御披露目の結果は
ヨウがリルの手を引き、二人で武器屋を後にする。当然外に出たためリルの悪魔のコスプレが公然に晒されることになった。街を行き交う人々がリルの姿をじっと眺めたり、物珍しそうにチラチラと見ていたりする。
「……落ち着いた?」
「落ち着くわけ……ないぃ!!」
当然そんな状況で落ち着いてなどいられない訳で、リルは恥ずかしさのメーターがとうに振りきれ、ヨウの肩を引っ付かんで帰ろうとせがんでいた。
『なんだあれ……悪魔?』
『いや、普通の女の子……よね?』
『可愛い……』
ざわつくような喧騒に渦巻かれ、思わずヨウもすくみあがる。それもそのはず、現に自分の作った服装がこうして世間の目に直で触れているのだ。
『悪魔の格好をするなんて、不謹慎ね……』
『なんだなんだ、見世物か?』
当然ながら彼女達を否定するような意見もあり、どちらの意味でも注目を浴びることにはなった。リルの姿はすれ違う人々の目に留まり、またヨウも制服という見慣れない服装をしているせいでとても目立つ。
「うっ……流石に人目が多すぎるね。」
「そう思うならもっと時間を考えてほしかったな!全く無計画なんだから!」
降り注ぐ視線の雨が、先程まで息巻いていたヨウの勢いすら止めてしまっていて、最早宣伝どころではない。
「ねえねえ、それ本物?本物なの?」
「えっと、いや、作り物……」
リルの姿を物珍しそうに見つめる人から時に質問攻めにされ、彼女は慌てふためく。それだけならまだしも勝手に角のついたカチューシャや尻尾を触られてしまい、収集が着かなくなり始めていた。
「へええ、本物みたーい。凄いねこれ。」
「う……ヨウ、早く終わらせて……。」
「そ、そうだね。すみません、ちょっと失礼します!」
流石に露出が多すぎたか、とヨウも反省し、近づく人達をどうにか退かせながらザートの営む店へと帰還した。結果は言わずもがな大失敗。目立つことは出来たが悪目立ち、あまり良くない心象であったことは言うまでもない。
「おお、おかえ……その様子だと失敗か。」
二人を改めて迎え入れたザートも顔を見て悟ったらしく、やれやれと苦い表情を浮かべている。
「駄目でした。目立ちはしましたけど、変な人みたいな目で見られました。」
「そりゃそうなるだろ。」
ごもっともとばかりにザートはツッコミを入れ、それにリルも便乗して頷く。
「もっと露出のないコスプレ?はないの?いきなり悪魔はハードルが高いよ……。」
リルは角付きカチューシャを取ってそう呟くように言った。それにヨウは少しばかり考えるような仕草をして見せる。
「露出の少ないコスプレか……」
今回の敗因は間違いなく露出の多さにある。更に悪魔のコスプレとあって大衆を煽り立て過ぎたのも宣伝に至れなかった理由でもあったのだ。
それ故、物珍しく、目立ち、露出の多いものはまた同じ結果を招いてしまいかねないため、慎重にいくべきだろう。とザートと提案した。また同じ轍を踏むようなことがあれば変人呼ばわりされても文句は言えない。
そればかりか女の子を着せかえして楽しんでいる異常性癖者と格付けされて御用になっても文句は言えまい。
「目立つことは出来たんだ。可愛いとも言われたし、素体が悪い訳じゃない。問題は露出の多さと宣伝の可否……。」
ヨウは一人頭を巡らせ、どうすればいいかを考えていた。コスプレを広めたいのに拒否反応を示されてしまえばお仕舞いであることは彼女も理解している。
更にコスプレをさせられているリルに否があるわけでもない。寧ろ好条件の素体であるとヨウも豪語している。
「ヨウ、あんたのいたところではどんなコスプレがあったの?」
どんなコスプレがあるのかが少し気になったらしいリルが聞いてきた。意外にもやる気ならしく、悩んでいるヨウの姿が気にくわなかったようだ。
「そうだね……例えばゲームキャラクター……ああ、姫様ドレスとか盗賊服、騎士の鎧とか色々あったよ。」
「私達の服とそうそう変わりないじゃない。」
「まったくだ。」
ヨウの持っているゲームの知識は、この世界とさほど大差ない。ただ実用性の有無とお洒落の度合いが大きい。元々ヨウも無駄な露出を省き、完全武装となっている服が気にくわなかっただけであり、コスプレの原型たるものの大半はこの街が持っている要素と変わりない。
「なら……まずはやっぱり馴染みある服にしよう。」
「どうするの?」
ふと思い立ったヨウの姿をリルは首をかしげて見つめている。自分が実験台にされることを承知で彼女はどうするのかを聞いた。
「まずはファンタジーの王道、メイド服から作ろう!!」




