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目を閉じた少女の目覚め

 あれから日が昇るまでリストは医務室と外を何度も往復し、せっせと薬草集めに励んでいた。

 今は泥だらけになった医務室や拠点内の清掃をしている。


 僕とオウルは寝たきりの彼女を見守りつつ他愛のない話で盛り上がっていた所なんだけど、急に寝ていた彼女が体を起こし、二人して驚いた顔を見合わせた所だ。


 「目覚めたみたいだね。 気分はどうかな?」


 「主――様? 夢ではなかったのね。 気分……とても自分の体とは思えないくらい楽な気分よ。」


 「それは良かった。 僕の事はディルと呼んでくれ。 君の名前は?」


 「名前は――街の人からはゴミ漁りって呼ばれてたかな。 他にもあったけど、どれも似たようなもの、私はそれ以外の呼ばれ方を知らない」


 「そうか、それなら今から君はセリルだ。 僕と眷属達は人間の言うところの家族のようなものだと思うし、遠慮なんて無くていいから、その……よろしく」


 人間として普通に出会った事があるからなのかちょっと気恥ずかしい思いが僕の胸の内に広がる。

 僕がセリルと呼ぶと彼女は光に包まれて、人間から魔族に進化した。


 すると突然パチリと閉じていた目が開かれ、不思議な瞳が(あらわ)になった。

 宝石みたいに淡い赤色の瞳は角度によっては青にも見えて紫がかって見える事もある……


 「その目、見えるの?」

 

 彼女自身も驚いているのか無言で辺りをキョロキョロと見回して、自分の体を触ってみたりして何かを確かめようとしているような仕草をしている。


 「これが見えるって事なのね……触れなくてもそこに何があるか分かるなんて――とても素敵――本当にありがとう。 こんなにも幸せな気持ちになれるなんて怖いくらい。 あなたがディル様なのね。 私の命に代えても一生涯(いっしょうがい)守り続けると約束するわ」


 「気を遣わなくていいといったじゃないか。 それに、感謝するのは僕の方だ、セリルと出会ったお陰で僕は大切な事を沢山学ぶ事が出来たんだ。 ありがとう。」


 「そっか。 それでも私はディル様を守り続けるの。 だってお姉さんだもん。」


 森で会った時もそうだったけどセリルは何故か妙にお姉さんぶるな――魔族となった今はそれほど見た目に年齢差は感じないけど、人間だった頃は確かにセリルの方が少し年上だったような気がする。


 今の僕は人間で言うと十四歳くらいの見た目だろう。

 そしてセリルは人間の頃と見た目はほとんど変わらずに今の僕より少し下くらいに見えるから倍くらい違うし、お姉さんって言うのは……分からなくもないか。


 それにしても、改めて見るとセリルは不思議な外見をしているな。

 真っ黒な髪なんて街でも見た事もないし、癖もなくて綺麗に真っ直ぐ腰の辺りまで伸びている。

 

 ボロボロの時は気が付かなかったけど、もの凄く白い肌をしているし瞳だって特徴的だ。

 眷属化した時に人間だった事は分かってるけど、とても自分や街の人達と同じ人間だったとは思えない。


 お姉さんぶっている事とかも気になるけど、だからと言って、セリルの昔話を聞こうとは思わない。

 僕も人間だった頃の事なんてあまり話したくないし、思い出したくないからだ。

 

 僕は医務室にいるリストを連れてきて眷属の皆で顔を合わせ、それぞれが自己紹介を終えた。


 さて、主である僕の務めをするとしよう。


 僕は知識のある眷属を召喚する事を試みた。

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