食事をレンジで温めて、再び少女の前に並べた。


 グルグルとお腹を鳴らす少女。結局まだ一口も食事をしていないのだ。


 表情はあまり変わらないものの、少女の真っ赤な瞳の奥は、料理を写して輝いている。すぐに料理に手をかけようとしたとき、俺は「待って!」と口を挟んだ。



「…ふーっふーっふーっ、って気をつけて食べないとまたヤケドしちゃうよ?」



 スプーンでスープをすくい、それを冷ますところを見せる。やってみて、と小さいスプーンを渡すが、少女の息が強すぎてスプーンの中身は空っぽになってしまった。


 相変わらず表情は変わらないが、うつむいて悲しそうだということは伝わった。



「あはは、じゃあ、こっち飲んでみて」



 先程俺がすくったスープを少女の顔の前まで運ぶ。既にふーっと冷ましたから大丈夫だと伝わったみたいで、すぐに小さな口を開けた。


   パクッ。


 やっとはじめての食事ができ、俺も少女も達成感のようなものを感じた。



「……!…おいしい。」



 そう言った少女の、スープを味わう表情は少し明るいものになっていた。




「俺は早瀬(はやせ)和希(かずき)。よろしくね、ココロ!」




「………よ、よろしく。……かずき。」



 そう言ったココロはどこか吹っ切れないような目だった。











 やはりココロは何かワケアリのようで、一旦はココロを預かってみることにした。それから、俺とココロの生活が始まった。


 ココロはどうやら本を読むのが好きみたいで、小さなおててで一生懸命にページをめくる姿がかわいい。また、俺が親から着せられたお下がりの服が家にあったのでそれを着せると、女の子っぽい服と言って恥ずかしそうにする姿がかわいい。もう箸を使う練習を始めていて失敗したときに少し頬を膨らませる姿がかわいい。1日中読んでいたのであろう本を片付けるのに疲れて大きな本の上で寝てしまう姿がかわいい俺が帰ってきたときに必ず顔を見せて明るいトーンでおかえりなさいと言ってくれる姿が……っと、

 まあ、かわいいモノが好きな俺はココロのかわいさにドハマリしてしまったということだけど、それは別に俺がロリコンってわけではないし、犯罪者でもない。どっちかって言うと俺は最近男の娘が…うっぷす、オイラは犯罪者じゃねえからよ。安心してくれよ。


























 早瀬和希、彼はそこに何をもたらすのだろうか。彼が世界にとっての“悪”にならなければ良いが…











 異世界転移まで あと 20日―――

予定では4話で異世界に行きます。

バトル描写も増えていくのでスピード感を大事に頑張ります。

それまで全裸で待っていただけると嬉しいです!

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