ドリエルの依頼
地竜討伐から、運ぶのを終えて、アリアドネに眷属達の事を聞くと、今から急ぎでやる事がある事があるらしく、眷属達を集めて何かしているようだ。
アトラスも呼ばれたらしく、珍しく忙しない感じだったな。
セリルとヘンリーナを連れて、今はウィルフェンのギルドに来ている。
釣りの護衛を引き受けた、ドリエルが僕達を指名して、仕事の依頼をしたいそうだ。
「ディル君。 待たせたな」
「俺達も今来た所だ。 それで、仕事の依頼はなんだ?」
「私としては、少し世間話でもしたかったのだが、まあ、良い、話をしようか。 着いて来てくれ」
ドリエルと共に外に出るとフリントが馬車を用意していた。
僕達はそれに乗り込み、ドリエルの屋敷へ、招待される。
ここは、客間か。
随分色々と飾っているな、絵画や高級そうな壺に、椅子も壁も机も全てが一級品を思わせるような調度品の数々。
貴族の屋敷に実際入るのは初めてだし、拠点の屋敷の参考にもなるな。
「さて、さっそく本題から行こうか。 この城塞都市ウィルフェンが最近まで戦争をしていた事は知っているね?」
「ああ、勝利したと聞いている」
「うむ。 それで、我が国は領土を広めたまではいいのだが、相手国の領地を治めた貴族の力が大きくなってしまってね。 今この国では派閥争いが始まろうとしている」
「ちょっと待ってくれ。 言ってる事は分かるが、冒険者に何を頼もうとしているんだ? 冒険者は国の政治には不干渉の義務がある」
「だからこそ君達に頼むのだ。 国の一大事に関わる事だ。 もし内部から二つに分かれるような事になれば、君達冒険者にとっても迷惑になるし、この国は滅亡への一歩を踏み出してしまう。 君達が協力してくれて、上手くいけば、多くの人の不幸を未然に防ぐ事が出来る。 引き受けてくれないだろうか?」
「王国の騎士達にでもやらせればいいんじゃないのか?」
「先程言った通り、国が分断しようとしているのだ。 騎士達はそれ所ではないのだよ。 現在貴族達は権力を争い、自分の派閥に有利な人材を引き込んだり、諜報員を送ったりと、水面下であらゆる策謀が渦巻いている。 これをどうにかするには、外からの力を頼る他無いのだ」
「俺達は冒険者だ。 ギルドを裏切るような真似は出来ない」
「その点に関しては既に根回しはしている。 ギルドに許可を取れば勿論断られるだろう。 しかし、冒険者が勝手にやる分には目を瞑ると了承は得ている。 その点に関しては心配しないでおいてくれ」
なるほど、ギルドにとっても国の分断は大きな損害になるし、こういった場合は見て見ぬ振りをするわけか……
引き受けてもいいけど、貴族同士の争いに加担して、変な事に巻き込まれるのはごめんだな。
「具体的には何をすればいい?」
「まず、派閥の事から説明しよう。 簡単に説明すると、この国は第一王子と第三王子で権力の争いが起きている。 それに貴族達がどちらかに着いて行くと言う形だな。 実際には両殿下を祭り上げ、裏で行われている貴族同士の争いなんだがそこは気にしないでくれ」
「つまり、どちらの王子に王位を継がせるかで、権力に差が出て来るとかそんな感じか?」
「大体はその通りだ」
「第一王子と、第三王子がいるのなら第二王子は何をしている? それと、国王は動かないのか?」
「第二王子殿下は……行方不明だ。 新しい種族である魔族の街を見に行ったきり戻って来なくなってしまった。 恐らくは他の派閥の手によって暗殺されたのではないかと、私は思っている。 国王は戦争や争い事を好む性格でな……勝利した陣営にこの国を注がせたいと思っている為、見て見ぬ振りをしている」
「ああ、最近目覚しく発展を遂げていると言う、あのクラークスの街か! そこで第二王子が消えたのなら、探りを入れる必要があるかもしれないな。 国王が争い事が好きか……まるでベリルの様な王様だな」
「うむ。 国王は自らを第二のベリルと自称しているからな…… そろそろ、冒険者である君達にして欲しい事の話をさせて貰っても良いかな?」
「聞かせてくれ」
「まず私は第一王子派閥の貴族だが、第三王子派閥に属している。 表立って何かをしている訳ではないが、水面下で第三王子側に協力をして、情報は第一王子派閥へと流している。 私の得た情報では、第一王子派閥が、今の所は有利なんだが、決め手となる手立てが取れないでいる。 情報戦が拮抗して、お互いに手を出せないのだ。 そこで、君達にやって貰いたいのは、第一王子派閥に忍び込んでいる諜報員を洗い出して欲しい。 相手の諜報員の情報を立つ事が出来れば決め手となる一撃を打てる」
「洗い出すだけでいいのか?」
「ああ、それ以上の事はしなくていい。 頼めるか?」
「その程度なら問題ない。 俺達で調べてもいいが、貴族達の名簿なんかを見せて貰えるとやり易い」
「わかった。 直ぐに用意させよう」
ドリエルはフリントに指示を出して、名簿を用意させて、どの貴族がどの派閥に属しているのかまで詳しく書いてくれた。
ただし、この情報は諜報員の手によって分からない部分もある為、あくまでドリエルが把握している情報だけを書き足した物なので、完璧ではない事も付け加えて説明してくれた。
貴族の依頼は面倒だな……
それにしても、ドリエルは何故この依頼を僕達にしてきたんだ?
ドリエルの護衛をした時も今いる三人だけだったし、戦闘面に関してならともかく、情報収集が重要なこの仕事を僕達に任せるのは、少し怪しいと思ってしまう。
他に何か事情がある事も考慮しておいた方がいいな。
ミランダが居てくれれば、潜入して色々聞き出してくれるけど、居ないから仕方がないか。
アトラスは索敵には向いているけど、潜入はあまり得意ではないはずだし……
まだ、日が落ちるまでには早いけど、アトラスを迎えに行って話し合ってみるか。




