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娼館ピンピン


北区(ノース)は暗く湿った空気で包まれている。スリや強盗が多い為一般人はあまり近寄らない。だが酒場が多く情報が集まる場所でもある。腕に自信があれば怖い場所でもないだろう。行われる犯行は軽い物が多い。何せまだここは王都である為見回りもされるからだ。その一角に、マダムメリクールの娼館ピンピンはあった。

町を走り娼館へ急ぐ。怪しいローブを着た集団にすれ違ったがかまっていられない。


「なんかっ、すっごくジロジロ見られたんだけど!?」

「多分悪魔崇拝の奴らだ、はぁッ…この国じゃ悪魔崇拝は禁止されてるんだけど…、っなかには居るんだよ、あーゆー奴らがっ」


双子はローブの奴らに構わないよう言ってくる。息を切らしながら4人は走る。


「……マダムの店はここだ」


しばらく走るとマダムの店に着いた。店構えは赤いカーテンが入り口にかかり、いかにも娼館ですよと言いたげに揺れている。


「ねぇ、ぼ、僕こういうところ入ったことなくて…!い、いいの?」

「僕もない…」

「要くんも!?あ。あっちの姿じゃそらないかぁ」

「……お前もだろ」


悲しき童貞の彼らには刺激が強かろう事は小さな2人にも察せられた。4人は店に入る。狭苦しい密室と思ったら思いの外中は広々として絨毯や置物、植木なんかが置いてあった。一階はホールだけで主旨の部屋は二階と三階に構えられているらしい。


「あらん?ココ子供は入れないわよ〜?」

「ヤダァかんわいい〜!!」

「そっちのお兄さんたちの子供〜?さっすがに子供連れは入れないかなぁ」


女が数人ホールのソファーやカウンターで客待ちをしているようだった。4人が入ると近寄ってきて明るく話しかけてくる。服装の際どさに2人の男はタジタジで、何せ豊満な胸を惜しみなく晒してスリットにはレースがあしらわれ、とにかく童貞には刺激の強い格好だらけだ。


「お兄さん達カッコいいからおまけして安く相手してあげるわよ?今忙しいけど特別に…。どう?アタシなんかすごくイイって評判なんだから…」

「ちょっと独り占めはよくないわ。みんなで可愛がってあげましょ。だってこんなにヒヨコみたいに震えちゃって、産まれたての小鹿じゃない…初めてなのよきっと」


けらけらと娼婦達は話を進めていく。鳥なのか鹿なのか…。2人の男達も何も言わないが満更じゃない気持ちはそりゃあある。恥ずかしさで何も言えずただ話の行方に身を任せるしかない。が、今は事が事なのだ。


「私たちはマダムメリクールに用があってきている」

「マダムはどこ?」

「マダムならさっき帰ってきて自室に篭ってるわ。媚薬の調合で良いレシピを思いついたとか。少量で相当な効き目だっていう…」

「効きすぎて気絶するって話だよ」

「やだあはは!それなら仕事が楽でいいわねぇ〜」

「お兄さんたち、試してみる?」


グイッと女に詰め寄られ2人は真っ赤になってしまう。いやいや大丈夫です!!と大きな声で拒否している時、ちょうど階段を降りてくるマダムメリクールが声を掛けた。


「アンタ達、連れの男を置いて昼間っから楽しみに来たのかい?瀕死だったんだろ?」

「マダムメリクール!!急いで聞いてほしい事があるんだ!」


シュネはマダムメリクールに、カラフ草を食べた忍を治すには、マダムの持っていった強羅ウルフの牙が必要である事、フルールの店にもう在庫がないから譲って欲しい事を伝える。


「そりゃあ大変だね。でもねぇウチだって商売で買ってきたんだよ?渡したらアタシだって薬が作れなくなっちまうだろ?」

「で、でもそれがないと忍が死んでしまうんです…!」


要の訴えに、そうだねぇ…と、マダムは暫く考える。するとポンと手を叩き、要たちに向かってにっこり笑った


「じゃあ今はコレを無償で譲ってあげるわよ。代わりに強羅ウルフの牙を近いうちに20本持ってきて頂戴。どう?それなら今渡してもいいわよ」

「ええ!?20本!?」


シュネとシャラはこうなると予想していたのか頭を抱えていた。はぁと溜息を吐き口を開いた。


「1匹の強羅ウルフから取れる牙は2本。10体の強羅ウルフを倒さないと手に入らない」

「でももう、仕方ない。飲むしかない、じゃないと忍が死ぬし」

「やった!ウフフ!あのオカマの店もこれはぼったくり値段で売ってるから困ってたのよぉ!じゃあ今持ってくるからお待ちあそばせ」


にっこにこ。マダムはとても気分が良いのか鼻歌を歌いながら階段を登って行った。


「え、オカマの店って…?え??」

「オカマってなぁに?どういう事?」

「言ってなかったか。フルールはオカマだぞ?」

「「ええええええええ!?」」


店に悲鳴が響き渡った。ちょうどマダムが降りてきて、牙を渡してくれる。


「はいこれ。ちゃんと20本持ってくるんだよ?じゃないとわかってるね?」

「ああマダム。約束は守るよ」

「近いうちに、またくる」

「そう頼むよ、そしたらアンタ達がうちに来た時は安く案内してやるよ」


じゃないとどうなるんだろう…。要と龍来は深く考えない事にした。4人は来た道を急いで戻る。その時。突然要達は数人の男に囲まれて、道を塞がれてしまった。

さっきのローブの男達だった。


「ルスト様が復活した際…勇者の存在は邪魔でしかない」

「おおルスト様に仇を成す悪魔よ…、ここで散るが良い…」


悪魔崇拝の者達が、要達を取り囲み各々ぶつぶつと何かを呟きながら詰め寄る。何かの呪文だろうか。逃げ道もないようで、完全に狙われていたようだ。


「シュネシャラ!こいつら何者だよ!?」

「こいつらは魔の教え修身堂(デスウィア)という悪魔崇拝の組織の者だ…。勇者召喚は国全土に知らされた事…。ルストを崇拝するこいつらにとってはお前らは超邪魔な存在なんだ」

「超邪魔って…。今はこいつらの方が超邪魔じゃん!早くしないと忍ちゃんが死んじゃうし、僕らだって何もできないよ!!」

「くるぞ…!戦うしかない!とにかく構えろ!」


シュネとシャラは自らのロッドを構え戦闘態勢に入った。置き去りの2人はどうして良いかわからない。


「なにやってる!!早く念じろ!」

「念じろったって何を!!??」

「わけわかんないよ!!」



「自分が踊れるって事と、編み物が編めるって事だ!!!」


??????


2人には全く意味がわからなかった……。



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