ヴァジールダンジョン攻略
ボスを倒した僕達はその後も大した苦戦も無く第五階層を突破する。
そして、第六階層の入り口を抜ける……
「皆気を付けて、恐らくここが最終階層だ」
第六階層は丘のある草原で、ここの主は、こういう場所で育ったのだろう。
第一階層から第三階層はまだレベルが低い時に作って、外の生物が住み着いたせいでダンジョンを作り変える事も出来なかったはずだ。
「アトラス、何かの気配を感じたらすぐに伝えてくれ」
「了解した」
草原を進み、アトラスが小高い丘の上に何かを感じ取ったので、そこへ向かう。
魔獣などの気配ではないらしい……
「これは……眷属達か……」
そこには、猿の様な魔獣達が居た。
胸にナイフが刺さり、微動だにしない……
近くにはいくつか死体と思われる物も転がっている。
猿の魔獣達の殆どは何かと戦っているような形で固まっていて、飛び掛かって、攻撃しようと腕を振りかぶっている状態であったり、掴んでいる石を投げようとした仕草も見られる。
他には両腕を広げて、何かを守ろうとしている者や、仰向けに寝そべって傷だらけの者もいる……
胸のナイフに手を掛け、引き抜こうとしても固まっていて抜けない。
無理やりそのナイフを引き抜くと、突然血を流し始め、その場に倒れる。
しかも、息があったのか、僅かに動こうとしていた様に見えた。
「時間停止。 もしくはそれに似た何かのスキルでしょうか? 固まっている者は胸にナイフが突き刺さっているので、正面から胸にナイフを突き刺すと言うのがこの状態にする条件になっているのかもしれません」
「時間を停止させるか……転がっている干からびた死体っぽいものは、条件を満たさずに殺されて、風化した者達って事か……」
「風化ではないようです。 推測しか出来ませんが、殺されて、血が流れ、風に晒されて水分が抜けきった死体の様です。 私の癒しの力で回復させますので、もう一人ナイフを抜いて見て下さい」
ヘンリーナに言われた通りにして、戦っているような魔獣のナイフを無理やり抜く。
先程と同じように魔獣は倒れるが、ヘンリーナのスキルによって、傷が回復していく。
「生きている?」
「なんと惨い事を……」
ヘンリーナは無抵抗な魔獣に大きく腕を振って首を跳ねた。
「思考が破壊されています。 恐らく……この固まっている魔獣達は、この固まった状態でありながら、思考は出来る状態にあったと思います」
ヘンリーナは干乾びた死体を拾い上げ、寝入りに調べている。
アトラスにも匂いを嗅いでもらい、その死体が何年くらい経った物かを推測しているようだ。
「匂いは殆どなく、アトラスさんがなんとか感じる事が出来るくらい、完全に水分は抜けきっていて、少なくとも……数百年でしょうか? その間瞼すら動かせずに、思考だけ出来る状態と考えれば、どれ程の苦しみを味わったのか……」
確かに、そんなに長い時間何も出来ずにいれば、思考が破壊されると言うのは分からなくもない。
当然体験なんてした事がないから、憶測でしかないけど、僕だって少し手が空いたら何かしたくなるのに、それを数百年か……確かにそれは凄く苦しいと思う。
「ナイフを抜いて弔ってやろう」
全てのナイフを無理やり抜くと、猿の魔獣達は全部死んだ。
死体は穴を掘って土の中に埋葬し、安らかに眠るよう祈った。
眷属と思われる魔獣は生きていた。
あれを生きていたと表現するのはちょっと違う気もするけど……僕が言いたいのはそうでは無く、ダンジョンの核はこの第六階層の何処かにあると言う事だ。
ダンジョンの核が破壊された場合、眷属達は皆消滅する。
恐らくダンジョンも残らない。
アトラス達にもそれを伝え、ダンジョンの核を探し始める。
第六階層では魔物や、他の魔獣は召喚されないらしく、ひたすら草原が広がるだけだった。
セリルが何か見つけたようなので、その場所へ行ってみる。
「ダンジョンの核だ。 これを破壊すればこのダンジョンに関係するすべての眷属は消滅する。 ダンジョンが残るのかは分からないけど、核の力が無くなれば維持できなくなって消滅するはずだ」
「それでは今破壊するのは危険なのではないか?」
「大丈夫だ。 ダンジョンには転移能力もあるし、核の力が無くなったら追い出されるんだと思う」
安らかに眠れと僕は胸の奥で祈りながら核に手を伸ばす。
するとダンジョンの核は破壊されずに、ここのダンジョンの所有者として選ばれてしまった?
確信はないけど、そんな風に感じる。
試しに第六階層で自然発生する魔物を決められるかどうか試した所、問題なく出来る事が分かった……
どうしよう……
ここを踏破して、眷属達らしき魔獣を倒した者もいるし、あまり関わりたくないと言う気持ちもある。
一度戻ってアリアドネ達に相談してみるのが一番かな?
僕達は危険もなくダンジョンを抜け出した。
途中にいた魔物達は僕達を攻撃しては来なかった。
本当にここが僕のダンジョンになっていると、改めて確信した。




