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オークの集落

 はあ……ユリアンとアリアドネの話は難しかったな。

 産まれたばかりなのにユリアンは、すらすらと何でも理解しているようにアリアドネと会話していた。


 能力に対して人間の平均的なステータスは、決められた値より高いとか、その理由とかの話をしていたけど、聞いているうちに分けが分からなくなってきた。


 (いや)しいとされているゴブリンなんかが、実は欲の値は低いって推測している話とかも難しいし、僕達魔族に欲の値を下げた場合、眷属による統治によって力を付ける事が出来るけど、個人による成長は(いちじる)しく下がるだろうって話は……ああ、もう分け分かんないや。


 覚えられるだけ覚えて、徐々に理解をして行こう。


 僕はホムンクルスに精神を移して、待っていた三人に挨拶を交わし、能力が上がった事を伝えると、セリル達も能力が上がっていると教えてくれた。


 特殊な能力で言えば、セリルの右目の能力が左目でも使えるようになって、さらに立体的な視界を得る能力によってかなりの能力向上が期待出来るそうだ。


 魔力を消費するとこの部屋全体を視界として見る事が出来るらしい。

 分かりやすく言えば、魔力の消費する量にもよるけど、セリルの確保出来る視界は広大で、例え物陰であってもセリルに死角はなく、目視出来ると言う事だそうだ。


 これによって索敵能力は、視界を使った物に限っては、アトラス以上に優れているとの事だけど、擬態や透明になるようなスキルであれば見落とす事は十分にあり得るし、アトラスの場合は嗅覚と、レンジャーのスキル、他にも感知する能力があるので、アトラスを超える事は出来ないみたいだ。


 ダンジョンは当然封鎖されている為、四人でギルドへ向かう。

 アトラスとミランダには今日は僕が疲れているからと言う理由で、情報収集は止めて一緒に仕事をするように頼んだ。


 ギルドの職員にいい仕事がないかと(たず)ねると、またお手上げの手振りをした後、「今日も昨日のようにお手伝いをされるなら書き込みをしておきますよ」と言われたので、頼んでおいた。


 しばらく待っていても声は掛けられず、ギルドの職員が新しい依頼を張り出したので、冒険者達はそれに殺到した。


 僕とセリルがそれを遠目に見ていると、アトラスとミランダがそれぞれ別の仕事を持ってきてくれたので、掲示板の書き込みを削除して貰い、その仕事内容を確かめる。


 アトラスの持ってきたのは採集系の仕事で、ダンジョンよりさらに北にある山に生えている薬草と薬に仕えるキノコの採収の二つだ。


 ミランダは最近街の治安の悪い場所で、獣人達が不穏な動きをしていると言う噂の調査だ。

 依頼人は匿名の貴族で、全てギルドを通して情報の交換などをする手筈(てはず)を整えている。


 ミランダは一人の方がやり易いと言う事で、セリル、アトラス、僕で山へ行く事に決めた。

 

 ダンジョンまではセリルの≪ゲート≫で向かい、そこからは歩いて現地に向かう。

 山には昔、凶悪な魔獣が住んでいたらしいけど、今は狩られてしまっていない。


 それでも山には危険な魔獣や、オークが出るらしいので気を引き締めて行くようにギルド職員に注意を(うなが)された。


 アトラスが先頭に立ってどんどん山を登り始める。

 途中で岩肌を()じ登る事があり、得意げにセリルが僕の方を向き、「見てて!」と言われたので、見ているとセリルがスウっと浮上していき、簡単に上まで登って行った。


 その際にローブの中が丸見えだったけど、気にしないでおこう。

 僕も後を追って()じ登ると、どうやって登ったのか教えてくれた。


 地の魔法で、周囲の重力を強化して自分に負荷を掛け、そのベクトルを操る事で浮上する事が出来るようだ。

 方向転換などは、まだ慣れていないらしく、空中ではスキルに意識を向けている為、無防備になるからまだ実践で使いこなす事は難しいと語っていた。


 重力を操るのなら、逆に軽くすればいいのではと聞くと、強める事は出来ても弱める事は出来ないらしい。


 アトラスは道すがら目的の薬草やキノコを見つけて、採収してくれたので、もうこの依頼の分は手に入れてしまった。


 「ディル様……いや、ディル。 恐らくオークの集落を感知した。 オークから取れる牙や毛皮は大した事はないが、肉は適切な処置をすればそこそこの値で取引される。 数匹狩って行く事を勧めるがどうする?」


