~皇后視点~ マニエルとベリルの日常
「はぁ……なんて美しい表情だ。 いつ見ても綺麗だ。 涙が最高に良い! 永遠に拭えぬ涙に儂は心を討たれた……本当に素晴らしい作品だ!」
ここに来て随分時間がたったけど、ルファインド・リー・ベリル。
フルネームは長ったらしいから、今は心の中で、ベリルと呼んでいる。
いつもこの調子で、私を見に来ては同じような事を繰り返しぼやいている。
他にも作品があるようで、定期的に挨拶をして回っているわ。
私は現在新しい能力に目覚めたので、その能力を使う為に特訓をしている。
新しい能力とは、一度しか使えない≪潜在能力開放≫を使った後、代わりに目覚めた能力で、≪導く力≫。
これを対象に向けて使うと、思念が伝わり、私の導きに従うと対象の能力が上昇する。
ただし、この能力にも制限があって、一人にしか使えず、私に忠誠を誓った者にしか使う事が出来ない。
だから私はテレパシーの様な、思念を飛ばしたり、相手の思念を読み取ったりする能力を開花させるべく特訓をしている。
いつものようにベリルに向けて、私の思念(悪口)を飛ばしていると、後ろの方でバサっと何かが倒れる音がした。
「おお……おおおおお……なんという事だ……マニエル!マニエエル!」
「はいはい、お呼びでしょうか閣下」
「私の作品が……大切な私の作品が倒れてしまったぞ」
「どれどれ、これは!? 残念です……」
「そんな――馬鹿な! 私の、【烈火の如く怒りを向ける不意を突かれた猿】と【絶望と恐怖に慟哭する大猿】が……二つとも私の大切な――愛している作品であったのに……」
「閣下……あなたの愛していない作品など、ここには存在してないではないですかああ。 この二つの作品を……弔いましょう」
「ああ、そうしてくれ。 準備が整ったら呼んでくれ、儂も祈りを捧げる」
「くぅっ――閣下はなんとお優しく寛大なお心を持っているのでしょうか。 私は閣下の配下で居られる事を誇りに思います!」
「ああ、儂もお前のような優秀な眷属を持てた事を至高の喜びと感じている」
「勿体なきお言葉!」
感情的で人間らしいような気もするけど、どこか狂っているように感じる。
根本的にこの二人はどこかずれている。
会話を聞いて居るだけで気持ち悪さが伝わり、吐き気を覚えるような気分になるわ。
「閣下、この二つはヴァジールにあるダンジョンから生まれました。 ダンジョンが破壊されたのかもしれません」
「そうか、帝国の英雄。 確かそんな奴が居たな。 ハッ! 英雄は――なんと言ったか……金色の……」
「金獅子でしょうか?」
「そうだ! 金獅子だ! 閃いたぞ! カッカッカ!」
「おお! 今度はどの様な作品を閃かれたのですか! 早く私にお教え下さい!」
「聞きたいか? ならば教えてやろう! 【命をとして戦いに勝利するも大切な者を守れず忍従する英雄の残身】と言うのはどうだ?」
「すっ……素晴らしい……そうですね――あれがこうなって、こうして、こうやって……ええと、それから、ああなって……やれる! 私ならやれますとも! ご命令下さい! どうか私にご命令下さい閣下!」
「うむ! マニエルに命ずる! 【命をとして戦いに勝利するも大切な者を守れず忍従する英雄の残身】を我が前に持って参れ! 期待しておるぞ、親愛なる我が眷属よ!」
「畏まりました! 必ずや手に入れて見せましょう!」
この二人のやり取りは気にするだけ無駄ね。
ランジリオが狙われている。
それに、タイトルからして帝国が攻め入られる可能性が高い。
早くテレパシーが使えるようにならないと……
ルネリアの事件に関わっているのだとしたら、用意に掛ける時間は数年ある。
どの程度猶予があるのかは読めないけど、やれるだけの事はやらなきゃ……




