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~皇后視点~ 異世界転生、皇后の過去

 私は元々女子高生だった。

 父親が政治家で、母親も由緒ある家系の出らしく、何不自由ない暮らしをしていた。


 欲しい物はなんでも手に入り、周りからは物心ついた時から媚びを売られ、運動もそこそこだし、勉強も人並み以上に出来た。


 ある日、学校から帰る途中に車を襲撃(しゅうげき)されて、運転手は命を奪われ、私は(さら)われた。


 街から少し外れて、私を(さら)った奴等は、私を連れて廃ビルに立て(こも)る。

 電話で私の家に連絡をし、政治家である父に何か交渉を始めているようだ。


 私は私の思い通りにいかなければ気が済まないと思い、ビルから思いっきり飛び出して身を投げた。

 一階で身を隠していればいいのに、わざわざ私を担いで最上階に立て(こも)るなんて、馬鹿と煙は本当に高い所が好きなのね。



 身投げした私は助からなかった。


 目が覚めた時には、この異世界に来ていて、赤ん坊から人生のやり直し。

 前の人生はそれなりに面白かったけど、それなりでしかなかった。


 新しい人生でも私は貴族に生まれて大切に育てられ、なんでも欲しい物は手に入った。

 こういうの、その星の元に生まれて来たっていうのかな?


 私はどうもそういう人生を歩む運命にあるのかもしれない。

 そして、十六歳になったある時、この国の皇帝の茶会に呼ばれ、その皇帝に求愛され、結婚した。

 王子様だとかお姫様だとか、別に憧れはしなかったけど、さすがに凄い運命だと感じた。


 皇帝陛下は頼りなさそうに見えたけど、これ以上のステータスの男なんてまずいないだろうし、外見自体はかなりイケメンだったので、二つ返事でプロポーズを受けた。


 皇后になり、皇帝は私を求め、二人の子供が出来た。


 一番目の子は女の子。

 とても大人しくてかわいい女の子で、ルネリアと名付けた。

 ルネリアは体が弱く、両目が開かない病気だったけど、大切に育てて、杖を突きながら弟の面倒をよく見てくれている。

 

 「お姉ちゃんだから」と口癖のように言っている姿が微笑ましくて、どうしても過保護になってしまうけど、それでも「お姉ちゃんだから大丈夫」なんて言って強がる所がさらに愛おしくなった。


 弟は一歳年下の健康でわんぱくな子で、夫である皇帝陛下がランドルフと言う少しおじさんくさい名前を付けてしまったけど、私はこの子にも愛情を注いで育てた。

 しかし、教育係として皇帝陛下の母親が(しつけ)を行う事になり、厳しい教育を受けさせられていた。


 私もランドルフの母親として、怒りを(あらわ)にして、皇帝陛下にランドルフを取り戻すように頼み、母親の言いなりだった皇帝陛下の説得にも応じず、無理やりランドルフを連れ戻して来た。


 娘のルネリアが八歳になった頃、カチェスタの河で貴族のパーティーを行うと言うので、ルネリアと、息子のランドルフを連れて、そのパーティーに参加した。


 パーティーは日が沈んでから行われ、夫である皇帝陛下は不参加。

 周りに何人も護衛が着いていたので、せっかくのパーティーが台無し。

 良いところの出だったけど、元女子高生の私も貴族らしくなり、二児の母親になった事を考えると感慨深(かんがいぶか)い気持ちに(ひた)れる。


 まさか、私がこんなにも自分の子供を愛せるなんて思わなかった。

 どちらかと言えば子供は嫌いな方だったので、自分の心境の変化には驚かされる。


 パーティーも終わり、馬車に乗り込み、帰路(きろ)()く。


 子供達はパーティーを楽しめたのか、二人共ぐっすりと眠っている。

 突然馬車が止まり、外から喧騒(けんそう)が聞こえてくる!


 襲われた!? 護衛が居たはずだけど……この子達を守らなきゃ!

 私は馬車の外に飛び出し、怒声を上げる。


 周りには数十人の夜盗が馬車を取り囲み、馬車を運転した男は殺されていた。

 絶対に子供を守らなければと言う気持ちで、私は夜盗に掴みかかると、ヒラリと(かわ)され、そのまま転んでしまった。


 夜盗が馬車のドアを開け、ルネリアを(さら)って走り去ってしまう。

 それから間もなくして、三人の騎士が馬に乗って走ってやってくる。


 三人の騎士は颯爽(さっそう)と現れ、夜盗共をどんどん追い払い、私達はなんとか一命を取り留めた……


 しかし、ルネリアを(さら)われてしまった。

 私は国へ戻り、すぐに国王陛下にルネリアの捜索を頼み、私の私兵にも捜索し、さらに冒険者ギルドにも手を回し、賞金もかけた。


 あれから一年経つけど、私はその時の傷を癒せていない……

 私が馬車に残り、少しでも時間を稼いでいれば……


 息子のランドルフには寂しい思いをさせてしまっている。


 だって、私はそこまで器用ではない。

 娘のルネリアを奪われ、ランドルフだけに愛情を注ぐなんて事は出来ない。


 そして、さらに月日は流れ、私の私室に一人の男が現れた。

 どうやって部屋に入ったのか、警備はどうなっているのかなど疑問点はあるけど、この道化師ような男は目の前にいる。


 「ご機嫌用、皇后陛下。 俺はマヌエル! あんたに伝えに来た事があるんだぁ。 朗報だ! あんたは魅入られたんだ。 我が主に!」


 「何を言っているの? 私の夫はこの国の皇帝。 あなたの主が誰かは知らないけど、身の程を知るべきなのでは?」


 「はっはっは。 たかが人間の皇帝など――我が主の前では、平民と等しく変わらない。」


 「人間ではない? 私にはあなたは人間に見えます。 何かの冗談ですか?」


 「俺が人間? 俺はもう死んじまってるんだぜー!」


 「気が狂っているのですか? あなたの主は誰なの? 教えなさい!」


 「いいだろう。 教えてやる。 我が主は黄泉の国の王! 死! そのものだ! またの名を呪われた王、ルファインド・リー・ベリル閣下だ!」


 「ベリル……あの御伽噺(おとぎばなし)に出てくる銀色の髪と目を持った呪いの王があなたの主だと言うの?」


 「そうだ。 その呪いの王こそが我が主! 俺はあんたにその事を伝えに来た。 そして、生きたまま死を愛するように仕向ける為にな!」


 「何からなにまでふざけた事を! 死を愛する? 受け入れると言うのならまだしも、そんな事出来る訳がない」


 「信じなくなって構わない。 それじゃあ今日は失礼させて頂きます。 それではまた……」


 マヌエルと名乗る男は、何かに吸い込まれるように何処かへ消えてしまった……

 それからその男を見かける事はなかったけど、現在、再びその男は私の前に現れた。



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