~セリル視点~ 挑発乱舞
魔眼による視覚によって私は簡単にターゲットを見つけた。
二人も無事に接触出来ているかな?
このまま見つからずに尾行するだけなら、死角に隠れて覗いていればいいだけだから簡単なんだけど、見つかる必要があるのよね。
相手も警戒しているはずだから、物陰に隠れながら尾行していれば、見つけてくれるかもしれない。
ターゲットは貴族で、それなりの権力しか持っていないみたいだから、隠れて諜報作業をするのに向いているし、いざと成った時の口封じも容易らしい。
私が後を追っている事で、この貴族が殺される可能性もあるみたいだから、その時は姿を隠して戻って来いって指示を受けている。
あんなに皆を頼っていたディル様が、今回はアトラスと話の打ち合わせをした以外は、作戦の指揮を自ら行って、アリアドネにも相談してなかったのよね……
男の子の成長は早いな。
お姉さんは少し寂しい気持ちになりました。
ん? ターゲットが怪しい男性と接触しているけど、話は聞き取れないな。
私の背後にも怪しい人達が着いて来ている……
上手くバレたのかな?
ターゲットが怪しい男性と共に動き出したので、その後を気付かない振りをして追うと、どんどん人気のない方へ向かって歩いている。
私を誘い込んでいるつもりね。
魔眼で全てお見通しだし、戦闘になるなら願ったりかなったりね。
ターゲットが角を曲がり、その道で待ち伏せていた人達に囲まれる。
その隙にターゲットは逃げ出し、この人達の仲間の一人は遠くからこっちを監視しているようだ。
凄腕の冒険者と言うイメージを植え付けたいから、ある程度力を見せろと言われてるし、監視がいるなら最悪この人達全員を戦闘不能にしてもいいよね。
「ほう、尾行は得意ではないが……貴様らの様な雑魚に気が付かれるとはな。 もう少し慎重に行動するべきだったか、はっはっは」
挑発にのらないな。
無言でジリジリと距離を詰めて、物陰からひっそりと私に狙いを定めて、攻撃しようとしている人がいる、プロの暗殺者って感じ。
よし! もっと挑発しよう!
「物陰から二人、私を狙っているな。 雑魚が。 上手く殺気を抑えているみたいだが、私には分かる。 雑魚が。 距離を詰めて来るのは良いが、そこはすでに私の間合いだぞ? 雑魚共が。 全員今ここで縊り殺してやろうか? 雑魚共」
警戒を強めたけど、距離を取る事はないみたい。
私の攻撃手段が分からないのね、距離を取ってくれたりしないなら攻撃をするしかないよね。
魔眼の能力で広範囲を指定して、強化した≪グラビティサークル≫を使うと、周囲に居た人達が膝を突いて私の強めた重力に抗う。
私に狙いを定めていた二人が、腕から針の様な物を飛ばして来たけど、重力の影響でカランと言う音を立てて地面に転がる。
もっと挑発した方がいいかな?
「どうした? 立ち上がり逃げた方がいいんじゃないのか? 雑魚共が」
更に魔法の威力を高めると、自重に耐え切れずに這いつくばって、苦しそうな呻き声を上げ始める。
更に≪クラック≫と言う地面に裂け目を作る地属性の魔法を、最小限に抑えて周囲ひび割れを起こして、強さの演出を高める。
陰に隠れていた二人も、自重を支える力をベクトル操作を使って≪グラビティサークル≫の範囲内に押し込む。
「おやおや。 皆揃ってお眠の時間だったか。 雑魚共め」
これ以上続けるとこの人達が死んじゃうかな。
死んでも支障はないけど、殺す事が目的じゃないし、開放してあげよう。
≪グラビティサークル≫を解除してもダメージが残っていて、周りに居る人達は起き上がれないでいる。
最後にもう一度挑発してから姿を消そう。
「ふっふっふ。 貴様らの様な雑魚をわざわざ殺す気にもなれん。 その場に寝そべり、己の無力でも恥じているがいい。 雑魚が。 はっはっはっは」
悠々とその場から立ち去り、監視する人の死角から≪ゲート≫を使って宿に戻る。
尾行していた時間は長かったけど、まだ日は沈んでいないし、他の三人も戻って来ていない。
このまま待機して待つ事にしよう。




