主の目覚め
目を覚まし体を起こすと、眷属達が皆僕の事を見守ってくれていた様だ……
リストは泣きながら僕の上に覆いかぶさり、ヘンリーナも「あるじー」と言いながら胸にしがみ付いてくる。
なんか気まずいな。
でも、僕には言うべき事がある。
「皆、心配かけてごめんね。 セリル、突き飛ばしてしまって悪かった。 ごめんよ……」
「大丈夫。 私は平気だよ。 だって……」
「お姉さんだから。 でしょ?」
「うん!」
周りの皆は笑顔を僕に向けてくれる。
何人かは、涙を流していた跡がある……初めての気分だな。
ほんの少しだけ、僕が僕で居て良かったと思えた。
僕が目覚めてから約三ヵ月。
あれから僕は眷属達に、しばらく旅は禁止だと言われ、療養する事になった。
拠点で仕事もせずに横になったり食べてばかりだったけど、療養中は眷属の誰かが、必ず傍に居てくれたので、退屈では無かった。
さすがに、リストがマンドレイク達を連れて来た時は、あまりに騒がしかったので酷い目にあったけど、それも楽しかったし、僕の事を慕ってくれて嬉しいと感じた。
セリルはここぞとばかりに、お姉さんぶって来たけど、僕はまだ子供なんだし、それに甘えるのも悪くないと思い、「お姉ちゃん」と呼ぶと、抱き着いて頬を摺り寄せて来たので、二度と言わない事にした。
アリアドネは僕が、精神的に不安定になり易い時期で、眷属達の能力の一部を得られたり、旅先では冒険者として振る舞い、拠点では魔境の主である事を意識しすぎて、心が着いて行けなくなってしまったから倒れてしまったのではないかと、話してくれた。
他の眷属達とも色々な話をして、沢山学べた様な気がする。
これからは気負い過ぎない様に僕も気を付けよう。
ドリエルの仕事はアトラスが上手く進めてくれて、ギルドから報酬も受け取ってくれいた。
クラークスの街は今大賑わいらしく、リストの作っていたレフォールが大人気となってレフォール祭りをしているらしい……
僕も気になって、試して見たけど、あれが食材だと言う事が信じられないくらいに辛くて、鼻がツーンとした痛みで涙が出て来た。
香辛料も好評で、コストダウンした火力調整付の調理器具もそこそこ交易で取引が行われているらしい。
ギムロスが頼んでいた、醸造所では、酒精度の高い物ばかりを作っていた為、一般的には流行っていないものの、一部から根強い人気を得ている。
これもかなり薄めた物を口にしたけど、手をギュッと握って喉を通すのがやっとだった。
何はともあれ、街の発展によって、資金も溜まるし、情報も沢山手に入るし、僕達の旅も、ダンジョンの攻略を中心にして行く事になった。
次の僕達の目標はカチェスタのダンジョン攻略だ。
ヴァジールのダンジョン攻略からも時間経っているし、リハビリには丁度良い。
溜まっている仕事も、少しずつ消化していけば、無理をしているなんて事もないだろうし、はやる気持ちを抑えて旅の準備から始める。
ミスリルや地竜の素材を使った装備が既に完成しているので、ホムンクルスの僕に精神を移して身に着ける。
見た目も綺麗だし、装備した時の安心感が今までの装備とは全然違う。
地竜の力を感じ取る事が出来て、ずっしりとした装着感なのに、身軽に動ける感覚。
旅に出る三人も満足している様だ。
僕達はカチェスタの街の近くに≪ゲート≫で移動して、宿を取ってからダンジョンへと向かった。




