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情緒不安定②

 どうして涙が止まらないのだろう?


 「ディル! どうしたの?」


 セリルが心配そうな声を掛けて来る。

 どうしたのと聞かれても僕にも分からない。

 

 急に涙が出て止まらなくなったんだ……


 セリルは仮面を外して綺麗な魔眼の瞳を僕に向ける。


 「分からない」


 声が震える。

 皆が離れて行ってしまうんじゃないかと思うと急に寂しくなったんだ。


 でもそれじゃ駄目だ!

 僕は眷属達の主なんだ。


 ヘンリーナも見ている。

 僕は涙なんか流しちゃいけない!


 「心配はいらない。 大丈夫だ」


 「こっちを見て! 大丈夫じゃない! ちゃんと私と向き合って!」


 セリルと向き合う?

 あれ? いつの間にか僕は顔を背けている。


 セリルの魔眼の瞳を見つめる……

 なんでだろう?

 怖い……体が震える……


 「大丈夫だって言っているだろ!」


 セリルを突き飛ばしてしまった……

 あれ?


 おかしいな……


 僕は人間の頃と変わらない……


 僕は惨めなまま?


 体が動かない……


 ヘンリーナが僕の体を叩いている。


 でも、声も聞こえなくなって……


 駄目だ、こんな姿を見せちゃいけない。

 僕は眷属達の主なんだからしっかりしないと……


 おかしいな?

 言葉ではそうするつもりなのに、心の中でそんな事はしたくないと思っている?


 体を上手く動かせない。


 いつの間にか僕は天井を見上げている。


 セリルが仮面を外して、綺麗な魔眼の瞳がはっきり見える。


 セリルも涙を流している……


 どうして?


 ヘンリーナも……


 僕は眷属達の事を何も分かってあげる事が出来ない。

 

 それはとても哀れな事だと思う。

 主がこんな無能では眷属達が可哀想だ……


 僕は無能な主で、惨めだ。


 人間の頃から何も変わらない。


 僕は誰だ……?

 

 プツリと視界が真っ暗になって何も無い場所へ落ちて行く。


 凄く心地が良い。

 このままずっとここに居たい。


 「君は誰?」


 人間の頃の僕が僕に話しかけて来る。


 僕は誰なんだろう?


 「魔境の主?」


 確かにそうだけど僕は無能な主だ。


 「大人なの?」


 僕は子供だ。

 人間で言えばもうすぐ八歳になる


 「人間なの?」


 僕は魔族だ。

 

 「君は誰?」


 僕は……ディル……

 白金級冒険者で大森林とヴァジールにある魔境の主。


 「本当の君は誰?」


 分からない。

 

 惨めなだけの少年?


 分からない。


 誰かの声が聞こえる……


 僕の名前をずっと呼び掛けている。


 一人じゃない。


 沢山いる様だ。


 眷属の皆?


 どうして僕を呼ぶんだろう?


 僕が魔境の主だから?


 手が暖かい、ずっと誰かが握ってくれている。


 僕のいなくなった世界はどうなるんだろう?


 きっと何も変わらない。


 変わらないなら……


 いや、駄目だ。


 僕はセリルを突き飛ばしてしまったんだ。


 謝らないと……


 きっと僕が眠ってしまって皆も心配している。


 安心して欲しい。


 今、戻るから。

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