~バイス視点~ とある冒険者達の末路
「ふう、黒狼の群れに出会えやしねぇ……」
俺はバイス。
第三層の探索に来て三日目だが、ここらで一番稼ぎのでかい黒狼の群れがなかなか見つからねぇ。
トロルやオーガも金にならねえ事はねえが、割に合わねぇ。
とくにここのトロルはでかいし強い。
ぎりぎり倒せなくもないが、時間かけて一匹倒すのがやっとだ、見つかったらヤバイ。
「バイス、またトロルだ……ここの岩陰に隠れてりゃ見つからないはずだ」
「ジャン。 レンジャーとして恥ずかしくねぇのかー。 さっさと黒狼を見つけろー」
「うるさいな。 それが出来りゃ一生食いっぱぐれなくて済むわ」
「はいはーい。 消臭のお時間ですよー。 トロルは匂いに敏感なんだからおっさん共はお口閉じましょーね。 口臭いんだから」
「水……飲んでいい?」
「黙れデブ。 水は貴重なんだぞ。 我慢しろ」
口は悪いが俺達四人はこれで仲良くやってんだよなぁ。
リーダーで状況を見て指示を出す俺と、チームの危険を回避したりいち早く獲物を発見するレンジャーのジャン、魔法使いとしては火力高めの女ハーズウェイ、そして動けるデブのサメディ。
サメディは見た目通り前に出るチームの盾だ。
俺達四人でゴールデンナイフなんて名乗ってるが、中堅の冒険者としてはまだまだなんだよなぁ。
もっと稼いで銀級抜けて金級まで行けば、もう少し楽な仕事を選べるんだけどなぁ。
「トロルが戦闘状態に入った」
「おっ他のチームでも来てんのか?」
「いや、トロルの陰に隠れて見えない……嘘だろ……」
「どうした?」
「一人だ。 だが、トロルが押されている」
「はっはーまじかよ。 英雄様でも来たってのか?」
「いや……あれは……おかしい! トロルが一方的に! 肉を千切られている」
「なんだ、化け物同士の闘いかよ。 だが危険だな。 どんな魔物だ?」
「ここからじゃ遠すぎる、あそこの岩場まで行こう」
「分かった。 行くぞお前等」
戦闘が良く見える良い位置に岩山を見つけた。
ここからなら俺の目でも見える……なんだありゃ? 獣人?
赤い肌に額から生えた角、そして筋骨隆々って言葉がぴったりのガッチリした体に、身長は獣人としては最大サイズってとこか。
まて……あれは!?
「お前等絶対に顔を出すな! 声を出すのも控えろ! 一本角の獣人だ。 伝説のあいつで間違いない!」
「嘘でしょ? あんなの御伽噺でしょ?」
「逃げるトロルを素手で引きちぎって噛みついているんだぞ。 どっちにしてもあれに見つかったら全員死ぬ!」
「バイス……これを。 一つしかない伝える事を決めてから飛ばせ。」
ジャンが俺に渡したのは、マジックアイテムの伝言書だ。
俺の思った事を思った相手に一度だけ飛ばせる。
『ギルドマスターへ。 伝説の一本角の獣人が出た。 現在は三層にて身を隠している。 さっき起こった事を偽りなく伝える。 トロルが黒い炎に包まれて一瞬で消滅した。 救援はいらない。 会えば死ぬ。 俺達も様子を見て帰還するが、帰らなかった場合はこいつに殺されたと思ってくれ。』
伝言を飛ばした……だが、あんな奴結局誰が来たってどうしようもねぇ。
頼むからそのまま帰ってくれ……ん? 体が小さくなって普通の獣人見てぇになってやがる……
そうか、一本角の魔獣はそうやって本来の姿を隠して生活してるんだな。
伝言書を出すタイミングが悪かったな……
「バイス……あいつ……なんでこっちに来るんだ?」
「嘘だろ!? おい、ハーズウェイ、匂い消し忘れたんじゃねぇだろうな?」
「ちゃんとここに来た時に消したわ。 ジャンどうなの? あいつまだこっち来てるの?」
「……。」
「汝等此処に何をせり」
「何処の言葉かは知らねぇけど、お……俺達はたまたま通りかかった冒険者。 あんたもそうなのかい?」
「分かる言葉で話そう。 何を見た?」
「何も見てねぇよ! 服着ろよ!」
「嘘を付いたな。 次はない。 分かるな?」
サメディ―が潰された……柔らかい果実を潰すみてぇに!
「見た。 トロルをあっさり消滅させた所を……なあ、あんた伝説の一本角の獣人なのか?」
「誰が質問を許した? 私の聞いた事にだけ答えろ。 それを誰かに伝えたか?」
ハーズウェイ……
「ジャン……すまねぇな……へへっ全部ギルドに報告したぜ人食い野郎! お前みたいな奴の居る場所なんてねぇんだよ! このウスノロが!」
「嘘を付いたな。 全てではない。 一部だけだ。 嘘を付く必要があった……今の俺の姿は報告していないようだな。」
「ジャン……簡単に人を潰しやがってよお! クソが!」
「私は早く帰らなければならない……しかし、僅かであれば猶予はあるだろう……いや、ある。 あるのだ。あらねばならぬのだ……嗚呼ああ……お前はすぐ殺す。 だが、楽しませて貰うぞ……」
「な……何を!! ぎゃあああ!!!」




