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~皇后視点~ ルネリアに届く思い

 息子のランドルフが殺され、一年が経った。

 子供達を失ってしまった私は、(さら)われたルネリアだけを頼りに、アブリ―の街に別荘を建て、何度も森へ捜索の為に私兵を送り出した。


 手強い魔獣が現れ、森の捜索は困難な様子……


 兵達も敵わない魔獣が出る森で、体が弱く、目の見えないルネリアが森へ入って無事でいるなどと考えるのは無理があるでしょう……


 それでも何らかの奇跡でルネリアが無事である事を私は祈り続ける。


 ランドルフが死んだと聞いた時、私はマニエルに私を殺すように命じた。

 しかし、マニエルは私を殺さなかった。

 死を受け入れるのではなく、死を愛し、求めろと言われ、失意の底に居た私はただ、涙する事しか出来なかった。


 私は未だ生死が分からないルネリアに(すが)りつく他なかった。

 皇帝陛下もランドルフの死に精神を(わずら)ってしまったけど、世継ぎが必要だと私を求めて来た事は許せないと思い、城を飛び出した。


 今思えばあの人にも立場があった事を考えるべきだったと反省している。

 それでもルネリアを夜盗に(さら)わせた事は、どんな事情であったとしても許す事は出来ない。


 コンコンとノックが聞こえたので、「入りなさい」と声を掛けると兵が入ってくる。


 「皇后陛下……またしても、魔獣が現れた為、捜索は打ち切りました。 申し訳ございません!」


 「分かりました。 下がりなさい」


 いつまでこんな事を続けているのだろう?

 私は部屋を出て街を歩く。


 黙って兵達は後ろを着いて来るけど、この街には危険もないでしょう。

 街の入り口から見える大森林を見つめ、視線を空へ移す。


 風は穏やかで、私の髪を揺らし、大森林の匂いを届けてくれる。

 目を(つぶ)ると、子供達の顔が浮かび上がり、頬を涙が伝っていく……


 私も子供達の場所へ行きたい。

 死を愛おしく思えたその瞬間、目を開き空に送る視線の先に、羽ばたかずに止まっている鳥が見える……


 胸が熱い……血が出ているような感じはしないけど、何かが刺さっている。

 体も動かせない。


 「ようやくこの時が来た! あんたはついに死を愛した! はっはっはっは!」


 マニエル……声を出したくても、体の何もかもが動かせずにただ、彼の声を聞く事しか出来ない。

 

 「さてと、最後のお仕事をさせて頂きましょうか」


 そういってマニエルは止まったままの私を何処かへと運んで行く。

 荷台に乗せられた? そして、大きな布を被せられ馬車が走る音が聞こえる。


 随分(ずいぶん)と長い時間を走っていると思えば、ついに馬車が止まった。

 あれからどのくらい経ったのだろうか? 数日走り続けたのは間違いないでしょう。


 布を外されるけど、視線をずっと空に向けている私には周りの状況が良く分からない。


 「着きましたよー、ようこそ我が主の城へ」


 まだ空が見えているので城の中とは考えられない。


 「空見るの好きなんですねー 残念ですが今からダンジョンの下層へ連れて行きますよー」


 ダンジョン? 確かマニエルの主人はルファインド・リー・ベリル。

 つまりここは廃墟となったベリルの古城……


 アンデッドが支配する最も危険とされる魔境。

 そして魔境の中心にはダンジョンがあり、そこでもアンデッドが蔓延(はびこ)って行く手を遮る。

 

 なんとかそれらを潜り抜け、攻略を目指した冒険者達は、第三階層より先に行って戻って来れた者はいない。


 中には白金級の冒険者も居たらしいけど、そこまで私は詳しくはない。


 その下層に今から連れていかれるのね。

 何が目的なのかも分からないし、そこにはマニエルの主人がいるのかしら?


 マニエルに担がれたと思ったら一瞬で周りの景色が変わった。

 視界に移るのは芸術的とも言える美しい天井……


 「閣下! 見て下さい! 最高の出来栄(できば)えではございませんか?」


 「見事だ。 美しい女王が死を愛し受け入れる。 これ程の芸術は二つと無い。 これで後二百年は楽しめさせて貰えそうだ」


 これがルファインド・リー・ベリルの声? 低く(しわが)れた声は初老を迎えた男性の声にも老人のようにも聞こえる。

 天井を見上げる私には姿を見る事は出来ない。


 芸術? 私を絵画のような作品として見ている?

 二百年……人間とは思えない時間の感覚。


 それも当然と言えばそうね、今あの物語の人物が生きていると言うのなら、それだけでも数百年は生きている事になる。

 

 「お褒めに預かり光栄です。 これからも閣下の為に素晴らしい作品を探して参ろうと思います」


 「ああ、期待させて貰おう」


 こんな事の為にランドルフが犠牲になったと考えると怒りが込み上げて来る!

 皇帝陛下のした事とは言え、もしかしたらこいつらに(そそのか)されて、ルネリアもこの為に(さら)われたのだとしたら…… 


 私はこのまま死ぬことも出来ず、只々ここで時間の経過を感じ取る事しか出来ない?

 いいえ、私は異世界から来た転生者。

 今まで欲しい物はなんでも手に入るような生活をしてたから、気にも留めなかったけど、何か特別な能力を持っているのかもしれない。


 考える事も出来る。

 呪いでも、浄化でもなんでもいい。

 どんなに時間を掛けても私はこの二人を許さない。


 精神を集中して自分の力に(うった)えかける。

 ≪潜在能力開放≫私に出来るのはこれだけ……


 効果は……、一度だけ最も思いを寄せる相手の、潜在能力を解放させる力。

 これじゃ使えない……私の思いを寄せる相手なんて、今となっては子供達だけ。


 その子供達はもう……

 それでも、使わないと言う選択肢はない。


 私は≪潜在能力開放≫を使う。

 私の能力がある人物に届いた……ルネリア……生きていたのね……

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