カチェスタ第六階層
現在僕達はカチェスタの街、北にあるダンジョンの第三階層の第四階層への入り口に来ている。
「懐かしいな。 ここで大きなトロル相手にセリルが魔眼砲を使ったのは本当に驚いたよ」
「魔眼砲? 魔眼砲を使ったのか?」
「うん。 凄い威力だったけど、アトラスは情報を集めに行ってたし、ヘンリーナはまだ生まれて無かったから知らないよね。 セリルは魔眼砲を使った後、魔力酔いで大変だったけど今はどうなんだ?」
「あれから使ってないから分からないけど、大丈夫だと思うよ」
「そうか。 使わないで済むんだったらそれに越したことはないけど、不安の種は残さない方がいいと思うし、今度試し打ちでもした方がいいんじゃないかな?」
「それも、そうね。 機会があったら使ってみるね」
第四階層は第三階層と同じような荒野が広がっていて、出現する魔物はトロルや大猿の魔獣など、大きくて人型っぽい魔物が多くいる。
今の僕達の装備と実力では、第四階層の魔物達は何の危険にもならなかったので、そのまま第五階層へ直行する。
ここも荒野か……しかし、第四階層とは違い、中央に遺跡らしき物が見える。
きっとあそこにボス部屋があって、第六階層へ続く道があるはずだ。
案の定遺跡らしき物の中へ入ると大きな扉がある。
ヴァジールのダンジョンでボス部屋は体験済なので、迷う事なく扉を開く。
中に居たのは、これまで見て来たどのトロルよりも大きなトロルだった。
「ヘンリーナ、頼むぞ!」
「炎ですね。 畏まりました!」
トロルは再生能力が高いけど、炎、毒、腐食などのダメージは再生出来ない。
アトラスが壁になってヘンリーナが炎の攻撃を繰り返せば楽勝だろう。
逆に弱点を突く事が出来なければ、驚異的な再生能力を持っているトロルを相手にするのは今の僕達でも苦労しただろうけど。
トロルの攻撃にアトラスは余裕を持って耐え、ヘンリーナの炎によってトロルはどんどんダメージを負っていく。
僕が中途半端に攻撃して、再生能力を回復させても悪いし、セリルと一緒に戦闘を眺めている。
セリルは≪グラビティサークル≫で動きを鈍らせたりしているので、働いていないのは僕だけだ。
大きなトロルは苦戦する事もなく、ヘンリーナの炎によって焼き尽くされ、奥にある入り口から第六階層へ向かう。
第六階層は金色の草が生茂る不思議な場所だった。
金色の草は触った感じ、普通の草と変わらず、変な匂いもしない……
穏やかな風が吹いていて、金色の草がサラサラと音を立てて波打っている。
「アトラス。 魔物の気配はあるか?」
「いや、今の所気配はない。 先へ進んでみるか」
邪魔な草を踏み倒しながら進んで行くと、アトラスが何かの気配を察知する。
「複数体近づいてくる。 それ以外の気配はないが、気を付けておけ」
身構えて待っていると、走っている鳥?の魔獣の群れが姿を現した。
体が金と黒の毛に覆われていて、首から上には体毛がなく、黒い肌をしている。
頭には金色の角の様な突起があり、鋭い嘴を持っている。
数は、八体いて、凄い速度でこちらへ向かって来ている。
アトラスが群れに向かって構えると、鳥達はギャオオと、低い声で鳴きながら突っ込んでくる。
速度が速いので、セリルにはヘンリーナを抱えて、空へ逃れる様に指示を出し、僕も身構えて迎え撃つ!
アトラスは鳥の魔獣の飛び蹴り一撃で、吹き飛ばされて後退する!
しかし、一体の足止めには成功して、そのまま交戦状態へ突入する。
残りの七体の鳥の魔獣達が、僕目掛けて走って来るけど、アトラスが防ぎきれなかった蹴りを僕が防げるとは思えない。
だから僕は、一体に狙いを定めて、細長い首を狙って剣を振る!
ギムロスの作ってくれた双剣のお陰で、一体の首を落とす事には成功した。
しかし、凄い筋肉だなぁ……当たった瞬間重たい感じがして、スパッと首を落とす事が出来ずに、双剣の刃が挟で切るみたいに、食い込んでいって両断出来た感じだった。
草に隠れて見えなかったけど、凄い足をしていて、地竜の太い足に鋭く尖った爪が生えている様な物騒な感じの足をしている。
空からヘンリーナが炎で援護してくれたお陰で、邪魔な草が燃えて禿げ上がっていく。
セリルも≪イビルアイ≫を複数飛ばして、鳥の魔獣を弱体化させてくれている。
アトラスは力で負けていたけど、上手く飛び上がった所を投げ飛ばして、メイスで滅多打ちにしていた。
あと六体も居るのか……
僕は闇の魔法であり≪ダークミスト≫で相手の混乱を狙う。
この魔法は闇の霧で敵を包み、最も嫌いな生物に纏わりつかせる幻を見せる魔法だ。
一人でも幻を見破ればそこから簡単に、解除されてしまうけど、見破られなければ強い精神異常を起こして混乱する。
鳥の魔獣達はどんな幻を見ているのか、混乱して逃げ回る様な素振りを見せている。
アトラスと僕で混乱した鳥の魔獣達に攻撃をしていく。
混乱しているとはいえ、凄い筋肉で暴れているから、危険がないわけじゃないけど、慎重に攻撃をしていれば相手には僕達が目に入っていないし、楽勝だった。
全ての魔獣に止めを刺し、セリルに回収させてから先へ進むと、入り口があった……
僕のダンジョンは最大で第六階層。
つまり、ここの主は僕よりも拠点のレベルが高い。
そして、第七階層に現れる魔物は、かなり手強いと予想される。
ギムロスの作ってくれた装備の性能が良いお陰で、第六階層の鳥の魔獣は、簡単に倒す事が出来たけど、この先はそうはいかないだろう。
皆に気を引き締める様に伝え、第七階層へ向けて踏み出した。




