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ドリエルの疑惑 作戦開始

 アトラスと合流して、ウィルフェンの宿で話し合いを始める。

 珍しく、アトラスは気分が沈み込んでいる様子だったけど、問題ないと返してくれたので、気にしないでおこう。


 「貴族同士の権力争いで活動している諜報員達を洗い出すか……見つけるだけなら問題ないのだが、相手は危険な状況に身を置いている者達だ。 貴族であれば護衛を着け、その配下の諜報員であれば、腕に自信のある者の可能性が高いだろう。 時間は掛かるが地道に接触して、気付かれないように動くのが理想的だな」


 「そうか、貴族達だけ調べたらいいかと思っていたが、その配下も当然動いている……となると、かなりの数を調べないといけないのか」


 「そういう事だ。 情報を集めるのは私一人で行った方が良いが、出来るなら分かりやすい行動を取らせたい。 そこで、ディル達には目立つ動きで相手の目を引き付け、急いで対応を取る必要を作り、警戒させる様に動いてくれ」


 「分かった。 今からドリエルに伝言書で、朝一番に屋敷に行くと伝えるから、それまでに諜報員と分かった人物が居れば教えてくれ」


 「了解した。 朝までには私からも伝言書でメッセージを伝える。 もし連絡が無かった場合は有用な情報を得られなかったと解釈して貰えればいい」


 「アトラスに限ってそんな事はないだろうけど、分かったよ」


 律儀にもドリエルは、「わかった」と返事を伝える為だけに、マジックアイテムの伝言書を使用してくれたので、日が昇るのを待ち、朝一番で屋敷に訪れる。


 昨日ドリエルと会話をした客間に通され、僕達は席に着く。

 事前にアトラスからは三人の諜報員の名前を手に入れているので、ドリエルも把握していたのかを聞くと、知らない情報だったと驚いていた。


 そう、驚いていたんだ。


 僕は予定通りに事を進めて、アトラスの指示通り、この三人の名前を使って、情報を吐き出させる能力を持った人物を、ドリエルが雇ったと言う情報を流し、相手の諜報活動をする人物達に警戒させ、即時対応しなければならない状況を作り出そうと思っていたんだけど、ドリエルの反応から考えを改める。


 ドリエルが驚いた事によって、おかしな点が浮かび上がる。


 僕達に依頼を出した以上、情報を持ってくるのは当然の事。

 それを驚いたと言う事は、情報を持ってくるのが想定外であったと言う事。


 ドリエルにとって嬉しい誤算であったなら、さほど問題にはならなかったんだけど、汗が滲みだして(わず)かに動揺か感じる……


 かと言って、ここで僕がドリエルに(かま)をかけて、情報を引き出すのは難しいだろう。

 駆け引きに関してはドリエルの方が上手だろうし、下手な事を言ってしまえば、僕達の立場を悪くするだけだ。


 ここは正直に思った事を話す。

 そうする事で、僕は問題なく話を進める事が出来て、ドリエルに何か裏があるのなら、想定外の情報を調べられる何かを僕達が持っていると仮定して、勝手に警戒をして話を進めてくるだろう。


 そうなれば、違和感を感じ取る事が出来るかもしれないし、僕達が何に警戒すればいいのか徐々に確信を得られるはずだ。

 

 「俺達は、ドリエルの依頼を引き受けた。 勿論その力を持っているから引き受けたんだが、ドリエルは俺達の力を信用していなかったように見えた。 何か裏の意図が在る様に思えるが、何を隠している?」


 「……。 流石は白金級の冒険者と言った所か。 君達が護衛に着いてくれた時には、戦闘力の高さから、それだけで成り上がった者達だと思っていた、見誤(みあやま)って過小評価していた事を許して欲しい。 私は君達に動いて貰い、相手の諜報員達に把握させ、戦闘になる事を願っていた。 そうなれば冒険者を(やと)って、調べている貴族が居る事が露呈(ろてい)し、警戒をするだろう。 疑惑を掛けやすくなれば、こちらも動きやすくなる上に正体も掴め易い」


 「つまり、俺達が目立っている間に、ドリエルの手の者が相手の(ふところ)を探り、確信を得ると言う算段か……」


 僕達の作戦とほぼ同じか、それならドリエルの手駒に相手の情報を探るのが得意な奴が居る。

 まあ、僕達に依頼を出している事で、アトラスより能力が劣ると言う事は想像に(かた)くない。


 他にも何か隠しているかもしれないけど、これ以上嘘を付いている様にも思えない。

 当面はその作戦に乗ってやるとしよう。

 アトラスが上手くやってくれれば、万が一の事態にも対応出来るはずだ。


 「そうか、なら俺達は目立つ行動で相手の目を引き付けよう」


 僕達はドリエルの屋敷を去り、宿へと戻る。

 日が完全に上り、宿で待機していたアトラスと話し合い、ドリエルの手の者と思われる人物にも注意を払い行動するように指示を出した。


 僕達に依頼を持ちかけたからと言って、手放しに信用する訳にもいかないし、警戒するに越したことはない。

 貴族達が面倒ごとを起こせば、いつもこんな事をやっているのだろうと考えると、それはそれで凄い事だと感心する。


 クラークスの街でも、いずれこんな事態になる事があるのだろうか?

 今は目の前の目的に集中するか。


 ドリエルの話からして、早期決着をつける為に動いているのは間違いないだろう。

 そして、ギルドに目を(つぶ)る様に手を回していると言っていた。


 ギルドがどっちの派閥にも手を貸すと言うのなら、厄介事に巻き込まれてこの争いを長引かせる事になる。

 わざわざそんな事を選ぶ理由もないし、ギルドもこの件に関して情報を探り、一方の派閥にのみ手を貸していると考えるのが正しいだろう。

 

 ドリエルは以前、白金級の冒険者チームと繋がりがあるような事を言っていたし、ドリエルの手の者って冒険者なのかもしれないな。


 兎にも角にも、まず僕達が貴族達の事を探っている冒険者だと見つからなければならない。

 かと言って、露骨(ろこつ)過ぎても駄目だ。


 昼間は出来る限り姿を隠して、アトラスの教えてくれた三人をそれぞれで、尾行する。

 相手に気付いて貰うのが目的だけど、(わざ)とらしくならないように注意する。


 アトラスには昼も夜も隠密行動をして貰い、日が沈んだ頃に一度全員宿に集まって情報を共有する。

 

 今出来る事はこれくらいだろう。

 僕とセリルとヘンリーナは大きめのフードの着いたマントを拠点から持ってきて羽織り、行動を開始した。、

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