 オークか、確か猪の魔獣とも言われていて、性格も見た目も人間からすれば醜悪(しゅうあく)で、性欲が旺盛で人間の女性も襲ってしまう事があるって話の魔物だな。


 無暗(むやみ)に殺そうとは思わないけど、金策になるのなら経験も詰める事だし、狩って行ってもいいと思う。


 「アトラス、適切な処置って血抜きとか解体処理の事だろ? 食べる肉の処理なんて難しそうだけど大丈夫なのか?」


 「セリルも居るのだ、リストに任せれば問題ない」


 「本当は俺達だけでやりたいけど、ここは人も居ないだろうし、今回はそれでいくか。 数はどのくらいいるんだ?」


 「集落全体がかなり臭くてな。 正確な数までは把握出来ないが、十数匹と言った所か。 セリルの視界でも確認してくれ、方角はあっちだ」


 セリルは「分かった。」と返事をしてアトラスの指さした方角を見る。


 「目視出来るのは十三体かな。 小屋の中に隠れているオークもいないはずよ」


 「それじゃあ正面から突撃して、三体狩る事を目標にしよう。 逃げたオークは負う必要はない。 三体狩ったら≪ゲート≫で運んで帰るぞ!」


 作戦も決まった事だし、僕が先陣を切って突撃する。

 オークの集落は酷い匂いで汚物が溢れた穴から凄い異臭が立ち込めている。


 一匹目を見つけた僕は思い切り突っ込んで首に剣を突き刺す。

 オークはそれを交わせずにそのまま倒れたので、次のオークに向かって走り出すと、武器を構えようとするオークが身構える前に距離を詰め、あっさりと首を剣の一突きで倒してしまった。


 能力が上がって僕の身体能力もかなり上がっているみたいだ。

 ミランダのように動けているみたいで自身が湧いてきてしまう。


 最後の三匹目をセリルが重力を強化する魔法≪グラビティサークル≫で動けなくして、アトラスがその首をメイスで叩き折った。


 残ったオーク達は僕達から逃げ出したので≪ゲート≫を使って拠点へオーク達を運ぶ。

 医務室にいるリストにオークの解体を手伝ってくれと伝えると、大喜びで「かしこー!」と返事を返して手伝ってくれた。


 リストの手捌(てさば)きは素晴らしく、綺麗に肉から皮を剥ぎ取り、余分な筋膜も削ぎ落し、作ってくれた薬液に漬けていく。


 この薬液は肉の血を洗い流すのに便利で、香草も入っているので美味しい肉になる。

 作業を(のぞ)きに来たオウルが涎を垂らしていたので、肉の塊を差し出すとそのまま生で食べ始め、オウル(いわ)く、この肉は脂身も少なくていい肉だと評価して貰った。


 切り分けた肉をリストが丁寧に、植物の葉で包んでくれたので、それを持ってギルドへとやって来た。

 アトラスが受付で依頼の完了を済ませている間に、肉と牙を素材の買い取りカウンターへ持って行く。

 

 植物の葉で包んだ肉を見て、職員は驚いている様子だったけど、かなりいい状態の肉で、しかも綺麗に切り分けられた事もあって高く買い取って貰えた。


 宿に戻ると、ミランダは既に戻って来ていて、僕達の帰りを待ってくれていた。


 これで少しはお金に余裕も出来たし、ダンジョンもいつ開放されるか分からない事を考え、明日はヴァジールに向けて旅立とうと、提案すると、皆もそれに賛同してくれた。

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