思春期主様は情緒不安定
現在僕は一人でドリエルの屋敷の客間で待たされている。
アリアドネ達は何をしているんだろう?
そう言えば、第二王子の行方はアリアドネに聞いても分からないと言ってたけど……
そんな事ある訳ないんじゃないのか?
アリアドネには支配領域内全ての会話と書物を完全記憶する能力があるのに、分からない物なのか?
第二王子として、特定出来なかったとかなら無くもないのか?
もう一度聞いて見るか……でも、それ程欲しい情報でもないから別にいいか。
ドアをノックした音がして扉が開き、ドリエルが入って来る。
僕は予め用意しておいた、書類をドリエルに渡す。
この書類にはアトラスが調べてくれた諜報員の名前を書いてある。
「素晴らしい! 僅か二日間でこれだけの者を割り出すとは、恐れ入る。 それに、ディル君達が目立ってくれたおかげで、今後の活動がしやすくなったと言える。 感謝するよ。 後は私達の方で何とかなると思うが、念には念を入れて置きたい。 最後に一つ仕事を引き受けて欲しい。 内容は情報操作だ。 第三王子が第二王子を秘密裡に暗殺したと」
「わかった。 貴族の間でその噂を流せばいいんだな」
僕は仕事を引き受けて屋敷を出る。
情報操作の為に貴族へどうやって情報を流せばいいのか……
第二王子の死体でもあれば、簡単なんだけどな。
もう一度アリアドネに確認してみるか……
宿へ戻るとアトラス達が戻っていたので、ドリエルとの話を伝え、第二王子の事に着いてアリアドネに尋ねると伝えると、何故かアトラスが聞いて来るから待ってくれと言われた。
どうしていつもはそんな行動をしないのに、今回はそうしたのか?
しばらくしてアトラスとセリルが≪ゲート≫から戻って来る。
「第二王子の遺体らしき物を発見した」
「暗殺されていたのか?」
「……。」
ん? 何故沈黙しているのだろう?
遺体を調べて見ると暗殺されたと言うより、酷く弄ばれたような痛々しい物だった。
争いがあった? 恨みでも買って復讐でもされたのか……
まあいい。
これが第二王子だと言うのなら、第三王子派閥の屋敷にでも捨てて置けば勝手に噂も広がるだろう。
「アトラス。 この遺体を第三王子派閥の貴族の屋敷で発見させて、その噂を広げる事は出来るか?」
「貴族の間でその噂を広げさせればいいのだな。 それなら丁度良い貴族がいる。 元々第二王子派閥だった貴族達で、現在は第一王子に着いている。 そいつに遺体を発見させれば上手く行くはずだ」
「わかった。 それじゃあこの遺体に関してはアトラスに任せる」
アトラスは「了解した」と言って遺体を持って外に出て行った……
どうして沈黙したのだろうか?
何か引っかかる……
最近眷属達の様子がおかしい。
僕に何か隠している?
急に不安な気持ちになった。
眷属達と繋がっている糸が解れて行ってしまうような……
あの頃の……人間だった頃の僕に戻ってしまうような。
どうして今になってそんな事を?
あれ? おかしいな……
なんで僕は涙を流しているのだろう?
おかしいな。




